DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

佐原の町並み

2020年も残り4か月となりました。昭和初期に日本の歌謡曲が生まれてから、今年ほど音楽活動が制約を受けた1年は、第二次世界大戦時を除いてはなかったのではないかと思います。プロの歌手の方も本来の活動がいまだにできない状況が続いています。そういうなかで、2020年に名前を上げた歌手の1人が、今年デビュー2年目の新浜レオンさんであったと思います。

ぼくは、昭和の歌謡曲やポップスの系譜を受け継いでいるのは、いまの若手・中堅のポップス寄りの演歌歌手の皆さんだと思っています。山内惠介さん、松原健之さん、竹島宏さん、川上大輔さん、松阪ゆうきさん、中澤卓也さんなどの皆さんです。彼らに作品を提供している作家の人たちが、松井五郎さんをはじめとして、かつてのニューミュージックやロック、歌謡曲との関わりを持つ方が多いのも特徴です。

新浜レオンさんも「演歌歌手」という括りではあるものの、標榜しているのは1970年代の男性歌手なんだろうなと思います。にしきのあきらさんは浜口庫之助さんというウィングの広い作詞家兼作曲家の元で青春歌謡をテーマにした曲で人気を博しましたし、その後に野口五郎さん、西城秀樹さん、郷ひろみさんの「新御三家」男性アイドルのブームが起きるわけですが、新浜さんは、にしきのさんと五郎さんと秀樹さんのイメージを混ぜたような雰囲気を持っています。

お父さんが高城靖雄さんという演歌歌手であることもあり、新浜さんが演歌や歌謡曲に馴染んで過ごしてきたのだと思いますが、あえて「演歌や歌謡曲を歌う」と差別化した戦略が、本人のビジュアル面と奏功して、有名になっていったのかなと思います。実はそのビジュアル面ももともとの体型から10kg近くダイエットして、「新浜レオン」という歌手像を作る努力をした点は見逃せないところです。デビュー前の新浜さんは今とはイメージの違う、ちょっとごつい雰囲気のスポーツマンという感じでした。

新浜さんの曲のプロデュースをしているのが馬飼野康二さんです。昭和の歌謡曲から多くのヒット曲を作って来られた方ですが、新浜さんへの歌のアドバイスの中で見えてくるものは、声を無理に出させないということなのかなと思いました。これって、今どき流行りのどこまでも高い声を出させて売っていくやり方とは対照的なんですけど、無理ない声で歌うことはその人らしさも歌に現れてくるから、歌うことで親近感を生みやすいのかもしれないなと思いました。

そして、新浜さんが所属している事務所はビーイングで、文字どおり1990年代にビーイングブームで多くのロック・アーティストを輩出した事務所ですが、そのビーイングが海峡レコードというレーベルを設立して、事務所初の演歌歌手である新浜さんをプロモートしています。新浜さんの2枚目のシングル「君を求めて」のカップリング曲が「佐原の町並み」という曲ですが、作詞と作曲をされたのがビーイングの創業者でもある長戸大幸さんです。佐原(さわら)というのは千葉県香取市にある町(昔は佐原市)ですが、水郷や商家の町並みが国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている場所で、歌詞にもそういう風景が出てきて、こういうご当地ソングも新しいのかなと、ぼくは好印象を持っている歌なので、DAM★ともでも結構歌っています。「君を求めて」が王道アイドル路線とすれば、「佐原の町並み」は等身大の男性路線なのかなと思います。

無理なく自分らしさを主張していく新浜さんがどういう歌手に変貌していくのか、ぼくも楽しみです。


新浜レオン「佐原の町並み」ミュージックビデオ(フル Ver.)【公式】