ぼくが音楽を聴く時間は、仕事の行き帰りとか、休日の散歩とか、外にいる時が多いです。大体はYouTubeの動画を、動画を見ないで、音楽だけを聴いています。歩きながら聴いてることも多いので、ランダムに流れてくる曲を聴いて、いい曲だなと思ったら、立ち止まって、初めて動画の画面を見てみます。最近のそんな1曲が、林部智史さんの「花に約束」という曲でした。
NHKラジオ「ラジオ深夜便」の「深夜便のうた」というのがあって、「花に約束」は2022年2月・3月の「深夜便のうた」として放送されているそうです。
「ラジオ深夜便」はNHKラジオ第1放送が23:05から翌朝5:00まで、NHKFM放送が深夜1:05から5:00まで、毎日放送しているラジオ番組で、シニアの聴取者層の支持が強い番組という印象が強いです。「深夜便のうた」は深夜便リスナーに楽しんでもらえる歌を、オリジナルに製作したり独自に選曲したりするもので、平成18年4月よりスタートしたそうです。「深夜便のうた」は原則、午前1時台に放送されるそうです。
「花に約束」の作詞は小椋佳さん、作曲は追川礼章(おいかわ あやとし)さんです。小椋さんは、2021年1月20日に発売された林部さんのアルバム「まあだだよ」で収録の全曲を書き下ろすとともに、次代を担うシンガーとして、林部さんを後継者として指名され話題になりました。追川さんは東京藝術大学を卒業された音楽家の方ですが、アマチュア時代の頃から林部さんと交流があり、林部さんのコンサートマスターとしてピアノを演奏されています。「花に約束」はそういう3人の交流の中で生まれた曲だと想像しています。
林部さんは、「花に約束」が「深夜便のうた」に決まったときに、「世代間を超えて、この先聞き継がれ、歌い継がれて欲しい一曲です。美しい言葉がたくさん散りばめられている歌に、一つ一つ自分なりに解釈を深めて、歌っていきたいです」とコメントを寄せました。
小椋佳さんは出演されていたテレビ番組で、「他人が使っていない言葉で表現する」ことにこだわりを持っていると言われていましたが、この作品の歌詞でも、そういう言葉を敢えて使われているように思いました。冬の寒さとまだ実現しない夢を掛け合わせて、「夢も凍える 寒い日続き ひたすら なけなしの 胸に息づく夢」と語り、春の到来と夢の実現を掛け合わせて、「季節の約束は 今果たされ ふくよかな風」と書いてみせています。
ぼくたちはどんなジャンルの歌を歌うにしても、暗号や記号を歌ってるのではなく、言葉を伝えて歌うわけだし、日本語って国語辞典にも膨大な言葉を載せているわけで、そういう巧みな感性を伝える言葉を歌詞にして、メロディーに乗せるほうが、歌の場面も景色も広がっていくものであるということを、小椋さんは伝えたいのかもしれないと思いました。
追川さんの作られたメロディーも、Aメロ2回のあとBメロ2回というシンプルな構成でありながら、冬の寒さや耐える心、春咲く桜の艶やかさ、散った後もまた咲くことへの期待といった言葉のイメージを、ドラマチックなアレンジを加えて、明解に伝えていると感じました。
日常の一コマを淡々と歌っているようで、実はその奥に揺れ動く心を感じさせてくれる曲って、ぼくは好きなんです。道を歩きながら聴いているその歌や詞やメロディーが、その街の空気を映し出していると感じられると、この曲は今のこの時を歌ってていいなと思うんです。
そして、林部さんの歌も、考えて歌ってるなあと感じました。ぼくは林部さんの歌は好きですけど、ファンの方とはちょっと目線は違うのかもしれないと思ってます。ぼくが感じる林部さんの魅力は、自分が歌う曲に対してどうやって歌うかということを真摯に取り組んでいることだと思っていて、歌番組で往年の名曲を歌っている姿を拝見すると、自分のキャラクターをわかった上で、上手く表現してるなあと感心することが何度もありました。そういう意味で、歌の勉強をしているぼくにとっては、お手本になる方だと思っています。でも、林部さんも歌が完璧かというと、そうではなかったりします。そういうところもまたいいかなと思ってます。
「花に約束」、早くDAM★ともで歌いたいと思います。