DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

水の帰る場所

DAM★ともでジャニーズの曲を多く歌っていますが、新たな曲探しをしていると、所謂A面シングル曲ではありませんが、いい曲だなと思うものに出会い、自分でも歌ってみようと思うものがあります。中山優馬さんの「水の帰る場所」という曲もそんな1曲でした。

この作品を見たのはたぶん、NHKBSプレミアムの「少年倶楽部」だったと思います。イントロの歌詞が「色は是即ち、空(そら)となって消えゆく」と歌い始めたので、これはアイドルの歌ではないなと思いました。これは般若信経の有名な一節である「色即是空」(色これすなわち空なり)と「空色是即」(空すなわちこれ色なり)をモチーフにしていると思います。ここでいう「色」とは「形あるもの」という意味で、「空」とは「確固たる実態のないもの」という意味で、「そら」ではなく「くう」という感じです。世の中の物事は常に動いているので、その色に執着することなく、こだわりなく物事を見ていきなさい、という教えなのかなと受け止めています。

サビのところで「ねぇ、そのココロに溜まった黒い水を 今吐き出して痛みを土に還そう」という一節がありますが、この作品のオリジナルは酒井ミキオさんが2011年に発売したハンドメイドシングル「songbook vol.13」に収録された「黒い水」という作品です。オリジナルの編曲は上杉洋史さんがされていますが、バラードっぽい仕上がりになっていますが、「水の帰る場所」では酒井さん自身が編曲も行い、歌って踊れるようなアップテンポなアレンジに変えています。

中山さんは2012年にドラマ「Piece」の主演を務めることになり、併せてソロデビューもすることになり、2012年10月31日にデビューシングルとして、ドラマの主題歌であう「Missing Piece」を発売しました。「水の帰る場所」はドラマの挿入歌としてカップリング曲で収録されました。歌詞の内容も派手ではないので、アイドルとしてこの歌を歌うのは難しいと思いますが、中山さんは結構うまくこなしていると思いました。ジャニーズ事務所も彼のことを一時期ゴリ押ししていたように思いますが、そのゴリ押しが仇になったというか、彼本来の良さをプロモートできていたのかなという疑問が残ります。NYCの一員だったり、ソロだったりで、立ち位置が明確に示されなかったのが、結局今一つブレイクできていない一因ではないかと感じます。

男性アイドルも女性アイドルもグループでのメジャー化を急ぐあまり、ソロ・アーティストの育成を怠ってきたツケが今回ってきたように思います。


2014.01.15 中山優馬 「水の帰る場所」


酒井ミキオ 黒い水 awairo mix

Best Friend's Girl

EXILEの弟分として、いまやEXILEにひけをとらない人気を誇る三代目 J Soul Brothers。彼らのヒット曲は数多くありますが、ぼくが好きな曲は彼らのデビュー曲である「Best Friend's Girl」です。

HIROさんは「J Soul Brothers」という名前にはこだわりがあって、今ではLDHにおける「名跡」(めいせき)のようにも感じます。やはりそれは、HIROさんが結成したダンスチームに、ボビー・ブラウンから「Japanese Soul Brothers」と命名してもらったことを感謝しているからなんだろうと思います。初代「J Soul Brothers」はその後「EXILE」に改名し、二代目「J Soul Brothers」は「EXILE」に吸収されました。2010年に「三代目」の結成が発表され、ボーカル・オーディションで今市隆二さんと登坂直臣さんが選ばれ、パフォーマーEXILEからNAOTOさんと小林直己さん、劇団EXILE風組からELLYさんと山下健二郎さん、そして当時慶應義塾大学の学生だった岩田剛典さんが選ばれました。

