DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

名付け合う旅路

ぼくが最近よく聴いているアーティストさんのシキドロップさん。2017年12月に結成されたボーカルの宇野悠人さんとピアノの平牧仁さんの2人からなるユニットです。

ぼくが彼らのことを知ったのはたぶん2019年頃で、Twitterのフォロワーさんが「好きな声の歌い手さんがいる」と紹介されたのがきっかけでした。その時聴いたのは「おぼろ桜」という曲でした。


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春夏秋冬をテーマにしたアルバム「シキハメグル」を聴いて、イメージがわかりやすいというのもありましたが、宇野さんの声にも平牧さんのピアノにも、綺麗な歌声や旋律だけではなくて、人生の苦さとかやりきれなさみたいなものが表現されていて、いいなと思いました。

DAM★ともで当時は「さくら紅葉」と「ホタル花火」が配信されていて、ぼくも何十回も歌いましたけど、メロディーの音程がうまく当たらなかったり、宇野さんのキーがぼくには高いので、キーを3つ下げて歌っていたので細かい音をトレースするのがわかりにくくて、作品は好きだけど、公開するほどのレベルには達してませんでした。

2022年に入って、シキドロップさんが4枚目のミニアルバム「名付け合う旅路」をリリースしたのをきっかけに、彼らの曲を聴くようになって、久しぶりに「さくら紅葉」と「ホタル花火」を歌ってみたら、以前よりも軽くスッキリと歌えるようになったのに気付きました。たぶん、何回も彼らの曲を聴くことによって、歌い方の緩急みたいなところを身につけられた感じがしました。採点もやっと95点を超えることができるようになって、これなら人前で歌っても大丈夫かなと思えるようになりました。

さて「名付け合う旅路」はアルバムのタイトル曲でもありますが、変わった言葉だと思いました。そのあたりを作詞・作曲した平牧さんが、インタビュー記事で答えていました。「みんな名前を持たずに生まれてきて、誰かに名付けてもらう。そこでいろんな物か決まるというか。やっていることに対して誰かに名前をつけてもらってアーティストになるのかもしれない。それは自分ではできないことじゃないですか、自称になっちゃいますから。だから、コロナ禍で、名付けてもらうことってすごく大事なことだったんだなと気づいたんです」そして、「自分自身、ライブができなくなった時に「俺って何者なんだろう」って考えたんですよね。音楽ができなくなった時に「自分って本当に何も持ってないんだな」、「なんで生きているんだろう」って思ったこともある。その時に「名付けて欲しい。自分の名前とか価値って何だろう」って思いました。そういう思いを同じように抱えている人がいるのであれば、このうたが一個のお守りというか、自分に対して良しと思えるものを見つけてもらえたらいいなと。」

価値のない人なんていないと思います。ただ、予期せぬ渦に巻き込まれる中で、自分を見失ってしまうことはあるかもしれません。それでも、今を乗り越えて、自分の生きる道を再び見据えていこうと、この世に生きる人たちそれぞれが心の中に秘めていると思います。明日の自分を作るのは自分自身なんですから。そういう、今を歌う歌にぼくは共感することが多いです。


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寒緋桜

この週末は東京も20℃の暖かさで、一気に春めいて、早咲きの桜の花が咲いてました。

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この桜は寒緋桜(カンヒザクラ)といって、元々は中国南部や台湾を原産とする木で、沖縄では1月〜2月に開花します。江戸時代には本州に伝わり、暖地の庭園、公園、街路に植栽されました。東京ではソメイヨシノはまだですけど、3月上旬頃から寒桜系の桜が咲き始めます。寒緋桜の花言葉は「あでやかな美人」「善行」「高貴」「尊大」。ソメイヨシノの薄いピンク色と比べると、濃い紅色の花をつけています。花言葉から想像するのは気高くて、ちょっと生意気なお嬢様な感じで、花の心も移ろいやすいものかもですね。

