DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

日本大衆音楽祭

11月23日、ぼくは静岡県コンベンションアーツセンターのグランシップ中ホールで開催された、第39回日本大衆音楽祭に出場してきました。日本大衆音楽祭は「歌の国体」とも称される歴史と伝統のあるカラオケ大会ですが、ぼくはこの大会の情報を知らなくて、最近までご縁はありませんでした。

東京都大衆音楽協会が主催した2023大衆音楽祭音源大会に応募し、一般部門で準優勝を頂き、日本大衆音楽祭に初めて出場することができました。

ぼくが出場するのはグランプリ部門で、15時までに会場で受付をすればよかったので、10時半頃に東京駅をこだまで出発しました。12時前に静岡駅に着いたので、そのまま静岡駅前のビッグエコーに入って1時間声出しと練習をしました。静岡駅ナカのコンビニで昼食と夕食を買ってから、東海道本線で1駅東京寄りの東静岡駅で降りて、駅前にある今回の会場に入りました。

今回の大会は1コーラスを歌いますが、カラオケのモニターはないので、歌詞を暗記しなければなりませんでした。カラオケで歌っている人は、日頃は画面で歌詞を見ながら歌うことに慣れているので、歌詞を暗記するのが苦手な人が多いですし、ぼくも暗記が苦手でした。

カラオケ大会に行くと、日頃Twitterで交流している方たちともお会いできますので、ご挨拶したりいろいろお話ししたりするのですが、今回は歌詞がなかなか体で覚えられなかったので、会場の隅の人気のない場所でひたすら歌う曲を何十回も聴き、それに合わせて自分も声を出して歌詞を体に叩き込ませていきました。

会場の中なので、ステージで歌っている方の歌声も聴こえてくるのですが、やはり歌詞を忘れないのを気にするせいか、1フレーズの1音目が弱い音の歌声になってしまった方が割と多いと感じました。

ぼくは1番の歌詞を覚えようとしている中で、数ヶ所覚えるのに四苦八苦してました。1番の歌詞を通して誦じると、2番の歌詞が入ってきたりするのです。この大会は歌詞を間違えると失格になってしまうので、間違いは絶対に許されませんでした。

暗記がうまくいかない中で、いったん立ち止まって考えました。ぼくは選んだ楽曲の歌詞を伝えないといけない。伝わるためには歌詞の意味を伝えないといけない。だから発する言葉にも意味をこめて歌わないといけない。こんなことを大会当日の、出番数時間前に今さら気付きました。

会場で歌っている人は日本全国から選ばれた人ばかりですから、歌が上手いのは当たり前ですし、歌唱の技術が一定にあるのも当たり前でしたが、ではその歌が感動を呼ぶかというと、心に響くまでの人は多くありませんでした。

心に響くためには、歌詞の言葉を伝えよう、言葉の意味を伝えよう。それによってメロディーの歌い方も決まって来るだろうと思いました。

自分の順番になり、ステージに向かいました。自分が選んだ林部智史さんの「晴れた日に、空を見上げて」というこの楽曲を、客席の皆さんに伝えようという気持ちで、1フレーズづつ、歌詞を間違えないように、そして言葉に込めた意味をメロディーとぼくの歌声で伝えようと、ステージで歌った2分間はいつもよりも長く感じました。歌い終わって、ちゃんと歌えたなと感じました。

全員の歌唱が終わって、審査の先生方の講評がありました。ある先生は「楽曲は歌手にここでアピールしてもらいたいという思いで作っている。皆さんハイレベルです。歌も上手い。技術もある。さらに必要なのは歌を伝える力です。伝達力がなければ聴いている人に届きません」と言われました。ある先生は「上半身だけで歌っている人が多い。歌は下半身も使っていかないといけない」と言われました。歌を伝える力、全身で歌うことをその時肝に銘じました。

審査結果が難航したらしく、ずいぶん待ってから発表になりました。会場はお客さんが満席で、ぼくは最後方で立ち見をしていました。客席で座っているご夫婦が、歌った方の中でいいと思った方に赤い丸をつけているのが見えました。「ぼくはどうせ付いてないよな…」と思いながらふと目にしたら、そのご夫婦が見ていたページでぼくのところに赤い丸をつけていてくれてました。いいと思ってくれただけでぼくはもう十分幸せでした。

最初に歌唱賞の発表がある中で、グランプリ部門の歌唱賞でぼくの名前が呼ばれたので、最後方からステージまで小走りで駆けて行きました。とにかく、何かもらえて良かったなと思いながら、小さなトロフィーをステージで受け取りました。

会場を出て、静岡駅から東京に向かうこだまの中で、Twitterで入賞した旨のツイートをしました。どんな大会でも、入賞してもしなくてもツイートしていますので、ぼくの気持ちはいつものアクションだったんですが、知っている方からのリアクションがいつもより多くて、さらに「凄い」というお言葉を頂いたのが、ぼくには実感が湧きませんでした。

人間って不思議なもので、下心があったりして入賞したいと思う時は入賞できなくて、今回みたいに歌が上手い人ばかりだから入賞の期待とか全くしてないと、逆に入賞します。歌唱賞自体は一番下の入賞なので、別に凄くないんじゃないかなと思いつつも、多くの出場者の中から選んでもらえたのはやっぱり凄いことなのかな。いずれにせよ、ぼくは小さくてもずっしりと重いトロフィーを頂けて、ものすごく嬉しいだけじゃなくて、ほんの少し、自分の歌に自信が持てました。行きのこだまでは車内から富士山も見えたし、いい1日になりました。