ぼくがDAM★ともであまり歌わないアーティスト、平井堅さんに続く2人目はスガシカオさんです。スガさんの作品は歌詞も楽曲も好きなものが多いんですが、スガさんのファンクなリズムにはついていけても、高音にはぼくもついていけません。そんなぼくが何とか歌えたのが、1997年5月にスガさんの2枚目のシングルとして発売された「黄金の月」という曲です。
スガさんを初めてテレビで見たのが、当時NHKで放送していた「ポップジャム」という番組で、スガさんの4枚目のシングル「愛について」が「ポップジャム」のエンディングソングになっていました。ちょっとハスキーな声から歌われる、ちょっとチクッとくる言葉や、何となく暗めな曲なのになぜか前向きになっていくサウンド、当時は珍しかったカタカナのアーティスト名とか、ぼくの中では気になる存在になっていきました。初期のアルバム「Clover」や「FAMILY」を聴く中で「黄金の月」に出くわして、その後、DAM★ともでもスガさんの曲を公開しているユーザーさんの歌を聴いて、親しみを持つようになりました。
スガさんの書く歌詞は、詩的というよりは文学的な感じです。「黄金の月」の歌詞の主人公は、大人になって、自分を偽れる力を持ったけど、いざというときに大事な言葉を吐き出せなくて、情熱は今や闇を背負ってしまっている。ぼくが好きな歌詞の一節は次に続く「そのうすあかりの中で 手探りだけで なにもかも うまくやろうとしていた」「君の願いと僕の嘘を合わせて 6月の夜、永遠を誓うキスをしよう」というところです。彼女の願いに僕は向き合ってはいない。でも彼女をいつも頼りにしているのは僕の方で、「そして 夜空に 黄金の月を描こう」と自分が生きていくパワーを求めているんですね。自分にどこか正直になれない僕は、「嘘から出たまこと」によって、本当の愛に向き合えていけたのかもしれません。このあたりが前向きになっていく作品に感じられるのかもしれません。20代から30代にかけてのもどかしさやほろ苦さの表現は秀逸だなと思います。シングルのセールス的にはさほど売れなかった「黄金の月」ですが、多くの人に歌われて、今ではスガさんの代表的な作品の1つになっています。