この週末はカラオケでの歌の練習はお休みして、書店で音楽の本を読んだり、楽器屋さんをぶらぶらと巡ってたりしてました。

そうしようと思ったきっかけの1つは、あるカラオケ大会の募集要項でした。「まだお一人も申し込みがいらっしゃいません!」と主催者の方がツイートしていて、募集内容を読んだら、課題曲が審査委員長を務める作曲家の方のオリジナル曲で、参加者には音源ファイルと歌詞を渡すので、1コーラス歌って動画ファイルを送ってください、と書いてありました。

ぼくはカラオケで歌う人なので、自分の歌の録音にしても動画にしても、DAM★ともに投稿すれば第一興商さんが公開してくれるし、CDにプレスするときもビッグエコーでプレスできるし、マイクはお店のマイクを使うので、要は自前で録音機器とか持っていないんです。

その大会に興味を持ったので、主催者の方に録音機器を持っていない中での録音方法を質問したところ、いくつかの方法を教えて頂いた中で、出てきたのがオーディオインターフェースの購入でした。

もう1つのきっかけは、ラジオ番組で紹介した歌詞に曲をつけて、音源をCD-Rに焼いて提出して応募してみようという企画でした。選ばれた曲を歌う方がぼくが存じ上げている方だったので、作ってみたいとは思ったものの、作成機器を何も持っていません。昔だったら、カセットテープに歌を吹き込んで送るということなんでしょうが、そもそも音源は演奏なのか歌でもいいのかわからず、こちらも番組のパーソナリティである作詞家の方に質問したところ、それはどの方法でも自由とのことでした。言われたことは、曲の良さをアピールすることと、歌詞をどのようにメロディーに当てはめるのかわかるようにしてくださいとのことでした。

2つとも、自分で歌唱音源を作らないといけないということは共通していました。どちらの企画も応募したい気持ちはあるものの、作るためには知識が必要だ!ということで、まずは書店を巡りました。音楽の本のコーナーでオーディオの本やレコーディングの本を何冊も読んでみて、キーワードとなる言葉をいくつかチェックしました。オーディオインターフェースとは、マイクや楽器をPCに繋ぐための機器、なんだそうです。PCで音楽を制作する方法を習得しないといけない時代なんですよね。ぼくはマイクにしても、いくら性能の良いマイクを買ったって、歌唱力が伴わなければ意味がないだろうという意固地な考えがありまして、どんなマイクを渡されても自分で使いこなせるのがボーカルの実力だろうと思って、マイマイクを持たないようにしています。そんな考えも改めなきゃと思いながら、電子機器の本のコーナーでもオーディオの本を読みました。なかなか言葉が頭に入っていきませんので、近くの家電量販店に行って、音響オーディオのフロアで、オーディオインターフェースの現物を目にしました。価格も見て、こういうことを始めたらお金が一定にかかるなあと思いました。その後で、楽器店をいくつか巡りました。昔からの楽器店が多い街なので、楽器は豊富な品揃えなんですけど、電子オーディオ関係はそこまではない感じでした。それよりも、自分自身がこの方面の知識をまずは勉強しないと、買うものを選べないと思い、店を後にしました。

もしも、ぼくがシンガーになったらって、妄想みたいに考えることがあって、提供してくれる作詞家も作曲家もいなかったら、自分で作るしかないんだろうな。その時に、作る知識が何もなかったら、歌いたくても歌えない。そんなことを沸々と思ってたりしたから、偶然目にした企画から一気に思いが進んでしまったのかもしれません。音楽を仕事としてやるのは大変なことなんだろうなと思いますが、可能性が広がるんだったら、これから音楽を作ることも勉強しようと思います。いつか実をつけて、花が咲くかもと、寒緋桜の花をついばむ小鳥を見ながら、ぼくの妄想は広がりそうです。

花に約束

ぼくが音楽を聴く時間は、仕事の行き帰りとか、休日の散歩とか、外にいる時が多いです。大体はYouTubeの動画を、動画を見ないで、音楽だけを聴いています。歩きながら聴いてることも多いので、ランダムに流れてくる曲を聴いて、いい曲だなと思ったら、立ち止まって、初めて動画の画面を見てみます。最近のそんな1曲が、林部智史さんの「花に約束」という曲でした。

