DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

おふくろさん

日本の歌謡史の中で、歌唱力も高く、表現力・技巧力も優れている男性歌手の代表である森進一さん。70歳である現在も歌唱力が維持されていて、自身のヒット曲も原曲キーで歌っているのは立派なことだと思います。

森進一さんというと「演歌歌手」と思われる方が多いですが、森さん自身も「僕は演歌歌手ではなく、流行歌手である」と述べられています。森さんのレコード大賞受賞曲でもある「襟裳岬」は作詞が岡本おさみさん、作曲が吉田拓郎さんというフォーク色を織り交ぜた作品ですし、大ヒット曲である「冬のリヴィエラ」は作詞が松本隆さん、作曲が大瀧詠一さんというポップスの作品です。その他にも、ポップス・ロックの多彩なアーティストから提供されてきた作品を数多く歌っているのは、極めて希有なことであり、現役歌手の中でも、レパートリーのウィングが極めて広い「流行歌手」であろうと思います。

「流行歌手」を志向した原点は、昭和の大作曲家・古賀政男の薫陶を受けた影響もあろうかと思います。古賀さんの作品はその作風も幅広く、当時の主な流行歌手にヒット曲を提供しており、いわゆる「古賀メロディー」は「流行歌」の発信基地でありました。その古賀さんの作品を、デビュー3年目当時の森さんがカバーアルバムとして発売したのは、「流行歌手」の土台となったのではないかと思います。

いわゆる「演歌」と呼ばれる大ヒット曲も多数ありますが、森さんのハスキーな歌声を聴いていると、それは演歌というよりもブルースであり、時にソウルであると感じるものであり、北島三郎さんや五木ひろしさんが「演歌歌手」であることとは趣が異なるように思います。

1971年に発売された「おふくろさん」は、森さんの代表曲の1つであり、この年の日本レコード大賞の最優秀歌唱賞を受賞します。その時の映像を見ましたが、シャウトしながら憑依して歌うさまは、もはやロックではないかと感じます。小柄な森さんの歌の凄まじい迫力に、花束を渡そうとしている当時の横綱・輪島関も躊躇しているように見えます。


1971 おふくろさん

ぼくが今から47年前の歌に感動してしまうのは、歌に魂を感じるからなのかもしれません。今の歌は綺麗に、おしゃれになりましたけど、何かさらっとしすぎているように思うことがあります。それは一見激しくシャウトしているロックでさえも、やはり綺麗さが出すぎているように見えてしまいます。

ぼく自身も泥くさくて、魂込めた歌は歌えないので、そういう歌を歌っていた往年の歌手には尊敬の念を抱きます。