DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

ハタラクワタシへ

9月に入りました。ヨーロッパは6月から8月までが「バカンス」の時期で、9月に入るとバカンスから戻った人々は、仕事に学校にと「日常の生活」へ戻っていきます。日本も子供たちの夏休みが終わって、やや空いていた通勤の電車やバスにも、学生さんたちが徐々に戻ってくる頃です。学生にとっても、通学ってお仕事みたいなものですよね。久しぶりに行く学校に、ちょっと気持ちが緊張している子たちもいるかもしれません。大人もそういう気持ちは同じで、日曜日の夜はちょっと憂鬱な気分があって、月曜日の朝になれば、通勤へと向かっていくわけで、また1週間が始まる感じです。

先日、テレビから聞こえるコンサートのCMで、アーティストが「おつかれさま」って歌うのでふと画面を見たら、三浦祐太朗さんが映っていました。三浦さんは、母である山口百恵さんの曲をカバーしたアルバム「I'm HOME」が2017年にヒットして、このアルバムは同年の日本レコード大賞企画賞を受賞しました。祐太朗さんは2008年に、同級生で結成したバンド「Peaky SALT」でメジャーデビューし、現在はソロ活動を行っていますが、バンド時代の曲は正直印象には残っていませんでした。何かの歌番組で百恵さんの「さよならの向う側」を歌う祐太朗さんを見て、すごく歌と気持ちが一体となっているなあと感じましたし、他人には真似できないというか、DNAの遺伝子を継承している歌声には味があるなあと思いました。


MBZZ02 さよならの向こう側② 三浦祐太朗 170707 vL FC HD

祐太朗さんは2019年は47の全都道府県でのツアーを実施されていて、ぼくが見たCMもその宣伝だったようで、百恵さんのカバー曲を歌うシーンもあったんですけど、ぼくが気になったのは「おつかれさま」って歌っていた曲の方で、調べてみたらその曲は、「ハタラクワタシへ」という曲でした。この曲は2018年4月18日に祐太朗さんの配信シングルとして発売されました。ユニクロのwebCMにも使われたようです。作詞は山上陽介さん、有元沙矢香さん、福岡万里子さんの共作、作曲は前山田健一さん、つまりヒャダインさんが提供されました。


ハタラクワタシへ*三浦祐太朗

この曲を初めて聴いたときに、ヒャダインさんってこういうしっとりした曲も書くんだと意外感もありつつ、祐太朗さんの歌は歌詞をしっかりと伝える姿勢が出ているなあと感心しました。ユニクロとのコラボ企画ということもあるので、30代のビジネスパーソンがテーマのようで、ヒャダインさんもこの曲は「がんばれって励ます応援歌ではなくて、リスナーと同じ目線で「一緒にがんばろうね」っていう歌」だと説明していました。そういう場面って、日常でも割にあるというか、今は「努力だ」「根性だ」「やる気があればできる」と鼓舞するだけでは、日本人は動かないんですよね。隣に座って、悩んでいる同僚の話をしっかりと聞いて、「その気持ちわかるよ」って寄り添ってあげて、気持ちを切り替えてあげられるっていうか、仲間の繊細な感情を大事にしていく姿勢が求められているのかなって思います。でも、そういう自分に同じようにしてくれる人は誰もいなかったりする。芸能界もそういう世界のようで、祐太朗さんもヒャダインさんも30代になって「褒められる」ことは全くないそうです。だからこそ、自分を一番わかっている自分が褒めてあげることは恥ずかしいことではなくて、むしろやった方がいいと思うそうです。

ラソン有森裕子さんが、アトランタ五輪で銅メダルを取ったときの「自分で自分をほめたい」という名言を聞いていたこともあり、ぼくは自分で自分を褒めてあげるっていうのは時々やってます。誰も褒めてくれませんから。亡くなられた樹木希林さんも、「自分を俯瞰して見るって大事よ。そして、自分で自分の頭をなでてやるの」って話されていたことがありました。今の世の中って、昔ほど安穏ではいられない空気があって、人々の考え方も多様になった分、違う考え方への寛容さが薄れているというか、そういうのは日常の仕事や生活の中でも、小さな対立や軋轢を生みがちになっていると思います。だからこそ、優しく語りかける、人に寄り添うっていうのは価値があると思いますし、盛り上がる歌とは別に、自然体で歌う歌もまた必要だと思うのです。