NHKラジオ「ラジオ深夜便」の「深夜便のうた」というのがあって、「花に約束」は2022年2月・3月の「深夜便のうた」として放送されているそうです。

ラジオ深夜便」はNHKラジオ第1放送が23:05から翌朝5:00まで、NHKFM放送が深夜1:05から5:00まで、毎日放送しているラジオ番組で、シニアの聴取者層の支持が強い番組という印象が強いです。「深夜便のうた」は深夜便リスナーに楽しんでもらえる歌を、オリジナルに製作したり独自に選曲したりするもので、平成18年4月よりスタートしたそうです。「深夜便のうた」は原則、午前1時台に放送されるそうです。

「花に約束」の作詞は小椋佳さん、作曲は追川礼章(おいかわ あやとし)さんです。小椋さんは、2021年1月20日に発売された林部さんのアルバム「まあだだよ」で収録の全曲を書き下ろすとともに、次代を担うシンガーとして、林部さんを後継者として指名され話題になりました。追川さんは東京藝術大学を卒業された音楽家の方ですが、アマチュア時代の頃から林部さんと交流があり、林部さんのコンサートマスターとしてピアノを演奏されています。「花に約束」はそういう3人の交流の中で生まれた曲だと想像しています。

林部さんは、「花に約束」が「深夜便のうた」に決まったときに、「世代間を超えて、この先聞き継がれ、歌い継がれて欲しい一曲です。美しい言葉がたくさん散りばめられている歌に、一つ一つ自分なりに解釈を深めて、歌っていきたいです」とコメントを寄せました。

小椋佳さんは出演されていたテレビ番組で、「他人が使っていない言葉で表現する」ことにこだわりを持っていると言われていましたが、この作品の歌詞でも、そういう言葉を敢えて使われているように思いました。冬の寒さとまだ実現しない夢を掛け合わせて、「夢も凍える 寒い日続き ひたすら なけなしの 胸に息づく夢」と語り、春の到来と夢の実現を掛け合わせて、「季節の約束は 今果たされ ふくよかな風」と書いてみせています。

ぼくたちはどんなジャンルの歌を歌うにしても、暗号や記号を歌ってるのではなく、言葉を伝えて歌うわけだし、日本語って国語辞典にも膨大な言葉を載せているわけで、そういう巧みな感性を伝える言葉を歌詞にして、メロディーに乗せるほうが、歌の場面も景色も広がっていくものであるということを、小椋さんは伝えたいのかもしれないと思いました。

追川さんの作られたメロディーも、Aメロ2回のあとBメロ2回というシンプルな構成でありながら、冬の寒さや耐える心、春咲く桜の艶やかさ、散った後もまた咲くことへの期待といった言葉のイメージを、ドラマチックなアレンジを加えて、明解に伝えていると感じました。

日常の一コマを淡々と歌っているようで、実はその奥に揺れ動く心を感じさせてくれる曲って、ぼくは好きなんです。道を歩きながら聴いているその歌や詞やメロディーが、その街の空気を映し出していると感じられると、この曲は今のこの時を歌ってていいなと思うんです。

そして、林部さんの歌も、考えて歌ってるなあと感じました。ぼくは林部さんの歌は好きですけど、ファンの方とはちょっと目線は違うのかもしれないと思ってます。ぼくが感じる林部さんの魅力は、自分が歌う曲に対してどうやって歌うかということを真摯に取り組んでいることだと思っていて、歌番組で往年の名曲を歌っている姿を拝見すると、自分のキャラクターをわかった上で、上手く表現してるなあと感心することが何度もありました。そういう意味で、歌の勉強をしているぼくにとっては、お手本になる方だと思っています。でも、林部さんも歌が完璧かというと、そうではなかったりします。そういうところもまたいいかなと思ってます。

「花に約束」、早くDAM★ともで歌いたいと思います。

 

 

