DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

東京五輪音頭/あはがり

2020年の東京五輪パラリンピックに向けて、1964年の東京オリンピック開催時に三波春夫さんが歌って大ヒットした「東京五輪音頭」を現代風にアレンジした「東京五輪音頭-2020-」のお披露目が昨日ありました。お披露目の様子の動画を拝見しましたが、原曲の良さが全く継承されておらず、とても良い作品とは思えませんでした。

東京五輪音頭」は1963年6月23日に東京オリンピックのテーマソングとして発売されました。レコード会社8社による、多くの歌手による競作となりましたが、三波春夫さんの作品がミリオンセラーの大ヒットとなりました。紅白歌合戦では番組の最後に全員で「蛍の光」を合唱するのが恒例ですが、1963年の紅白歌合戦だけは最後に「東京五輪音頭」が合唱されました。そして翌年1964年の紅白歌合戦では、三波さんは「元禄名槍譜 俵星玄蕃」を歌唱し大トリを務めたため、「東京五輪音頭」は歌われませんでした。その後1989年(平成元年)の紅白歌合戦で、三波さんは「東京五輪音頭」を歌いました。


「東京五輪音頭&東京五輪おどり」 三波春夫

この作品を朗々と披露できるのは「歌謡浪曲」という一子相伝のジャンルを作り上げた三波先生の歌唱力があってこそのものであり、他の歌手がこの作品に挑んでも、その歌手の粗が見えてしまうだけではないかと思います。競作の中で三波さんは「東京五輪音頭」を歌って廻ったそうですが、ご自身の回顧として「戦後の日本がここまで来れた喜びを日本中に歌いたかった」と強い思いがあったことを振り返っておられます。その意味で1964年の東京オリンピックと「東京五輪音頭」は戦後の復興と高度経済成長の象徴であると思います。

翻って、2020年の東京五輪は、戦後復興でも高度経済成長でもありません。日本は成熟国家に入っており、少子高齢化をはじめ、様々な社会問題が出ている現状です。加えて2011年の東日本大震災福島原発事故により、日本国土が大きく毀損してしまい、その復興に向けた努力が今なお続いています。東京五輪でのエンターテイメントは様々なジャンルのステージが披露されると思いますが、賑やかしく派手なステージが披露されるように、静かに平和を祈るステージが披露されてもいいのではないかと思います。

そこで思い起こしたのが、朝崎郁恵さんの「あはがり」という作品です。NHKBSプレミアムで放送中の「新日本風土記」のテーマ曲になった作品です。朝崎さんは奄美シマ唄の第一人者と言われる歌手で、「あはがり」の歌詞もシマの言葉で歌われるので、意味はわかりません。でも歌の旋律を聴いていると、そもそも人間の歌の原点は、自然や生命への祈りであったんだなあということが感じられました。そして、日本語がわからない世界の国々の方も、朝崎さんの歌を聴いて、心を揺り動かされるのではないかと思いました。


朝崎郁恵  あはがり 2011