DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

今週はソメイヨシノの花も満開となってきて、桜の季節がいま到来しています。ぼくは行き帰りの通り道にある桜の木が、自分の中の桜の花見という感じです。1年間ずっとその木の変遷を見てきてるので、この時期がくると「今年も咲いてくれてありがとう」って心の中で話しかけてます。

桜をテーマにした曲って今も昔もたくさんあります。森山直太朗さんの「さくら」、坂本冬美さんの「夜桜お七」、福山雅治さんの「桜坂」といった超有名曲だけではなく、探してみるとこういう作品があったのかと改めて知ることがあります。そういう1曲が氷川きよしさんの「櫻」という曲でした。

この作品は2012年2月8日に氷川さんの21枚目のシングルとして発売されました。作詞はなかにし礼さん、作曲は平尾昌晃さん、編曲は若草恵さんです。この日本の歌謡界を代表するラインナップもすごいです。この作品で氷川さんは第45回日本有線大賞を受賞し、作詞のなかにしさんは第45回日本作詩大賞を受賞しました。

ぼくがこの作品を知ったのは昨日のことで、「春ソング」をテーマにしたオンラインカラオケ大会に参加されている方々の中で、この作品を歌われる方がいらっしゃいました。その後で氷川さんご本人の歌唱も聴きましたが、正直なところ第一印象はあまり良くありませんでした。

歌詞の内容は、今は亡くなってしまった人を思い、桜の木にその幻を見ている内容ですが、氷川さんの歌い方が最初は一本調子に聞こえてしまいました。それが、何度も「櫻」を聴いていくうちに、氷川さんが考えている歌い方が少しずつ見えてきました。

歌は、メロディーも大事だけれど、まず言葉を伝えなきゃ、聴く方のイマジネーションも呼び起こせないと思っています。氷川さんの歌い方は言葉が明瞭だからわかりやすいと思います。それゆえに、感情の機微に触れたこういう作品を歌うのが珍しいと思いました。

平尾さんが作られたメロディーはある意味正攻法で王道なメロディーで、奇をてらう部分をあえて省いています。どちらかというと奇抜な歌のスタイルの氷川さんが、標準的なメロディーを歌うと、もう少しパワフルだけではなくて、そこに桜と対話するような感情の成分を入れたらもっといいのにと感じていました。

ぼくの思いどおりの歌唱をされていたのは、なかにしさんが日本作詩大賞を受賞されたときの氷川さんの歌でした。授賞式で氷川さんがなかにしさんに「素敵な作品をありがとうございました」と言うと、なかにしさんは「あなたの曲を書くチャンスをくれてありがとう」と応じました。また、なかにしさんは「この作品をどう聴いてもらいたいか」という司会の徳光和夫さんの質問に対し、こう答えました。「3・11の大災害を目の当たりにして、そのことを忘れたことはない。この歌を書く時も、そのことを忘れませんでした。不幸に見舞われた方、御霊に捧げたいと「櫻」を書きました。氷川さんも素晴らしい歌唱でした」この話を聞いていた氷川さんは途中から感無量で涙をいっぱい溜めて、何も話すことができない様子でした。「あなたが歌ったから、日本作詩大賞の受賞に結びついたんですよ」と徳光さんに言われると、「ありがとうございます」と氷川さんは小さく答えてから、「櫻」を歌われたんですが、いつも以上に気持ちが入っていたから、言葉に思いが強く乗っていました。「私が死んだら 櫻になるわ」の所がぼくはジーンときました。

歌は正調だけでも伝わらなくて、そこに心の思いの成分が入ることで、歌に膨らみが出てくるんだと思います。


www.youtube.com