自分を出せる1曲

ぼくはDAM★ともでも色々なジャンルの曲を歌っています。カラオケのフリータイムで4時間ぐらい時間があったりすると、カラオケ大会で歌う曲を練習することをベースにはするんですけど、同じ曲ばかり歌うのって飽きてくるんです。そうなると、他の曲も歌ってみようと気晴らしに、まず演歌や歌謡曲を歌ったら、次はジャニーズの曲を歌ってみて、他のジャンルもということで抒情歌や子供向けの歌を歌ったら、それじゃもっと他のもと、ロックやフォークを歌ったところで、「今日は練習しに来たんだった」とポップスに戻って歌うという感じで、ぼくのカラオケリストは結構支離滅裂な感じです。

また、つい先日も、よく行っているカラオケスナックのお店で4時間ぐらい歌いました。他のお客さんたちと交互に順番で歌いますから、12曲ぐらい歌ったと思います。演歌や歌謡曲を歌う方が多かったので、この日はぼくも演歌や歌謡曲を中心に、たまにJPOPを歌いました。聴いてくださる方からは、素敵な歌声だとか、どの曲も外さないとか、表現が細やかとか、カラオケ大会で審査員の方に言ってもらいたい言葉を次々と言ってもらえて、素直に嬉しかったです。

ぼくは、カラオケでも、色々なアーティストさんの曲を歌いたいというのがありまして、いいなと思ったアーティストさんの曲をまず1曲歌えるようになろうと練習します。そうやって1曲が歌えるようになったら、2曲目も歌ってみたいと思って次に進んでいく場合もあります。

そうやって色々な曲を歌っていくのは、ある意味真逆なのかもしれませんけど、「自分を出せる1曲」を探していることと同じなのかなと思っています。自分が上手く歌えるかなと予想していた曲が、歌ってみたら難しいし自分には合わないと感じることもありますし、逆に、自分が心の中で何となく敬遠していた曲が、歌ってみたら意外に相性が良くて、上手くなるかもしれないと感じることもありますが、そういうことはまず自分で歌ってみないと体感できないと思っています。

そうやって、ある程度歌える曲っていうのはおかげさまで何曲も持つことができました。でも、この中で「自分を出せる曲」となると、そういう曲ってあるのかなって考えてしまいます。

最近のカラオケ大会に出ていても、皆さん歌が上手いんです。言い方を換えると、その曲を器用に表現して歌っています。だから、そこでの差はほとんどないと思います。となると、大会で順位をつけるための差は、単純な歌の上手さ以外のところで見られていると思います。それは例えば、自分が歌の主人公の中に入ってみて、自分が思うその曲を、自分の人となりも投映させて表現するみたいなものなのかなと思っています。ぼくが先日のカラオケ大会で入賞できた歌を、「気持ちが入っていた」と評価してくれた方がいたんですが、ぼくの場合は歌っているときの林部さんになりきってみようと思ったことが、歌う時に自然と気持ちが入ってきたのかもしれません。

ぼくは、ライブで歌を歌ったことはありません。ライブだと、セットリストを用意して、その日の自分が何を表現してみたいのかを決めていくものなんだろうと思います。もし、自分がライブで1曲歌ってと言われた時に、何を歌おうかって決められないんです。

オリジナル曲があれば自然と決まるのかもしれません。「自分を出せる1曲」というのは、自分はこういう歌を歌う者ですみたいな、挨拶代わりみたいな1曲で、聴いてる方も「ああこの曲ね」と頷いてもらえるような特別な1曲があったらいいなと、最近思うようになりました。

改めて、選曲って大事だなと思います。その曲を歌いたいから選んだのはわかっています。もう一歩踏み込んで、その曲を歌った自分は聴く人にどんな感じに見えるのかって想像してみて、自分の良さがうまく引き出せているかっていう目でみると、自分に合った1曲を見つけられると思います。ぼくはまだその道の途中です。

 

