DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

歌の旅びと

Youtubeを見ていると、知らない曲に出会うことがありまして、それで初めて聴いてみて、そしてまた聴いてみて、次第に自分の中で関心が芽生えてくる曲があります。演歌歌手の松原健之さんが歌う「歌の旅びと」という曲もそういう1曲です。

この作品は2011年5月25日に松原さんの7枚目のシングルとして発売されました。作詞は五木寛之さん、作曲は松坂文宏さんです。五木さんはNHKラジオの人気番組である「ラジオ深夜便」で、2005年以降トークのコーナーを持っていますが、2011年4月から2015年3月まで放送していた「歌の旅びと」というコーナーでの主題歌がこの作品でした。五木さんは作家活動だけでなく、作詞家としても精力的に活動されていますが、松原さんへの作品提供は他の歌手に比べても多く、デビュー曲の「金沢望郷歌」をはじめ、「冬のひまわり」や「雪明かりの駅」など、五木文学の世界の表現者のような役割を託されているようにも思えます。

「歌の旅びと」は地図にない町を探して旅に出ます。「もし翼があったなら」と同じシチュエーションですが。昔に思いを馳せて、なつかしいあの店が蘇り、若すぎた頃に出会った君との思い出を振り返ります。そして、「歌の旅びと」はおもいでの歌をたずねて旅に出ます。別れたあの人はあの歌をいまでもおぼえているだろうかと問いかけ、もう一度あの店で、あの歌を歌いたい、君にあいたくてと思うのです。

松原さんが「歌の旅びと」を歌っている動画を見ましたが、曲に盛り上がりのサビらしいサビはなくて、想い出を振り返るように、1フレーズずつ、それぞれのAメロが続いていくような感じでした。そういう地味な歌なのに、松原さんの歌にはなぜか説得力がありました。ぼくのカラオケを振り返ると、サビの盛り上がりに頼った歌い方ではまだまだだなということを感じつつ、それだけにこういう淡々と進むような曲への関心が芽生えてきました。こういう作品をシングル化しようとする決断はすごいと思いますね。ヒットすることは半分捨てて、作品への思いを重視している気がしますし。でも、その後の松原さんのベストアルバムでも「歌の旅びと」はトリの曲に使われているようですし、何十年経っても歌い続けていく作品になっていくのだろうと思います。


松原健之  歌の旅びと