「Best Friend's Girl」はこのボーカル・オーディションの3次審査課題曲でもありました。作詞は松尾潔さん、作曲は川口大輔さん、編曲は中野雄太さんというコンビでしたので、EXILEの初期サウンドへの回帰をこのグループでやるのかなと思いました。すごく切なくて、ボーカルが訴えかけるようなバラードなので、とても好きでした。DAM★ともでも数回公開したと思います。ぼくはこういう曲が好きなので、このままこういうサウンドの路線で行って欲しいなあと思っていましたが、徐々にavex的なサウンドの方向に変質してしまったようで、彼らの最近の新曲は正直関心が湧きません。結構歌うのが負担な楽曲が続いているので、ボーカルの2人の喉が大丈夫なのかなと心配してしまいます。


三代目 J Soul Brothers / Best Friend's Girl

地上の星

昨日、第68回NHK紅白歌合戦の出場歌手が発表されました。11月16日の発表は例年の11月下旬よりも早い印象です。また、午前中の発表は記憶になく、大抵は16時頃のような気がします。かつての紅白歌合戦は歌謡界の縮図を体現していましたので、色々なジャンルの「今年の代表」歌手が大晦日に一堂に集まるからこそ、緊張感も高まり、歌手も自分の限界まで歌を表現していたように思います。ぼくもかつてはかなりの紅白フリークだったんですが、この7~8年位、紅白の番組のあり方には視聴者として何となく不満があって、フルで見ていたのが一部の歌手だけを見るようになり、ここ数年は1分も見なくなりました。インパクトのある歌手がほとんどいなくて、超一流の歌手もいなくて、正直二線級の歌手の集まりのように見えてしまいます。また、紅白のような長時間の番組を引き締めるのは司会者の進行の手際の良さなんですが、グループで5年連続司会を任されても話術に成長が見られず、1人で司会をしたら放送事故レベルの下手さ加減みたいな様子を見せられては、番組を見る気もなくしてきます。それから演奏もNHKホールで演奏しなくなってから、音に迫力がないし、音が籠っている感じがしました。これでは歌手の歌も栄えません。

21世紀の紅白の中で最大のインパクトの1つは、中島みゆきさんが、関西電力黒部川第四発電所前から上部専用軌道で約100m進んだ場所で、「地上の星」を歌ったことだと思います。中継場所はいくつかの候補の中から、中島さんが選んだそうです。NHKから40人、ヤマハから60人、計100人の大部隊で臨み、関西電力も「本番を停電させないよう」最大限の努力をしたそうです。本番では歌詞を間違えて歌っちゃいましたが、リハーサルでは完璧だったそうです。あのとき、中島さんは深紅のドレスをまとって、歌い終えた後深く一礼をしたんですが、一連のパフォーマンスを見て思ったのは、それまで出場を断ってきた中島さんの方が、紅白歌合戦のありようを実は深く理解しているのかもしれないなということでした。緊張していたからこそ、視聴者にも記憶に長く残る、素晴らしいステージができたのだと思います。


中島みゆき ♪地上の星 2002 [厳冬の黒四地下トンネル]【HD】

化粧

今年のNHKのど自慢のグランドチャンピオン大会で、「化粧」という曲を歌った男性の方がいました。ぼくは最近のNHKのど自慢は見てませんが、思えば今年歌手デビューした中澤卓也さんも2014年のグランドチャンピオン大会に出場し、森山直太朗さんの「さくら」を歌唱しています。大昔ののど自慢はこういうジャンルの曲は選ばれにくい傾向がありましたので、選曲の幅も広がったように思います。