音ノ市カラオケコンサート

2月20日、ぼくは神奈川県の海老名市文化会館大ホールで開催された、第3回音ノ市カラオケコンサートというカラオケ大会に行って、歌ってきました。

この大会を知ったのは1月12日、Twitterのフォロワーさんが、「「音ノ市」という神奈川のカラオケ大会で最上位クラスでの出場が決まりました〜!」というツイートをしているのを読んだのがきっかけでした。すぐに大会のホームページを見たところ、参加は3クラスあって、初級のCクラス歌唱の部(審査員の審査なし)、中級のBクラスベテランの部(審査員の審査あり)、上級のAクラススペシャルの部(審査員の審査あり)でした。Aクラスで参加するには事前の音源審査が必要とありました。募集は昨年の11月からやっていたようで、締切は間近な状況でした。すぐに主催者の方に質問のDMをお送りしました。ぼくはカラオケ大会では「アウフヘーベン」というステージネームで出場することが多いので、この大会でもステージネームで出場できるのかをお聞きしたところ、OKの返答が返ってきました。また、すぐに音源審査の動画を送る必要があったので、この大会はDAMを使用するのですが、JOYSOUNDうたスキ動画でもよいかをお聞きしたところ、こちらもOKとのことでした。

1月14日の夜にカラオケのお店(まねきねこ)に行ってうたスキ動画を収録して、1月15日の朝にうたスキ動画の音源を送りました。1週間ぐらい待つのかなと思っていたら、3時間後に「審査の結果、Aクラススペシャルの部への参加を承諾いたします。」との返事が来ました。送付した音源についてもお褒めのコメントも頂きましたが、「気になったのは歌の入りの部分がピッチがぼやけているので、一番大事な歌の入りはより正確に入れると良くなります。また音の高い部分は喉を開いた状態で出せると尚いいです。」と的確なアドバイスも貰えたのが嬉しかったです。

合わせて主催者からは、「Aクラスは大会優勝、入賞経験者、カラオケTV番組出演者なども多く、是非本番まで練習を続け挑戦してみてください」とのコメントがありました。2月10日頃に出場者と曲名が大会のホームページにも公表され、前回より参加者も大幅に増えて、出場者も、昨年の歌唱王に出場された方、全国規模のカラオケ大会に出場された方、大会優勝経験者、歌うまキッズとして活躍されている方等々、目を疑うような錚々たるメンバーでした。

そして当日、会場に行ってみたら、オンラインのカラオケ大会で交流のある多くの方々と初めて直接会うことができました。本名は存じませんでしたが、歌う姿を動画で見ていましたのですぐにわかりました。現地の会場で歌う従来のカラオケ大会をいつしか「リアル大会」と呼ぶようになりましたが、ぼくはオンライン大会よりもリアル大会の方が好きです。大会というからには、歌唱を順位で競うことにはなりますけど、その戦いは他者との戦いというよりは、自分との戦いなので、一緒に参加する人たちとは日頃話すことができない、歌に対する思いとか考え方を知ることができますので、そういう話って自分にとっても学べることが多いなあと思います。

ぼくが歌ったのは、林部智史さんの「晴れた日に、空を見上げて」という曲です。昨年末から歌い始めたばかりの曲でしたが、試してみたい気持ちが強くて、直近の他の大会でも歌ってみました。ぼくの場合、この曲を原曲キーでは歌えないので、6つキーを下げて歌うことにしました。今まで原曲キーで歌える曲を選ぶことが多かったので、自分のキーに合わせて歌うのはいいけど、原曲のイメージを崩すのではないかという不安がありました。

他の大会で歌ったとき、入賞はしましたけど、審査員の先生から「いつもおしゃれに歌うのに、らしくない歌い方で、響いてこなかった。発声がよくて無難に歌ったっていう印象が強い」と書かれたのに驚いたんです。それで、その先生に、響くとか熱(ねつ)を歌で伝えるためのヒントってありますかってお聞きしたところ、1つの音を分解して考えるというアドバイスを頂きました。最初が「と〜く〜べ〜つ〜な」という、それぞれの4分音符を16分音符4つに分解して、言わんとすることは、楽譜どおりの1つの音を歌うのではなく、そこに揺らぎというかバウンスというか、彩りや幅を加える工夫が必要だということなのかなと解釈しました。そこを表現することで、聴いている人にワクワクする気持ちを持ってもらえるのかなと思いました。

