DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

月光花

カラオケに行くとたまに、隣の部屋の人の歌声が何となく聞こえてくることがあります。その曲のアーティストになりきった感じの歌い方だったりすることもあって、大体B'zとかEXILEが多いですが、一時期はJanne Da Arcも多かったです。それで思い出したのがJanne Da Arcの「月光花」という曲です。

この作品は2004年10月から放送されたテレビアニメ「ブラック・ジャック」のオープニング曲として起用され、2005年1月19日に23枚目のシングルとして発売されました。オリコンでの順位もこれまでで最高の2位となり、また25週にわたってチャートにとどまったこともあり、オリコンの2005年度の年間22位となる大ヒットとなり、彼らの代表作の1つとなっています。

Janne Da Arcのシングルの大半はボーカルのyasuさんが作詞・作曲を手掛けています。ロックをベースにしていますけど、作品によってハード・ロックなものからポップ・ロックまで作っている感じがしました。ぼくも「月光花」でJanne Da Arcを初めて知ったくちだったんですが、彼らのパフォーマンスを見て意外に思ったのは、ヴィジュアル系ロックバンドを自称していながら、すでにメイクをしていなかったこと、そしてバンドの演奏が意外にかちっとしていたこと、またyasuさんのボーカルが歌謡曲の歌手のようにしっかりと歌っていたこと、だからJanne Da Arcという派手そうな名前とは違って、地味でクールなバンドだなというのがぼくの印象でした。

そして、「月光花」を聴いて、これは平成の歌謡曲だなと思いました。歌詞は「ブラック・ジャック」を念頭に書かれたんだと思いますが、別れた君を思う主人公の思いを、強い言葉は使わないけど、そのはかなさや悲しさがひしひしと伝わってきます。サウンドは、起承転結できれいにまとまっているので、歌う者としては歌いやすいメロディーになっています。

ただし、「月光花」の世界は、yasuさんの綺麗な声と歌唱力だからこそ、聴く人たちに伝わるのだろうと思います。日本のロックを「歌謡ロック」と揶揄する人たちもいますけど、逆にこれが日本の音楽の持ち味じゃないかなと思います。「月の光」や「花」っていうのは、それこそ万葉集の頃から平安の貴族たちが歌を詠んでいるテーマで、日本人にとっては切り離せないテーマです。そういうテーマを現代の音楽と融合することで、また新しい芸術が生まれていくものだと思います。

ぼくはJanne Da Arcの曲は、キーが高すぎてちょっと歌えません。隣の部屋で「ダイヤモンドヴァージン」を歌ってたジャンヌ君の声、かっこよかったです。


月光花 Janne Da Arc YouTube

カナリヤ

プロフェッショナル・キャリア・カウンセラーとして活躍されている坪田まり子さん。彼女は1979年から1985年頃まで「倉田まり子」の芸名で歌手として活躍されていました。倉田さんは17枚のシングルを発表されましたが、ぼくが印象に残っているのは、1982年3月に11枚目のシングルとして発売された「カナリヤ」という作品です。

作詞・作曲は松宮恭子さんで、高田みづえさんの「涙のジルバ」や河合奈保子さんの「愛をください」など、地味なんだけどよくまとまっている作品、大ヒットまではいかないんですがそこそこヒットする作品を提供されていた方です。編曲は高田弘さんで、歌謡曲やアニメを中心に多くのアーティストの編曲を提供された方で、ちあきなおみさんの「喝采」、西城秀樹さんの「恋する季節」、野口五郎さんの「グッド・ラック」、とんねるずの「雨の西麻布」、柏原芳恵さんの「あの場所から」など多数の作品を手掛けています。

「カナリヤ」は、作品としては歌詞も楽曲もしっかりとまとまっていて、動画を見た方がコメントされていましたが、高田みづえさんや柏原芳恵さんが歌いそうな作品です。倉田さんは持ち味の伸びやかな歌唱力で、きれいにこの作品を歌っていたと思います。残念ながら、ヒットはしませんでしたが、今聴いても、地味だけど心に残るいい作品だと思います。

皆さんもご存じのように彼女は、1985年にあった投資ジャーナル事件に巻き込まれたことを契機に、芸能人をやむなく引退されました。しかし、彼女は聡明な方だったようで、その後はLECの講師として活躍するようになり、独立して現在のプロフェッショナル・キャリア・カウンセラーとして、企業や学生への研修・講演などをされているようです。芸能人が引退して次の人生に進むときに、彼女の「魅せ方・話し方・伝え方」を伝授するという今の仕事は、芸能人としての経験を上手に活かせる職業に就かれたんだなと思いましたし、自らの人生を切り開かれたことに敬意を表したいと思います。

