DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

歌うま

10月も今日でおしまいですね。ぼくは歌のこととか、音楽のこととか、毎日考えて楽しんでいる生活に変わりはないんですけど、自分の歌についてあれこれと思いを巡らせることが多かった、この10月でした。

歌が上手い人を「歌うまさん」とSNSとかでは言ったりします。その中でも、特に歌が上手い人は「歌の化け物さん」と言われたりします。「歌うまさん」って世の中にはたくさんいらっしゃいます。ぼくでさえ「歌うまさん」扱いされてるんですから。

今月ぼくが参加したカラオケ大会は、全国から「歌の化け物さん」が多数集まる大会でした。それだけに審査員の審査も厳しいものでした。プロの方は、「歌うまさん」だろうが「歌の化け物さん」だろうが、アマチュアとしては一括りで見ます。審査の総評として言われるのは、「脱『上手い歌』を目指しなさい」というものです。出場者が歌が上手いというのは同じなので、ここでの差はつかなくて、当日の歌の些細な箇所のミスとか不足で、入賞するかしないかが決まってくるわけです。もう1つは「皆さん歌いすぎています。もっと語ってください」というものです。ぼくも審査員の皆さんから寸評で書かれた点がこのことでした。自分としては結構語るように歌っていると考えていましたけど、「欲を言えばここの歌詞のところは、私的には語って欲しい」とか「まだ歌いすぎています」とか書かれてしまいました。ぼくとしては自分が考えている歌で他のカラオケ大会では入賞したこともありましたので、歌っている作品へのスタンスとか崩れてしまいそうになりますし、心も揺れ動いたりしました。

カラオケ大会が終わって、ぼくがよくおじゃましているお店で、初めてご一緒したお客さんにもぼくのその歌を聴いて頂きましたけど、「いい歌ですよ。どこが悪いんですか」とお世辞抜きで言って貰って、少し折れていた心が取り戻せました。

ぼくたちがプロの歌手の歌を好きだ嫌いだとか勝手に思っているのと同じように、ぼくの歌を良く思わない人もいれば、褒めてくださる人もいるのは十分わかっているんですけど、なかなか割り切れないときもたまにはあります。

「上手い歌」を脱して目指すのが「いい歌」なんですけど、「いい歌」ってどういう歌なんだろうって、いつも考えたりします。

昨日もそのお店に言って、初めてお会いする多くのお客さんとご一緒しまして、ご高齢のお客さんから「何か歌って」と言われたので、若手のお客さんだったぼくを含めて3人が、演歌や歌謡曲を歌いました。ぼくは若手の演歌歌手の曲を何曲か歌ってみまして、どういうふうに反応してくれるかなあと思いながら歌いました。ご高齢のお客さんたちからは、「その歌手もその曲も知らないけど、お兄さん上手いよ。いい声してるよ」と言われて、その優しさに感謝して嬉しかったです。お店でお客さんは会話を楽しんだり、お酒を楽しんだりしているのがメインなわけで、そういう環境で歌を歌って見て、お客さんが何だかぼくの歌に耳を傾けてくれていたり、体で乗って聴いてくださったり、拍手したり声を掛けてくださる歌は、いい歌が歌えたのだろうと思っています。

ご高齢のお客様が帰られて、残った3人で、今度はヴィジュアル系ロックやポップスに変えて順番に歌ってましたけど、他のお2人は高音の伸びに強みを持つ上手い人であり、どの声域も厚みのある声に強みを持つ上手い人でした。ぼくはもともと高音の声域は地声が出なくて裏声じゃないと歌えないので、歌える2人のお声が羨ましくも、逆にぼくはどんな強みを持ったらいいのかなあと考えてしまいました。ママさんは「あなたもいい歌を歌っている。それぞれ皆さん違う上手さなのよ」とぼくを励ましてくれました。

この後、ご常連のお客さんが来られたんですが、事前に歌は上手くないという話を聞いてたんです。それでその方の歌を何曲か聴いたんです。確かに音程はかなり合っていない。でもリズムにはちゃんと付いていっていました。だからぼくはその方に「リズム感がいいですね」って申し上げました。ぼくはお世辞は言わないんです。それで前半の高齢者のお客さんの歌声とあわせて、気づいたことがあったんです。どの方も歌う曲は気に入っていて、その曲を歌おうという気持ちが強くあって、音程やリズムが合っていないところがあっても、伝わるものってあるんですよね。

翻って、ぼくはカラオケ大会という業界に足を踏み入れてしまって、歌い方の技術を向上させることや、歌の聞き心地を重視する考え方に縛られてしまって、変に中途半端にカッコつけた歌になってはいないかなあって思うことがあります。歌って、もっとストレートに、何も考えずに、歌えるのが結果としてはいいと思います。楽しく歌うことは忘れてはいませんけど、テクニックを越えた先の歌を、1曲だけでも歌えるようになりたいなあと思います。