そういう頭で林部さん本人の歌を聴いてみると、そんなことをやっているのかなあとうっすらと感じられました。でも自分が歌って試してみると、ベースとなる音は保ちつつ、幅を持たせるというのはそう簡単にはできませんでした。それでも、そういう意識は持っていこうと思いました。

本番前。リハ室で声出しをして、最初にアドバイスを受けた、最初の入りのピッチを安定させること、高音のサビをはっきりと出せることに注意しつつ、もう1つの課題だった「熱」をどう出そうかと思った時、この大会の審査員の方が、冒頭の挨拶で、「この大きなホールで、スターになったつもりで歌ってみてください」と言われたのを思い出しました。

この曲を発売したころの林部さんもデビュー2年目で、歌番組の動画を見たんですが、必死に健気に歌っている姿がとってもいいなと思ってました。それで、この瞬間だけでもあの時の林部さんになってみようと思ったんです。海老名市文化会館大ホールは1000席以上ある大きなホールでしたが、照明で客席が見えないこともあって、緊張はしませんでした。ぼくはホールで歌い始めると、なぜか急にスイッチが入ってしまうタイプで、ステージに立ってる方が歌の主人公になれる感じがするんです。自分でも歌いながらちょっと大げさに歌ってるかなとは思いましたけど、手振りも含めて妙に気持ちが入って歌えたなあと思いました。歌い終わって舞台袖に戻ったら、知り合いの歌仲間の人から「凄い良かった。ジーンと来ましたよ」と言われて、その時はちょっと意外な感じがしました。

この大会はCクラス、Bクラス、Aクラスの順番に歌っていきましたが、Cクラスの方も歌が初級どころか十分に上手い方もいて、Bクラスの方もAクラスレベルの方も何人もいて、クラス分けというのはあまり関係がない気がしました。Aクラスの出場の方は上手いのは当たり前で、さらに技術や表現も優れている方が多かったので、客席で聴いていてもすごく聴き心地がいい歌ばかりでした。歌の上手い人ってゴロゴロいるなあとつくづく感じました。また、出場者の中には歌うまキッズも多かったです。完璧なぐらいに歌を仕上げていて、すごく練習しているんだなあと思いました。

全員の歌唱が終わり、審査員の先生の総評がありました。1人目の先生は「皆さん上手いんですけど、どの方も同じ声に聞こえてしまう。プロを目指すのであれば、歌って自分の声だとわかるようにならないといけない」とのコメント。結構厳しいなあ。これって他の大会でも「綺麗に歌いすぎてる」と言われてることと似てるなあと思いました。2人目の先生は「前回よりレベルアップし、感動をもらいました」とのコメント。確かに、第2回の音ノ市よりも人数が大幅に増えただけでなく、あちこちからレベルの高い参加者が集まった印象は強かったです。最後に審査委員長が「発声は皆さんできている。プロになれる素養のある人もいた。僅差だと思うが、差が出たとすれば、それは言葉の伝え方。言葉をハッキリと伝えない人が多かったが、大事なこと」とコメント。これってプロに対していうことだなあと思いました。

そして、入賞者の発表。Aクラスはまず歌唱賞5人の発表。ここで、ぼくが素晴らしいと思って優勝に近いと思っていた2人が発表されて、「あんなに完璧なのに、ここなのか」と厳しさを痛感して自分の入賞は諦めました。続いてTVK賞、優秀歌唱賞の発表。呼ばれません。さらに続いて、最優秀歌唱賞の発表。「エントリーナンバー50番、アウフヘーベンさんです」と呼ばれた瞬間、本当にぼくでいいのか?って耳を疑いました。すぐに走ってステージに上がり、賞状と盾を受け取るとき、本当にジワっと嬉しさが込み上げてきました。その後、審査員特別賞、準優勝、優勝の発表があり、ぼくは4位で入賞することができました。