何でこんなことを書くかというと、成宮さん、山本裕典さん、小出さんと、芸能活動を停止してしまう役者が続いているからなんですが、彼らはこの先自分の人生を切り開けるのかなと思ったときに、倉田まり子さんの事を思い出した次第です。


倉田まり子 カナリヤ

DAM★ともでは月曜日から金曜日までの毎日、ユーザーさんが歌った非常に多くの曲が公開されています。録音:動画=13:2ぐらいかなと思います。その中から聴きたいと思った曲を聴いていますが、最近ぼくが聴くことが多かったのがスピッツの「楓」という作品です。

この作品はスピッツの19枚目のシングルとして、1998年7月7日に発売されました。作詞・作曲はボーカルの草野正宗さんがされています。スピッツの作品は好きですけど、ぼくがDAM★ともではあまり歌わないアーティストです。草野さんの高音についていけないというのもありますけど、草野さんの透明感があるけど、どこか乾いていて、少しせつない感じの歌声を聴いていた方が心地よいです。

ぼくのスピッツの音楽のイメージの1つは、ちょうど今の時期、初夏から夏場にかけて、キラキラ光る海の見える道路をドライブしているイメージがあります。「青い車」のイメージですけど、スピッツの描く夏は、サザンオールスターズやTUBEが描くギラギラ感とは違います。松任谷由実さんが自分の描く夏を「リゾート地の夏。決して日焼けはしない」というニュアンスで言われていましたが、ギラギラとリゾートの中間ぐらいがぼくのスピッツのイメージです。そして、もう1つのスピッツの音楽のイメージは、やさしくて、でも切なくて、そして寂しくなって、泣いてしまうというものです。スピッツの歌を聴いていて、聴いた後泣いてしまったというコメントをネットで見たりしますが、草野さんのボーカルが歌詞の主人公の世界を如実に表現されているからなんだろうと思います。歌い方はしつこくはなくて淡々と、でも声の奥に芯の強いところが感じられて、また透明感のある声にやさしさが感じられる、意外に色々な特徴が出ているんだなあと思います。

「楓」の歌詞も実に切ないです。歌詞の解釈は色々あるらしいんですが、付き合っていた女性との思い出、そして別れ、それぞれの道へ歩いていく2人、という感じです。「さよなら 君の声を 抱いて歩いていく ああ 僕のままで どこまで届くだろう」という一節は深く感じられます。色々な人と出会って、色々なことを話して、笑って、泣いて、そのときの言葉を今のぼくはどれだけ思い出せるのかなと思いました。なんか哲学的です。ところで、「楓」の歌詞には、「楓」という言葉が出てきません。「楓」の花言葉を調べてみたら、「大切な思い出」でした。

この作品はセールス的には最高10位と、他の作品に比べてあまり売れなかったんですが、「楓」をカバーするアーティストは非常に多くて、辛島美登里さん、松任谷由実さん、クリス・ハートさんもカバーされています。


スピッツ / 楓

どんな僕でも

テレビを見ていると風景の映像に合わせて、いろいろなアーティストの音楽をBGMに乗せたりするのが深夜とか、あるいは番組と番組の間に放送したりするんですが、結構ここで音楽を聴くのが好きで、知らなかったアーティストさんを知るきっかけにもなっています。今回紹介する、MOLE HiLL(モールヒル)というバンドの作品も、J:COMチャンネルを見ていて、東京の上空からの風景が流れる中で、何曲か流れているのを聴きながら、惹きつけられるものを感じました。

彼らのHPを見てみたら、2002年に結成された京都を本拠にしているバンドですが、活動は全国で行っているそうです。2016年7月20日に、1stフルアルバム「Time」を発売し、ぼくが聴いたのはこのアルバムに収録されている曲だったようです。このアルバムでは阿久津健太郎さんをサウンドプロデューサーに迎えたそうです。阿久津さんというと、妹さんとのデュオ「ZERO」で活躍し、1996年に「ゼロから歩き出そう」がヒットしたのを思い出します。

さて、MOLE HiLLの作品を聴いて思ったのは、ボーカルの新大作さんの歌声が聴いてるぼくの側にも届いてるなあと感じたことです。ぼくはカラオケは好きですけど、カラオケバトルみたいな番組は見たいとは思わないんです。アマチュアの人もプロの歌手も点数を競うゲームなんだと思いますが、そこで「自分は歌が上手いんだ」と思いながら自信たっぷりに歌っている人の歌、ぼくは全然そういう歌に惹かれないんです。音程も確かで綺麗な声で歌っていて、完璧なはずなのに、何かが足りないと感じてしまうんです。

