往年の紅白歌合戦の映像をyoutubeで結構見てますが、昭和の紅白の一場面としていいなあと思ったのが、藤圭子さんが昭和50年(1975年)の紅白歌合戦で「さすらい」という曲を歌っているものでした。
宇多田ヒカルさんの母親である藤圭子さんは、昭和45年に「圭子の夢は夜ひらく」で一躍スターになります。演歌の中でも「怨歌」とか「炎歌」と評されるほど、まるで泥水飲んで生きてきたような人生の歌を、ハスキーで遠くまで通る声で歌う個性的な歌手でした。その後、一時のブームは去ってしまい、喉の手術もした後、昭和50年の紅白で藤圭子さんは再び第一線にカムバックすることができました。
そんな気持ちもあったんだと思いますが、純白のロングドレスに身を包む姿は、よく見る藤圭子さんとは違いました。そして、この「さすらい」という曲も、藤圭子さんの作品の中では異質な作品です。作詞はよしかわかおりさんという方で一般公募だったようです。作曲は遠藤実さんです。藤圭子さんがこの曲を「御詠歌みたいね」と言ったように、歌詞は七・五調で、曲は起承転結でまとめられた作品です。ここにはいつもの怨み節は全くなくて、藤さんがどこかの遠い土地で、朗々と歌い、明日を見て生きていくようであり、凛とした清々しささえ感じられるようでした。紅白では1番、4番、5番を歌いました。時間にしてわずか2分5秒。実力ある歌手はその一瞬だけでも歌の世界を見事に十分に観客に伝えていました。
1 言葉忘れた 唇は
草笛ひとつ 吹けるだけ
たんぽぽ折って 髪に挿し
今日さすらいの 風の中
4 二十歳の春は いつの頃
人を信じた そんな頃
真心ひとつ 何処にある
鉄道線路の その向こう
5 川を流れる 木の葉さえ
きらめく海を 見るという
明日という字を 空に描き
今日さすらいの 風の中
DAM★ともにあったので歌ってみましたが、難しかったです。