帰りの電車の中で、どうして自分が素晴らしいと思った人の歌よりも、自分の歌が評価されたのかを考えていました。3人の審査員の先生の寸評を頂きましたが、共通して書かれていたことは「歌詞をハッキリと歌っている」ということと、「説得力がある」ということでした。説得力については、「楽曲のドラマを上手く作り上げている」とか「声量のコントロールが上手」という言い方でした。

あくまでもぼくの推理にすぎませんけど、審査員の先生たちはプロのアーティストの歌も数多く聴いている方々なので、当然アマチュアの歌い方など見え透いているわけで、そのアマチュアが完璧にまとめていると思っている歌には、ぼくのような素人ほどには感動するものが少なかったのかなと想像しました。ぼくの歌をプラスに感じてもらえたとするならば、そこに熱さとか健気さを汲み取って貰えたのかな。この人、なかなか頑張ってるじゃないみたいなところだったのかなと思いました。

もちろん、審査委員長からは「各フレーズの語尾の歌い方にもう少し抑揚があると、もっと説得力のある歌になります」とアドバイスを貰いました。いろいろな大会に出ていると、抑揚1つを取ってみても、多すぎるとか少なすぎるとかいろいろ言われます。そういういろいろな注文をひとまとめにして表現しないと、歌としては評価してもらえない。不器用なぼくには高いハードルです。審査員によって評価も全く変わってきます。今回はぼくにとっては審査員の相性が良かったから入賞できましたけど、逆の場合のことの方が多いです。先生方のコメントは受けとめますけど、その上で自分はどういう歌を歌いたいのかっていうことを大会に出た後に振り返って考えることの方が大事だなって思います。

それにしても、ホールで歌えるというのは気持ちいいなと思います。ぼくが初めて出たときのカラオケ大会もホールでした。これ以上ないってくらいに緊張しましたけど、それでもステージに立って歌ってみたら気持ちがよかったという感覚で、その後ぼくはカラオケ大会に出るようになりました。歌える幸せというのをつくづく感じます。

 

自分軸で歌うこと

ぼくが初めてカラオケ大会に出たとき、審査員の先生が言われたコメントの中に「自分軸で考えなさい」という言葉がありました。この「自分軸」という言葉が、一見わかるようで、具体的にはどういう意味なのか、ぼくはよくわかりませんでした。

歌っているのは自分だし、どういう曲を歌うかを決めるのも自分だし、どういう風に歌った方がいいかなと考えるのも自分だし。全部自分で決めてるよなって思ってました。

カラオケ大会に出ている多くの方は、ボーカルのレッスンを先生に受けていて、先生の指導を受けて、選曲も決めていたりするそうですが、ぼくにはそういう先生はいませんので、カラオケ大会に参加したときに、審査員の先生から頂くコメントや寸評から、自分の歌についての評価を知ることになります。審査員の方もいろいろですから、同じ曲を歌っても、凄く褒めてくれる方もいれば、ボロカスなコメントで終わる方もいますので、全てを間に受けていると、訳がわからなくなります。そういうときに、改めてその時に自分が歌った内容はどうだったのかを振り返って、審査員以外の、同じ参加者の感想も聞いてみて、審査員のコメントを振り返っていますけど、自分としては、ここまではできていたという確認をすることが、「自分軸」を強化する上では大事なことだな、と思いました。

ぼくが考えている「自分軸」っていうのは、別に歌唱力とか音程とかリズムとか表現といった歌の技術のことを想定してはいません。ぼくがその曲を歌うイメージとして、「こういう風に歌ってみたい」と考えるバックボーンみたいなものだと思っています。

基礎になる部分として、歌詞を明瞭に歌うとか、音程やリズムを正しく歌うというのは必要だと思います。ここまでは「上手い歌」なんです。

問題はここから更に、歌う本人の個性をどうやって歌に入れていくのか、なんです。どうして自分はこの曲を「歌いたい」と思ったのか、この曲のどこに「魅力を感じた」のか、自分の気持ちを改めて投影してみて、歌にその気持ちを乗せていくことで、「自分ならではの歌」が生まれてくるような気がします。

