DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

スカイランタンの唄

ぼくは6月5日に高松国分寺ホールでのカラオケ大会に参加しました。この大会で特別審査員を務められたのが、歌手の中村つよしさんでした。カラオケ大会が午後5時頃に終了して、午後7時から1時間余り、中村つよしさんのコンサートが同じホールで行われました。

中村つよしさんのヒット曲である「愛のカタチ」や「カセキ」は、カラオケ大会でも男性女性問わず歌われることが多いです。大会で競うせいもあるのかもしれませんけど、これらの曲を歌う方の歌を聴いていると、技術的に上手く歌えていることをアピールしているようにしか聴こえないことが多くて、作者の思いは違うのではないかなと思うことがありました。なので、作者ご本人の中村さんの歌は実は聴いたことがなかったので、すごく期待をしていました。

ぼくも事前に中村さんの作品を聴いておこうと、YouTubeで中村さんがアップしている動画を12曲ほど聴きました。伴奏はピアノだけの弾き語りとシンプルなのに、1つ1つの作品に歌詞の情景が投影されているかのような印象を受けました。その中でぼくがすっと心の中に入っていった曲が、「スカイランタンの唄」という曲でした。

「スカイランタン(sky lantern)」とは、「天灯」とも呼ばれ、主に中国やタイなどのアジア諸国で使われましたが、ヨーロッパでもイギリスやポーランドでもスカイランタンの文化があります。古代においては通信手段として使われていましたが、現代では祝賀行事や、祈祷における儀式の中で使われています。

ぼくは「スカイランタン」と聞いて、灯籠流しの空版みたいなイメージを持っていました。中村さんはコンサートでお話してくださったのは、東北の東日本大震災の復興支援に協力してほしいという呼びかけで、現地を訪ねた時にスカイランタンの光景をご覧になったそうです。

「私が愛した あの人 私を愛した あの人 今も愛している あの人 今も愛してくれる あの人 見上げれば空 その果ては未だ誰も知らず 見上げれば空 あの人の星が輝いてる あの人の光で満たされてる」という歌詞の一節のように、今は会えない愛する人に向けての願いが深く込められていて、中村さんの生の歌声を聴きながら、ホールの天井を見ると、そこにスカイランタンが夜空を飛んでいる光景が浮かぶような気がしました。

この曲に限らず、中村さんの歌声には無理がなくて、自然に発する言葉とメロディーが相まって、自然の営みの中で生きる人間の姿を、淡々としているようで深く掘り下げて歌われているように感じましたし、コンサートを聴いている客席の向けての皆さんも、中村さんの歌と演奏に聴き入っているような気がしました。

「愛のカタチ」はご自身の祖父と祖母の生き方を歌われたとのことで、孫から見た姿としての歌には、説得力がありました。認知症になっても、愛する夫である祖父の名前だけは忘れなかった、妻である祖母の愛情を、生き様として歌われているように感じました。

こういう作品は流行を追うものではないのかもしれませんが、歌は生活の日常から生まれるものであって、そういう人生の営みを見つめた作品を音楽として届けていくことも、音楽家の1つのカタチなんだなと納得した夜でした。


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