とある外国の都市の、教会と裁判所の間にある広場で、たぶんオペラ歌手の若手とおぼしき男性と女性が、素晴らしい歌声で有名な曲を歌っている場面に出くわしました。最初は口パク?と思ったんですが、女性の歌手が途中でくしゃみをして歌声が途切れたので、「本当に歌ってるんだ」と確信し、2人の歌唱力に聴き惚れてしまい、周りの観光客の人たちも思わず足を止めてしまうほどでした。歌が終わると、多くの人たちが拍手をすると共に、箱に次々とお金を入れていきました。ぼくも2ユーロ入れました。彼らが歌っていた1曲が「Time To Say Goodbye」でした。
ぼくも最初この曲名が思い出せなかったんですが、この作品はもともと「Con Te Partiro」(コン・テ・パルティオ)というイタリア語の曲として生まれ、1995年2月のサンレモ音楽祭で、イタリア人のテノール歌手Andrea Bocelli(アンドレア・ボチェッリ)の歌によって初めて披露されました。母国のイタリアでは当初あまりヒットしないんですが、フランスとスイスではチャート1位となり、ベルギーでは歴代最多枚数の大ヒットとなりました。
その後、1996年にイギリス人のソプラノ歌手 Sarah Brightman(サラ・ブライトマン)がボチェッリにこの作品のデュエットを申し出たことにより、歌詞の一部をイタリア語から英語に変え、曲名も「Con Te Partiro」から「Time To Say Goodbye」に変更して発売しました。すぐにヨーロッパ全土で爆発的な大ヒットになり、シングルが1,500万枚以上、アルバムを含めても2,500万枚以上の世界的な大ヒットとなりました。
日本では、サラ・ブライトマンが1991年の紅白歌合戦に出場し「オペラ座の怪人」を歌唱した知名度もあって、彼女の作品として知られるようにもなったほか、2011年に放送されたドラマ「外交官黒田康作」の主題歌として、この作品をイギリスのボーカル・グループ Il Divo(イル・ディーヴォ)が歌っていますので、彼らもこの作品の歌い手として外国では知られています。
1990年代から、クラシック音楽とポピュラー音楽を融合した、クロスオーバーのサウンドが作られるようになり、クラシカル・クロスオーバーと今では呼ばれていますが、この作品はこのジャンルを確立したパイオニアともいえます。
さて、ぼくが2ユーロを入れた男性と女性の歌手は、結構満足そうな笑顔を見せて、石畳の街を歩いていきました。歌えると結構いいバイトだなあと思いました。日本は路上で歌う歌手の歌をしっかりと聴く姿勢はまだまだなのかなあ。特定の歌手のファンだけが集まるというのではなくて、通りすがりの人たちが足を止めて歌を聴けるような空気がもっと醸成されていったらいいなと思います。
ボチェッリとサラのデュエット、イル・ディーヴォのハーモニー、どちらも秀逸だと思います。
Andrea Bocelli, Sarah Brightman - Time To Say Goodbye (HD)
Il Divo - Time to Say Goodbye (Con Te Partirò)