一方で、最近参加したオンラインのカラオケ大会の中には、課題曲を限定したりとか、テーマを限定したりといった企画がありました。こういう場合は、自分の「歌いたい」からは出発できなくて、与えられた曲やテーマに対して、大抵は得意なものではないことが多くて、その苦手意識を練習を重ねていくことで克服していくプロセスを経ていくことになります。練習して1曲を仕上げるので、長期的には自分の歌のウイングが広がるので効果はあるとは思いますけど、「自分軸」ではない歌だったなあと思います。だから「自分の良さ」も出にくいのかなと思いました。

でも、ぼくの理想としては、いきなり「この曲を歌ってよ」と言われても、その曲の中に自分の世界を見出せて、自分の歌として歌えることなんです。何でも演じれる役者さんみたいな感じでしょうか。

それはぼくが他の歌い手の方に欲していることなのかもしれません。ぼくは聴く耳が少し変わっているのかもしれませんけど、原曲のアーティストの歌い方の一部を切り取って、雰囲気でうまく歌っている感じの歌って、褒めてる人がどんなに多くても、ぼくにはちっとも響かないんです。どこか歌の言葉の中にその人らしさが感じられると、いい歌を歌ってるなあって感じます。

ぼくがいま身を置いているこの世界も、歌が上手いだけでは存在感が打ち出せないというか、自分の特色を歌に表現していかなきゃと思います。数多いる歌うまさんたちの中で、自分に何らかの印象を持って貰えるような、声でも、歌っている曲でも、歌っている姿でも、こんな人いたなあって覚えてもらえるような存在感を持ちたいと思います。

バベル東京

1月はオンラインカラオケ動画の大会に4曲も参加して、ちょっと疲れましたので、2月に入ってからは歌を休んで、音楽を聴いています。

参加した大会の寸評が次々とぼくの所に届きましたが、音程とかリズムとか発声はいいんだけど、「無難に聴こえてしまう」というコメントを頂いたものがあって、結構グサッときました。要は、「熱量が感じられない」「響かない」「面白味がない」ということなわけで、詳しいコメントを書いてくださった2人の先生に質問してみたところ、寸評よりも詳しくヒントを教えてくださいました。1人の先生は、音符の長さと歌詞の言葉の多少という点に着目されまして、言葉が少なくて、楽譜では4分音符となっていても、ここを16分音符4拍で歌ってみることで音に揺らぎが生まれるといったお話でした。もう1人の先生は、表拍と裏拍という点に着目されて、ぼくは表拍だけなんですが、裏拍も他のフレーズで取り入れてみることでグルーヴ感が生まれるといったお話でした。

ぼくも、もっとワクワクするような歌を歌いたいと思うんです。自分が聴いていて面白さを感じる音楽って、歩きながら聴いていても、体のどこかでリズム取ったり、軽く口ずさんだりします。ぼくがそんな風に聴けている1曲の中に、シキドロップの「バベル東京」という曲があります。

シキドロップは2017年12月に結成された、ボーカルの宇野悠人さんとピアノの平牧仁さんによる2人組のユニットです。彼らのことはTwitterのフォロワーさんに教えてもらったのがきっかけでしたが、「ホタル花火」という曲を聴いた時に、言葉に新しさもあるし、メロディーにはどこか懐かしさを感じるし、それでちょっと毒づいたところもあるし、面白い作品を作っているという印象でした。ぼくはDAM★ともで「さくら紅葉」という曲が好きで、でもなかなか歌いこなせなくて、最近やっと上手くはまってきたかなあという感触が得られてきました。

その間に、DAM★ともでもシキドロップの他の曲も歌えるようになったのを知って、それらの曲を聴くようになりました。「バベル東京」という曲は、2021年2月17日にリリースされた彼らの3rdミニアルバム「イタンロマン」に収録された曲でした。小気味いいリズムとメロディーの展開のノリがいいなと感じられて、今まで聴いたことがあった彼らの曲の中ではポップスさを感じられました。この曲を自分が歌えたら、かっこいいだろうなと思いました。


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