DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

永遠鉄道

年末の歌番組で渥美二郎さんの「夢追い酒」を聴いてから、渥美さんの歌唱動画を見ていたら、「永遠鉄道」という1曲に出会いました。

この作品は2019年6月19日に発売されたアルバム「新・演歌師~歌とギターとパーカッション」の1曲として収録されるとともに、2019年10月23日にシングルとしても発売されました。原曲は、作詞・作曲をした岩渕まことさんが1998年に発売したアルバム「永遠鉄道」のタイトル曲です。渥美さんが「永遠鉄道」を「ジャズテイスト演歌」と題したように、この作品は渥美さんの従来の作品とは違う装いをしていました。渥美さんは「千寿二郎」として作詞・作曲も手掛ける方なので、なぜ今回「永遠鉄道」を新曲として、岩渕さんの曲をカバーしようと思ったのかに興味が湧きました。

岩渕さんのブログを拝読しますと、映像製作会社の方が同行取材するなかで、「渥美さんとの対談をしてみないか」との話があったそうです。どうやら映像製作会社の方は、渥美さんと岩渕さんに共通する何かを感じたからなんだそうです。渥美さんは30年前にがんの闘病経験があり、岩渕さんもご家族の闘病経験があること、渥美さんは阪神・淡路大震災で学校へ行くこともならなくなった子供たちのために、「人仁の会」という支援コンサートを開催し長年続けていること、岩渕さんは東北応援団 LOVE EAST を通して支援活動をしていることなど、共通することが実際多かったようです。

その番組を拝見しましたが、渥美さんは同じ音楽をやっている人たちはジャンルが違っても同じだという強い考え方を持っているように思いました。この対談が縁で岩渕さんに渡されて「永遠鉄道」を聴いた渥美さんは大きなインスピレーションを受けて、この曲を「令和を代表する、世代を超えた名曲にしたい。ぼくがこの曲を広めていきたい」と一念発起して、カバーが実現したのだそうです。人とのつながりや出会いが、また新たな歌を生み出すのは、こういうのが創造っていうのかなと思います。

先に書きましたが、渥美さんは阪神・淡路大震災から24年にわたって、チャリティーコンサートの収益金で遺児らの支援を続けてこられました。当初は「この子たちが高校を卒業するまで」ということで2013年までの予定でしたが、2011年に東日本大震災、2016年に熊本地震は発生し、現在も活動を続けていらっしゃいます。

宝塚歌劇団OGの方も、渥美さんが長年被災地の支援を続けていることに感銘し、OGたちによるコンサートでは「永遠鉄道」を歌って広め、渥美さんへの感謝の気持ちを込めているそうです。YouTubeにも動画がありました。


渥美二郎/永遠鉄道(タカラジェンヌOG)

岩渕さんが渥美さんの歌から感じたのは「おいしいご馳走を味わうように歌を歌われる方だ」ということだったそうです。「まるで歌が最高のご馳走だ、というように歌を味わいながらうたわれる姿に、これまでは出会ったことのない歌うたいの深みを感じました。私は普段から自分の歌を「僕の歌はことばに音程をつけているだけだから」とやや自虐的に言うことがありますが、渥美さんがことばとメロディーを味わいながら歌う姿に接して、歌うとはどういうことなのかを問いただされたような思いがしました。」とその思いをブログで語られていましたが、ぼくは岩渕さんのこの表現もまた秀逸であると思いました。おいしく歌ってみせる。今まで聞いたことがない歌の表現でしたが、すごく腹落ちする言葉でもありました。おいしそうに料理を食べている人を見たら、ぼくもあの料理食べてみたいっていう気持ち、それを歌でやっているということなんですね。
「永遠鉄道」をぼくもDAM★ともで歌ってみました。実は岩渕さんはこの曲をモンゴルを旅されたときに着想して作られたそうです。これって人生を鉄道に見立てて歌った歌なんですけど、歌う方の人生経験によっても歌い方が変わってくるような気がしました。渥美さんの歌には演歌師を始めてから50年の歌の心が宿っているし、音を楽しむというか、音と戯れている印象を受けました。ぼくもレパートリーに入れたい1曲です。


渥美二郎 / 永遠鉄道(生演奏バージョン)