DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

どこもかしこも駐車場

ぼくがDAM★ともでお気に入りにしているアーティストの森山直太朗さん。直太朗さんの作品って、歌のテーマに制約を設けていないのかなと思うぐらい自由な感じがしていて、曲のタイトルも面白いものがあったりします。ぼくが最近よく聴いている曲の1つが「どこもかしこも駐車場」という曲です。

この作品は2013年12月11日に発売されたフルアルバム「自由の限界」に収録されました。アルバムのレビューは評価が高かったんですが、セールス的にはオリコン最高25位ということで、あまり売れなかったんです。でもこの作品はYouTubeに動画をアップしたことや、歌詞の中でタイトルにもなっている「どこもかしこも駐車場」が何度も繰り返されて歌われることが印象深いことから、じわじわと浸透していきました。

そしてこの作品は2016年9月21日に発売されたベストアルバム「大傑作撰」の「花盤」に収録されました。当時、伊集院光さんがご自身のラジオ番組で「今俺の中で流行っている曲」としてオンエアし、この作品の魅力について熱弁を奮った話もあり、このベストアルバムはオリコン最高4位となり、この作品ももっと多くの方に浸透していったと思います。

ぼくはそういう動きは全く知らず、9月15日にNHKで放送された「SONGS」で初めてこの作品を知りました。直太朗さんが肩の力を抜いた感じで「どこもかしこも駐車場」と何回も歌って、最後は「火星に帰りたい」で終わるのを聴いて、最初は「何この変な歌詞…」と思いながらも、「SONGS」が終わった後に一番印象に残ったのがこの作品でした。

形式的な話からいうと、歌詞の基本形が七五調で、演歌以外では珍しいなと思いました。また、同じ歌詞を繰り返すというのは、特に昭和のフォークソングでは典型的で、コンサートで合唱するというのを念頭に置くと、歌詞のサビの部分に繰り返す歌詞を挿入するというのが多いんですが、この作品はそこをちょっと捻ってます。

どこもかしこも駐車場「だね」 どこもかしこも駐車場「だよ」
どこもかしこも駐車場「だわ」 どこもかしこも駐車場「だぜ」
どこもかしこも駐車場

ここを聴いて、文法の動詞の五段活用的な感じを思い出してしまったんですね。「歌わない、歌います、歌う、歌うとき、歌えば、歌え、歌おう」みたいな。でも「駐車場」は名詞なので五段活用はないんですけど、御徒町凧さん、学生の頃をちょっと思い出したんでしょうか。

ところで、歌っている直太朗さんはこの作品をどういう風に感じているのか、インタビュー記事を抜粋しました。

──すごいですよね、『どこもかしこも駐車場』(アルバム収録曲)。

「かなりカラッポにしないとできないというか、タフな作業ですよね。ライブで歌っていても思いますからね、“何でこんなに何度も連呼してるんだろう”って(笑)。でも、ヘンな感覚に陥ることもあって」

──それは聴いているほうも同じだと思います。理由の分からない感動が少しずつ生まれてくるというか…。

「基本的には淡々と歌っているだけなんですけど、たまに泣けてくるような感じもあって。それが何なのかは僕にも分からないんですけど。ただの景色を歌っているだけなのに、何ともいえないもの悲しさがあるというか。たぶんそういうものが御徒町がモノを作る時の原動力になっているのかもしれないですね。淡々とした中に漂っていることが御徒町の詩情、ポエジーの根底にあるんじゃないかな。…あんまりそういうことをしゃべったことがないから、分からないんだけど」

──でも、聴けば聴くほど色んなことが思い巡る歌ですよね。駐車場もたくさんあるし、コンビニや牛丼屋もたくさんあるなって。

「そうなんですよね。何でもいいわけではないんだけど、(駐車場を)何かに置き換えるパターンもあるっていう。まぁ、象徴的なんでしょうね。効率を最優先するとか、そういう思考回路を象徴する造形物なのかな、と」

──経済、効率が優先された結果、大事なものが失われているというのは色んな場面で見聞きする話ですが、直太朗さんもそういうことを感じることはありますか?

「感じるというより、当たり前すぎてマヒしているかもしれないですね、ややもすると。いちいち立ち止まって考えているとキリがないし、“それはそれ”っていう。少なからず、その恩恵にあずかる場面もあるわけだし。そこは住み分けするというか、“どんなふうに自分がそれをちゃんと茶化せるか?”じゃないけど、そういう印象もある曲かもしれないですね」

「駐車場」っていうのは、日本だからこそ生まれた題材だと思います。例えばイタリアは日本みたいな駐車場が基本的になくて、住民は路上に駐車してますし。

YouTubeの動画を見ると、どこもかしこも「歩きスマホ」のような光景です。自分のことだけで余裕がない人が多いのかもですね。ふっと目を他にやってみれば、新しい何かを発見したり、新しい自分を発見できるかもしれませんね。


森山直太朗 - どこもかしこも駐車場