2月20日、ぼくは神奈川県の海老名市文化会館大ホールで開催された、第3回音ノ市カラオケコンサートというカラオケ大会に行って、歌ってきました。
この大会を知ったのは1月12日、Twitterのフォロワーさんが、「「音ノ市」という神奈川のカラオケ大会で最上位クラスでの出場が決まりました〜!」というツイートをしているのを読んだのがきっかけでした。すぐに大会のホームページを見たところ、参加は3クラスあって、初級のCクラス歌唱の部(審査員の審査なし)、中級のBクラスベテランの部(審査員の審査あり)、上級のAクラススペシャルの部(審査員の審査あり)でした。Aクラスで参加するには事前の音源審査が必要とありました。募集は昨年の11月からやっていたようで、締切は間近な状況でした。すぐに主催者の方に質問のDMをお送りしました。ぼくはカラオケ大会では「アウフヘーベン」というステージネームで出場することが多いので、この大会でもステージネームで出場できるのかをお聞きしたところ、OKの返答が返ってきました。また、すぐに音源審査の動画を送る必要があったので、この大会はDAMを使用するのですが、JOYSOUNDのうたスキ動画でもよいかをお聞きしたところ、こちらもOKとのことでした。
1月14日の夜にカラオケのお店(まねきねこ)に行ってうたスキ動画を収録して、1月15日の朝にうたスキ動画の音源を送りました。1週間ぐらい待つのかなと思っていたら、3時間後に「審査の結果、Aクラススペシャルの部への参加を承諾いたします。」との返事が来ました。送付した音源についてもお褒めのコメントも頂きましたが、「気になったのは歌の入りの部分がピッチがぼやけているので、一番大事な歌の入りはより正確に入れると良くなります。また音の高い部分は喉を開いた状態で出せると尚いいです。」と的確なアドバイスも貰えたのが嬉しかったです。
合わせて主催者からは、「Aクラスは大会優勝、入賞経験者、カラオケTV番組出演者なども多く、是非本番まで練習を続け挑戦してみてください」とのコメントがありました。2月10日頃に出場者と曲名が大会のホームページにも公表され、前回より参加者も大幅に増えて、出場者も、昨年の歌唱王に出場された方、全国規模のカラオケ大会に出場された方、大会優勝経験者、歌うまキッズとして活躍されている方等々、目を疑うような錚々たるメンバーでした。
そして当日、会場に行ってみたら、オンラインのカラオケ大会で交流のある多くの方々と初めて直接会うことができました。本名は存じませんでしたが、歌う姿を動画で見ていましたのですぐにわかりました。現地の会場で歌う従来のカラオケ大会をいつしか「リアル大会」と呼ぶようになりましたが、ぼくはオンライン大会よりもリアル大会の方が好きです。大会というからには、歌唱を順位で競うことにはなりますけど、その戦いは他者との戦いというよりは、自分との戦いなので、一緒に参加する人たちとは日頃話すことができない、歌に対する思いとか考え方を知ることができますので、そういう話って自分にとっても学べることが多いなあと思います。
ぼくが歌ったのは、林部智史さんの「晴れた日に、空を見上げて」という曲です。昨年末から歌い始めたばかりの曲でしたが、試してみたい気持ちが強くて、直近の他の大会でも歌ってみました。ぼくの場合、この曲を原曲キーでは歌えないので、6つキーを下げて歌うことにしました。今まで原曲キーで歌える曲を選ぶことが多かったので、自分のキーに合わせて歌うのはいいけど、原曲のイメージを崩すのではないかという不安がありました。
他の大会で歌ったとき、入賞はしましたけど、審査員の先生から「いつもおしゃれに歌うのに、らしくない歌い方で、響いてこなかった。発声がよくて無難に歌ったっていう印象が強い」と書かれたのに驚いたんです。それで、その先生に、響くとか熱(ねつ)を歌で伝えるためのヒントってありますかってお聞きしたところ、1つの音を分解して考えるというアドバイスを頂きました。最初が「と〜く〜べ〜つ〜な」という、それぞれの4分音符を16分音符4つに分解して、言わんとすることは、楽譜どおりの1つの音を歌うのではなく、そこに揺らぎというかバウンスというか、彩りや幅を加える工夫が必要だということなのかなと解釈しました。そこを表現することで、聴いている人にワクワクする気持ちを持ってもらえるのかなと思いました。
そういう頭で林部さん本人の歌を聴いてみると、そんなことをやっているのかなあとうっすらと感じられました。でも自分が歌って試してみると、ベースとなる音は保ちつつ、幅を持たせるというのはそう簡単にはできませんでした。それでも、そういう意識は持っていこうと思いました。
本番前。リハ室で声出しをして、最初にアドバイスを受けた、最初の入りのピッチを安定させること、高音のサビをはっきりと出せることに注意しつつ、もう1つの課題だった「熱」をどう出そうかと思った時、この大会の審査員の方が、冒頭の挨拶で、「この大きなホールで、スターになったつもりで歌ってみてください」と言われたのを思い出しました。