さて、割と歌の上手い男性が好んで歌う「化粧」。オリジナルは1978年に発売された中島みゆきさんのアルバム「愛していると云ってくれ」に収録されました。作詞・作曲は中島みゆきさん。編曲は吉野金次さんです。吉野さんはレコーディング・エンジニアの印象が強く、この業界でのスタートは浅川マキさんの「浅川マキの世界」であったように思います。「化粧」は、ぼくは桜田淳子さんの曲というイメージが強いです。桜田さんは1978年に発売したアルバム「20才になれば」、このアルバムでは全作品を中島さんが作詞・作曲の提供をしましたが、「化粧」も収録されて、カバーされました。アルバムバージョンの編曲は若草恵さんがされています。その後、1981年に桜田さんのシングルとしても発売されましたが、このシングルでは大村雅朗さんが編曲をされています。だからぼくの耳になじんでいるのは大村バージョンなんですね。そして2012年、清水翔太さんのカバーアルバム「MELODY」の中で、「化粧」をカバーされました。名曲ではあるけれど、大ヒットしたわけではないこの作品を、清水さんが歌うに至った経緯は興味深いところです。清水さんが歌っている動画が探せなくて、一部を試聴しただけですが、男性が歌う女心の歌を湿った感じにはせず、でも揺れ動く心はうまく現わしている感じです。語るように、ギリギリのところで音程を損なわないように歌うのはかなりの難度だと思います。なんか揺れる男心の歌にも聞こえてくるんですが。カラオケの男性たちが、そういう清水さんの歌い方をお手本にして歌っているのがよくわかります。


桜田淳子 化粧 その3


化粧/大場悠平 のど自慢グランドチャンピオンシップ2017より

 

恋人よ

年末が近づく頃になると、民放各局は「日本歌謡大賞」を始めとする数々の賞番組を放送していました。その頂点が「日本レコード大賞」であった当時は、「賞レース」をめぐって、レコード会社と芸能事務所が歌手の陣営を組んでしのぎをけずっていました。特に昭和55年は「五ハ戦争」と呼ばれる、五木ひろしさんと八代亜紀さんの賞レース争いが激化しました。他の歌手も「賞取り宣言」を行っていた中で、異彩を放ったのが、五輪真弓さんが「恋人よ」で「賞取り宣言」を行ったことでした。

五輪さんは日本のシンガー・ソング・ライターのパイオニア的存在の方で、1972年のデビュー・アルバム「五輪真弓/少女」では、彼女のデモ・テープを聴いたアメリカの女性シンガー・ソング・ライターのキャロル・キングが感銘し、レコーディングに参加したり、1976年にはフランスのCBSからアルバム制作の申し出があり、全編フランス語のアルバムを制作するなど、独創的な作品を提供し、海外で評価の高いニュー・ミュージックのアーティストでした。一方、テレビ番組への露出は少なかったので、コアなファンは多かったものの、お茶の間という一般大衆への知名度はまだ浸透していませんでした。

「恋人よ」は1980年8月21日に発売されるとじわじわとチャートの順位を伸ばし、12月にはチャート1位を獲得、結果的にはミリオンセラーを超える大ヒットとなりました。日本レコード大賞は受賞とはなりませんでしたが、金賞には選ばれました。またNHK紅白歌合戦にも初出場を果たしました。五輪さん的には「さよならだけは言わないで」あたりから、歌謡曲的なサウンドを織り交ぜれば、レコードセールスがヒットする確信を掴んだのだと思います。「恋人よ」を発売すれば、五輪さん自身が一般大衆に浸透する歌手になれるという自信があってのチャレンジであり、結果は大成功だったと思います。

その後、五輪さんはインドネシアで「心の友」が国民的な愛唱歌になったのを始め、アジア諸国での評価が高いアーティストとなっています。一番浸透していないのは日本かもしれません。


恋人よ 五輪真弓

Windy

今年の2月28日、約5年ぶりに活動を再開したCHEMISTRY。11月15日には前作「eternal smile」以来約6年ぶりのシングルが発売されます。その1曲「Windy」をYoutubeで聴きましたが、1コーラスを聴いたとたんに、彼らがデビューした頃の、R&BなサウンドをJ-POPで作っていたあの頃の音楽シーンが蘇ってきました。コメントを読んでいたら、「松尾Pも戻ってきたし…」の一言を発見。「CHEMISTRY」の名付け親でもあり、デビュー前から2003年6月まで彼らのプロデュースをしていた松尾潔さんが久しぶりに一緒に音楽を作ることになったんです。松尾さんの音楽業界へのきっかけは、大学時代から始めた音楽雑誌への執筆活動なんですね。松尾さんは黒人音楽を扱う雑誌「ブラック・ミュージック・リヴュー」でR&BやSOULを対象として記事を執筆するようになり、アメリカやイギリスでの現地取材をベースにした評論活動で注目を集めるようになったそうです。その頃、久保田利伸さんと交流したことがきっかけで、音楽制作にも携わるようになったそうです。こうやって色々な知識や素養を身につけてきた方が作る音楽だから、聴く側としてはやけに説得力があるなあと感じるのかもしれません。