だから、売れる歌手は必ずしも歌唱力があるとは限らないわけですが、その代わりに自分の歌の持ち味を表現しようとする力が優れているのかなと思います。

ぼくはMOLE HiLLの作品の中では「どんな僕でも」という作品が気に入ってます。早くDAM★ともで歌える日が来ればいいなあと思っています。


【LIVE】 MOLE HiLL / モールヒル 「どんな僕でも」@池袋サンシャインシティ噴水広場 [公式]


【全曲試聴】MOLE HiLL/モールヒル 「Time」ダイジェスト【2016/7/20発売】

黄金の月

ぼくがDAM★ともであまり歌わないアーティスト、平井堅さんに続く2人目はスガシカオさんです。スガさんの作品は歌詞も楽曲も好きなものが多いんですが、スガさんのファンクなリズムにはついていけても、高音にはぼくもついていけません。そんなぼくが何とか歌えたのが、1997年5月にスガさんの2枚目のシングルとして発売された「黄金の月」という曲です。

スガさんを初めてテレビで見たのが、当時NHKで放送していた「ポップジャム」という番組で、スガさんの4枚目のシングル「愛について」が「ポップジャム」のエンディングソングになっていました。ちょっとハスキーな声から歌われる、ちょっとチクッとくる言葉や、何となく暗めな曲なのになぜか前向きになっていくサウンド、当時は珍しかったカタカナのアーティスト名とか、ぼくの中では気になる存在になっていきました。初期のアルバム「Clover」や「FAMILY」を聴く中で「黄金の月」に出くわして、その後、DAM★ともでもスガさんの曲を公開しているユーザーさんの歌を聴いて、親しみを持つようになりました。

スガさんの書く歌詞は、詩的というよりは文学的な感じです。「黄金の月」の歌詞の主人公は、大人になって、自分を偽れる力を持ったけど、いざというときに大事な言葉を吐き出せなくて、情熱は今や闇を背負ってしまっている。ぼくが好きな歌詞の一節は次に続く「そのうすあかりの中で 手探りだけで なにもかも うまくやろうとしていた」「君の願いと僕の嘘を合わせて 6月の夜、永遠を誓うキスをしよう」というところです。彼女の願いに僕は向き合ってはいない。でも彼女をいつも頼りにしているのは僕の方で、「そして 夜空に 黄金の月を描こう」と自分が生きていくパワーを求めているんですね。自分にどこか正直になれない僕は、「嘘から出たまこと」によって、本当の愛に向き合えていけたのかもしれません。このあたりが前向きになっていく作品に感じられるのかもしれません。20代から30代にかけてのもどかしさやほろ苦さの表現は秀逸だなと思います。シングルのセールス的にはさほど売れなかった「黄金の月」ですが、多くの人に歌われて、今ではスガさんの代表的な作品の1つになっています。


黄金の月 - スガ シカオ(SUGA SHIKAO)

シルエット・ロマンス

前回、秋元順子さんの「愛のままで…」を紹介したときに、似ているとよく書かれるのが大橋純子さんの「シルエット・ロマンス」ですが、ぼくは似て非なるものだと思うと書きましたので、今回は「シルエット・ロマンス」を紹介します。

女性向けの恋愛小説が一定に人気があった当時、サンリオがアメリカのシルエット社と契約し、1981年9月に「シルエット・ロマンス」というレーベルを立ち上げることになり、そのイメージソングとして作られたのが「シルエット・ロマンス」でした。作詞は来生えつこさん、作曲は来生たかおさんというニューミュージックを代表する黄金コンビの姉弟です。この作品を歌うのが大橋純子さんということは決まっていたこともあり、来生たかおさんは大橋さんの歌唱力を見込んで、サビの部分を結構難しいメロディーラインにすることができたので、「これは売れる」と確信したそうです。一方、来生えつこさんは、自分の歌詞に過度な情感を込めてほしくなかったという思いがあったので、レコードの録音に使用したのは大橋さんがまだ歌い慣れ始めるあたりのテイクだったそうです。ただ、これはちょっと無理な注文だと思いますし、大橋さんが「シルエット・ロマンス」を歌いあげてしまうのは間違いなかったわけですから。また、大橋さん自身は当時歌手の休業を考えていたので、自分を忘れて欲しくないため、「絶対にヒットさせよう」と思ったそうです。本当に三者三様の思いがあったわけです。

1981年11月5日に大橋さんのシングルとして発売した直後は売れませんでしたが、1982年に入ってからチャートが上昇していき、5月にはベスト10入りしました。1982年のオリコン年間18位となり、同年の日本レコード大賞最優秀歌唱賞をニューミュージックの歌手として初めて受賞しました。大橋さんはこの当時は北島三郎さんの北島音楽事務所に所属していましたが、なぜかこの年の紅白歌合戦に選ばれなかったのかは今でも疑問です。

