DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

かなしみ模様

日本の歌謡史の中で、歌唱力は勿論のこと、歌の表現力においても群を抜いていたのがちあきなおみさんでした。ちあきさんが現役の歌手活動をされていた頃は、「喝采」のイメージが余りにも強烈でしたが、1992年にご主人と死別後、一切の活動を停止した後になってから、ちあきなおみの歌の世界がクローズアップされ、彼女が歌った多くの作品が再評価され、注目を浴びるようになりました。

ぼくもちあきさんの歌をYouTubeで聴くようになって、その歌の上手さに驚き、その歌の迫力に衝撃を受け、こんなに上手い歌手だったのに、どうして気付かなかったのかなあと思っています。ぼくがカラオケで歌を歌うときに、ちあきさんの歌い方はお手本の1つになっていて、歌詞を棒歌いするのではなく、歌詞に情景を入れる歌い方は特に参考にしています。ちあきさんの歌の上手さは、「朝日のあたる家」のように声量を張り上げて歌うこともできれば、「紅とんぼ」のように語るようでいてしっかりと歌うこともできる変幻自在のコントロール能力にあります。ですから、さらっと歌っても歌の上手さが光るわけですが、そんな1曲が「かなしみ模様」という曲です。

この作品は1974年9月1日にちあきさんの18枚目のシングルとして発売されました。作詞は阿久悠さん、作曲・編曲は川口真さんです。当時、1974年11月25日にシングルと同名の「かなしみ模様~新しい出逢い、そして新しい出発(たびだち)」というアルバムも発売され、全曲の歌詞を阿久悠さんが手掛け、作曲を川口真、筒美京平小林亜星猪俣公章、及川恒平の各氏が提供しました。この頃のちあきさんは「喝采」の延長線上にあるともいえる、まだ自然体なポップスを歌っていました。後年のちあきさんが演歌やニューミュージックやシャンソンやファドと、あらゆる分野の歌に挑み、強烈な作品を残していったことを考えると、ある意味「かなしみ模様」の頃は貴重な時期だったかもしれません。

1974年のNHK紅白歌合戦でちあきさんは「かなしみ模様」を歌唱しましたが、Aメロ、Bメロは語るように歌っていたと思ったら、次第に声をじわじわと盛り上げていって、サビでは訴えるように歌っていく、実にあっぱれな歌いっぷりでした。歌を終えてお辞儀をするときのちあきさんの表情がニヤリとしていて、「お客さま、私の歌はいかがでしたかしら」と問いかけているようにも思えるのです。


悲しみ模様 ちあきなおみ