ぼくが2022年に歌のことで強く関心を持ち始めたことが、オリジナルの作品を持つことと、オリジナルの作品を歌っているアーティストさんのことでした。
ぼくはカラオケで多くの楽曲を歌わせてもらって、その楽曲を歌い始めるときはオリジナルの歌手の方の歌い方を模倣してみます。でも、その歌手の歌い方に寄せ切ることはできなくて、どこかしら自分の色が出てしまいます。その自分の色を楽曲とミックスさせて、良い持ち味が表現されることで、自分の歌唱への満足も高まっていくのかなと思います。
ただ、究極的に自分らしさを求めていくとなると、カバーではなく、オリジナルの作品を持つことかなと考えるようになりました。そして、オリジナルの作品を歌っているインディーズのアーティストさんにも興味を持つようになりました。
ぼくがスナック藤の歌会などで親しくさせて頂いている紺野豊さんも、定期的にYouTubeに作品を発表されていますが、最近発表された新曲が「Marine Snow」という曲でした。
ぼくが今まで聴いたことがある紺野さんの楽曲は前向きなテーマのものが多かったので、イントロを聴いた瞬間から、今までにない新境地的なものを感じました。
改めて、「Marine Snow(マリンスノー)」って何だろうと思って調べたら、深海において水中の上層から下層へと継続的に沈降する有機デトリタスであり、肉眼で観察可能な海中懸濁物のことであり、具体的には動物、植物プランクトン、原生生物の死骸、糞便、砂などの有機物や無機物のことだそうです。
何回も聴いているうちに、この作品がMarine Snowに比喩しているものは、この数年のコロナをめぐる人間たちの混迷の有り様を描いているのかなとぼく的には解釈しました。一見綺麗に見える世界はよく見ると澱んでいて、世の中はいろいろな考え方があっていいはずなのだけれど、二元論的な主張の対立が常にあって、自らの主張こそが正論で、それ以外の考えは許されないという、淀んだものが蔓延る日常。ぼくらはそういうシーンをいろいろな局面で目にしてきていると感じます。混沌とした日々の中で、失ったものや消えていったものもあったわけで、そこに大切なものはあったかもしれないし、そこに誰かが気づいて拾い上げることで、世界は変わっていくんじゃないのかなとか、歌詞から、メロディーから、いろいろな想像を巡らせてみました。
そして紺野さんに聴いた感想を伝えようとしたときに、「いいなと思ったことを上手く言えないんですけど、言葉が深いというか、生き様とか葛藤とか、響いてきました。そして、こういう作品も合っていらっしゃると感じました。大人の楽曲ですよね。」とコメントを送りました。
作詞と作曲をされた鈴木デコさんは、仕事と子育てをしながら、音楽活動を含む創作活動をされている方で、現在は「カラクリキネマ」と「eLEMental CODE」の2つのユニットで活動されています。最近、紺野さんと鈴木さんが「Marine Snow」について語っている対談を拝見しましたが、この作品の歌詞と曲ができたのが2020年で、歌も入れて作品として完成したのが2022年になったとのことです。紺野さんも今までにない歌い方を求められて、新たに学ぶことが多かったそうです。
作品を作っていくって、言葉とメロディーの着地点みたいなところを求めて、こだわって探していくものなんだろうと思いました。自分が同じテーマだとしたら、どんな言葉で、どんなメロディーで、世界を描いていくのかな。それは作ってみないとわからないですね。