さて、来生姉弟の作風は、都会的であるけど派手さはなくて、どこか落ち着きのあるメロウな感じがします。来生えつこさんの書く歌詞は、情景が具体的に現われていて、きれいな言葉を使っています。「恋する女は 夢見たがりの いつもヒロイン つかの間の」とここは小説レーベルの宣伝に気を使いつつも、恋愛小説を読みたい女心を言い当てています。「鏡に向かって アイペンシルの 色を並べて 迷うだけ 窓辺の憂い顔は 装う女心 茜色のシルエット」は、男には永遠にわからない女性の微妙な揺れ動く心なんでしょうね。愛する男性と会う前の午後4時ぐらいの景色が「茜色のシルエット」なのかな。「ああ あなたに 恋心盗まれて もっとロマンス 私に仕掛けてきて ああ あなたに 恋模様染められて もっとロマンス ときめきを止めないで」でサビを締めくくると、歌詞としては完璧な仕上がりじゃないかと思います。

大橋さんは持ち前の歌唱力で、この作品を歌い上げますが、来生たかおさんは、いつもそうなんですが、淡々ともさっとした感じで歌いながらも、じわじわと情感が伝わってくる歌い方で、実に対照的なんですが、1つの作品には色々なアプローチがあることを教えてくれます。

この数年後、来生たかおさんはポール・モーリアのプロデュースでアルバムを制作します。ポール・モーリアはそれまで日本人からのプロデュースのオファーは断っていたそうですが、来生さんの作曲について「一見シンプルだが、人の耳を惹きつける、明快でロマンティックな音楽を創っている」と評し、「フランスにはなく、日本らしさを持っている」と、自分の編曲との波長が合うと感じられたそうです。今から思うと、来生さんの作品は、日本のポピュラーとしてスタンダード・ナンバーになっている作品が多いです。「シルエット・ロマンス」も今では多くのアーティストがカバーしています。


大橋純子 - シルエット・ロマンス


来生たかお - シルエット ロマンス


Paul Mauriat & Orchestra - Silhouette Romance w Takao Kisugi (Live, 1984)

愛のままで…

DAM★ともで色々なアーティストの色々な作品を歌えるのが楽しいように、歌の世界も色々なジャンルの方が登場した方が視聴者としては面白いです。今から9年前の2008年、大人の歌を歌える女性歌手としてテレビに登場するようになったのが秋元順子さんです。

秋元さんは若いころから音楽活動をされていたそうですが、ご結婚を機にご主人と共にお花屋さんを経営されていました。子育てが一段落してから再び音楽活動をするようになり、57才で「マディソン郡の恋」でインディーズデビューを果たし、58才でメジャーデビューを果たしました。そして秋元さんが3枚目のシングルとして2008年1月23日に発売した「愛のままで…」は徐々にチャートの順位を上げていき、12月には初めて10位以内にランキング、その年の紅白歌合戦に61才6か月で紅白歌合戦初出場を果たしました。「アラ還(暦)の星」と称された話題性もあり、2009年1月26日に発売52週目で1位を獲得する快挙となりました。

秋元さんを最初にテレビで見た時は、シャンソンかジャズの方かなと思ったんですが、若い頃はハワイアンをされていたそうです。歌がしっかりしているというか、中低音の声質を生かした、年齢の割には伸びのある歌唱力が持ち味だと思います。「愛のままで…」をはじめ、秋元さんの作品の作詞・作曲・編曲をされているのが花岡優平さんです。花岡さんは「音つばめ」というフォークグループを組んでいて、高田みづえさんが1982年にカバーした「愛の終りに」という作品を作詞・作曲したのが花岡さんです。高田さんの作品の印税が自分の稼ぎよりもあまりにも多かったと感じた花岡さんは以後、作曲家の道に進まれるよう決意をされたそうです。

「愛のままで…」についてはよく言われることですが、大橋純子さんの「シルエット・ロマンス」と似ているという話があります。ぼくも比べて聞いたときはそう思いましたけど、似て非なるところもあるかなと思います。オリジナルである花岡さんの「愛のままで…」はギターで弾き語りして歌っていて、一方「シルエット・ロマンス」の来生たかおさんはピアノで弾き語りして歌っているんですが、ギター曲とピアノ曲ってやっぱり作曲観が違うのかなと感じます。たぶんそれが、女性のボーカリストが歌うのでかちっと編曲していくに当たって、2つの作品が近接してしまったんじゃないかなと思っています。

60才近くで歌手デビューして、紅白歌合戦に出場できるのはミラクルなことで、歌手になりたい人たちにとって一筋の道を切り開いた秋元さんの功績は大きいと思います。


秋元順子 愛のままで…