この曲を発売したころの林部さんもデビュー2年目で、歌番組の動画を見たんですが、必死に健気に歌っている姿がとってもいいなと思ってました。それで、この瞬間だけでもあの時の林部さんになってみようと思ったんです。海老名市文化会館大ホールは1000席以上ある大きなホールでしたが、照明で客席が見えないこともあって、緊張はしませんでした。ぼくはホールで歌い始めると、なぜか急にスイッチが入ってしまうタイプで、ステージに立ってる方が歌の主人公になれる感じがするんです。自分でも歌いながらちょっと大げさに歌ってるかなとは思いましたけど、手振りも含めて妙に気持ちが入って歌えたなあと思いました。歌い終わって舞台袖に戻ったら、知り合いの歌仲間の人から「凄い良かった。ジーンと来ましたよ」と言われて、その時はちょっと意外な感じがしました。
この大会はCクラス、Bクラス、Aクラスの順番に歌っていきましたが、Cクラスの方も歌が初級どころか十分に上手い方もいて、Bクラスの方もAクラスレベルの方も何人もいて、クラス分けというのはあまり関係がない気がしました。Aクラスの出場の方は上手いのは当たり前で、さらに技術や表現も優れている方が多かったので、客席で聴いていてもすごく聴き心地がいい歌ばかりでした。歌の上手い人ってゴロゴロいるなあとつくづく感じました。また、出場者の中には歌うまキッズも多かったです。完璧なぐらいに歌を仕上げていて、すごく練習しているんだなあと思いました。
全員の歌唱が終わり、審査員の先生の総評がありました。1人目の先生は「皆さん上手いんですけど、どの方も同じ声に聞こえてしまう。プロを目指すのであれば、歌って自分の声だとわかるようにならないといけない」とのコメント。結構厳しいなあ。これって他の大会でも「綺麗に歌いすぎてる」と言われてることと似てるなあと思いました。2人目の先生は「前回よりレベルアップし、感動をもらいました」とのコメント。確かに、第2回の音ノ市よりも人数が大幅に増えただけでなく、あちこちからレベルの高い参加者が集まった印象は強かったです。最後に審査委員長が「発声は皆さんできている。プロになれる素養のある人もいた。僅差だと思うが、差が出たとすれば、それは言葉の伝え方。言葉をハッキリと伝えない人が多かったが、大事なこと」とコメント。これってプロに対していうことだなあと思いました。
そして、入賞者の発表。Aクラスはまず歌唱賞5人の発表。ここで、ぼくが素晴らしいと思って優勝に近いと思っていた2人が発表されて、「あんなに完璧なのに、ここなのか」と厳しさを痛感して自分の入賞は諦めました。続いてTVK賞、優秀歌唱賞の発表。呼ばれません。さらに続いて、最優秀歌唱賞の発表。「エントリーナンバー50番、アウフヘーベンさんです」と呼ばれた瞬間、本当にぼくでいいのか?って耳を疑いました。すぐに走ってステージに上がり、賞状と盾を受け取るとき、本当にジワっと嬉しさが込み上げてきました。その後、審査員特別賞、準優勝、優勝の発表があり、ぼくは4位で入賞することができました。
帰りの電車の中で、どうして自分が素晴らしいと思った人の歌よりも、自分の歌が評価されたのかを考えていました。3人の審査員の先生の寸評を頂きましたが、共通して書かれていたことは「歌詞をハッキリと歌っている」ということと、「説得力がある」ということでした。説得力については、「楽曲のドラマを上手く作り上げている」とか「声量のコントロールが上手」という言い方でした。
あくまでもぼくの推理にすぎませんけど、審査員の先生たちはプロのアーティストの歌も数多く聴いている方々なので、当然アマチュアの歌い方など見え透いているわけで、そのアマチュアが完璧にまとめていると思っている歌には、ぼくのような素人ほどには感動するものが少なかったのかなと想像しました。ぼくの歌をプラスに感じてもらえたとするならば、そこに熱さとか健気さを汲み取って貰えたのかな。この人、なかなか頑張ってるじゃないみたいなところだったのかなと思いました。
もちろん、審査委員長からは「各フレーズの語尾の歌い方にもう少し抑揚があると、もっと説得力のある歌になります」とアドバイスを貰いました。いろいろな大会に出ていると、抑揚1つを取ってみても、多すぎるとか少なすぎるとかいろいろ言われます。そういういろいろな注文をひとまとめにして表現しないと、歌としては評価してもらえない。不器用なぼくには高いハードルです。審査員によって評価も全く変わってきます。今回はぼくにとっては審査員の相性が良かったから入賞できましたけど、逆の場合のことの方が多いです。先生方のコメントは受けとめますけど、その上で自分はどういう歌を歌いたいのかっていうことを大会に出た後に振り返って考えることの方が大事だなって思います。
それにしても、ホールで歌えるというのは気持ちいいなと思います。ぼくが初めて出たときのカラオケ大会もホールでした。これ以上ないってくらいに緊張しましたけど、それでもステージに立って歌ってみたら気持ちがよかったという感覚で、その後ぼくはカラオケ大会に出るようになりました。歌える幸せというのをつくづく感じます。