「Windy」を聴いて、これは初期の頃の作品…何となく思い出したのが「It Takes Two」でした。バラードではなくて、こういうアップテンポでメロウなサウンドって、好きなんですよね。それでやっぱり、「Windy」の作曲は「It Takes Two」と同じ和田昌哉さんでした。そして作詞はMAESTRO-Tこと豊島吉宏さんでした。豊島さんというと「ASAYAN超男子。」オーディションの時の課題曲であった「最後の夜」を編曲した方というイメージがあります。

そして、嬉しいことに松尾さんが今回の新曲「Windy/ユメノツヅキ」について、CHEMISTRYのファンからの「もっと知りたい」という要望に応えていただき、松尾さんがメディア向けに発表したコメントを、ご自身のTwitterで公開していただけました。
そのコメントを読み、ぼくも松尾さんと同じ思いで、CHEMISTRYを待っていたんだなあということを感じました。半分活動再開は諦めていました。堂珍さんや川畑さんがソロ活動で話すコメントを聞いて、「もうCHEMISTRYには縛られたくないのだろうか」と感じたこともありました。でも、5年で戻ってきてくれたのだから、OKです。

もう1曲の「ユメノツヅキ」は、歌詞に過去の曲名がいくつも出てきます。歌詞に「二度目の出会いは偶然じゃない」ってあるのが、そうだよなって思いました。


CHEMISTRY、5年ぶりの再結成に違和感なし 名曲「My Gift to You」ら3曲熱唱 横浜ランドマークプラザクリスマスツリー点灯式

 

72

11月2日の21時から11月5日の21時までの72時間、元SMAP稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんの3人が、AbemaTVというインターネット放送局で、72時間の生放送番組に挑戦しました。ぼくは5日の夕方の「72曲メドレー」の所だけ見ましたが、3日間の累計視聴者が7,400万人という驚愕の数字、非常に多くの視聴者の皆さんが初めてインターネット放送局を見に行ったと思います。これからの日本人の生活の中で、インターネット放送局が認知されたことに地上波の業界人は衝撃を受けたと思います。そして、稲垣くん、草彅くん、香取くんの3人でこの実績を作ったことに、ジャニーズ事務所は勿論、芸能界でも衝撃が走っていると思います。

「72曲メドレー」の曲目の中にSMAPの曲は勿論入っていなかったし、ジャニーズのタレントの曲も入っていませんでした。どうやら、ジャニーズ事務所を辞めるときに、「SMAPの歌は歌わない」約束をさせられたようで、「SMAP、木村、中居」などのNGワードもあるようでした。それで彼らが困ると思うのは、もう発想が古すぎると思います。「72曲」は他のアーティストの作品から選ばれました。ずっと歌い続けているだけでもさすがSMAPだと思いますし、他のアーティストを歌っている3人の姿が何だか新鮮に見えました。この72曲の最後に歌われたのが、「72時間ホンネテレビ」のテーマ曲として作られた「72」という曲でした。ピチカート・ファイヴ小西康陽さんが作詞・作曲した作品ですが、肩肘張らない感じの自然体なサウンドに、今の3人の気持ちを素直に乗せたような歌詞が、歌っている彼らが取り戻した生き生きした表情を体現しているみたいで、1回聴いただけで歌ってみたくなりました。いい歌だと思いました。CDとして発売されるといいなと思います。それにしても「新しい地図」の意味、深いんだなあと思います。みんなに歌われるような作品をどんどん増やしていけばいいと思います。


72 時間 ホンネ テレビオープニング曲「72」