ぼくは音楽や歌は好きですけど、キー局の音楽番組は最近はほとんど見ていなくて、逆に地方局の音楽番組を見ることが多いです。テレビ神奈川(tvk)で毎週火・水・木の深夜に放送している「青春音楽バラエティ「𠮷井さん~オヤジの音楽狩り~」もよく見ている番組の1つです。メジャーなアーティストだけではなく、様々なジャンルや世代のアーティストを紹介しているのがいいと思っています。先週の放送を見ていた中で、誕生日が近い2人のアーティストが一緒にコンサートを開催するお知らせがあり、アーティストの歌を紹介したときに、ふと目に止まったのが、畠山美由紀さんの「わが美しき故郷よ」という曲でした。
畠山さんは宮城県気仙沼市出身のシンガー・ソング・ライターで、2001年に歌手としてソロ・デビュー後、音楽活動をされていらっしゃいます。2011年3月11日の東日本大震災で、気仙沼は大きな津波の被害を受けました。畠山さんは自身の故郷である気仙沼を想った詩「わが美しき故郷よ」を雑誌やブログに発表すると、被災した方たちだけでなく全国の各地で反響を呼ぶこととなり、2011年12月には、デビュー10周年を記念した5枚目のアルバム「わが美しき故郷よ」を発売し、この曲は詩の朗読とともに、歌としても収録されました。
ぼくは初めて畠山美由紀さんというアーティストを知り、「𠮷井さん」では聞き逃した箇所も含めて、改めて「わが美しき故郷よ」を聴きました。その歌詞は、故郷で生まれ育った日々を、四季の移ろいを、素直に言葉にしていった感じのものでした。「潮風に抱かれて 暮らしてきたの ささやかな毎日を 暮らしてきた」という一節に、ぼくは故郷を愛する思いがずっしりと伝わってきました。そのささやかな毎日を、生きてきた街を、地震や津波によって一瞬にして失われてしまったことの悲しみの深さが感じられてなりませんでした。畠山さんの歌は、そういう歌詞にメロディーを乗せて、一節一節に静かな想いをこめて歌われているように感じました。決して、歌の歌唱力や技術力を前面に出すのではなく、想いのある言葉を伝える歌であるからこそ、この歌が多くの人たちに共感を呼んだのだろうと思います。
東日本大震災の後、多くのアーティストたちが口にされていた言葉は「自分たちの仕事で、何ができるのだろうか」という自問自答のような言葉でした。歌は人を元気にしたり、励ますことができると思います。ですから、苦しいときに、歌は心の癒しになるわけで、大いに人々の生活に役立っていると思いました。今も気仙沼の街では、この「わが美しき故郷よ」の歌が流れているそうです。