DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

違和感の正体

ぼくがカラオケ大会に出るようになってから、今月で3年が経ちました。出場しても入賞することはほとんどなくて、手ぶらで帰ることばかりでしたが、今年に入ってから、参加したリアル大会もオンライン大会も、何らかの賞を頂けるようになりました。嬉しい半面、自分の中では何だかすっきりしないというか、疑問や違和感が残っています。

自分ではその日の全力で歌っても、結局は手ぶらで帰ることが多かったので、ぼくは優勝とか入賞とか無理だろうと思って、そこに執着する気持ちはすっかりなくなりました。一種の諦めみたいなものです。だからたまに入賞したときは、運が良かったというか、審査員の先生の印象がすごく良かったんだろうと思うようになりました。

また、カラオケ大会では審査員の寸評を頂くことが多いんですが、入賞しなかった時の寸評を見て、「そんなに酷かったかなあ」と首をかしげたくなるようなこともあります。逆に、入賞した時の寸評を見て、「評価が低い項目がいくつもあるのに、何で総合評価が良くなるのかなあ」とか、「1人の審査員は高く評価してくれてるけど、他の4人の審査員はそれほどでもないのに、何で入賞できるのかなあ」とか、不思議に思うことがあります。

審査員の寸評は、自分の成長のために勿論参考にはしますけど、良くても悪くても、いつまでも引きずられないようにしようと思いました。その上で、どんな曲を歌うにしても、自分の軸とかベースとかを決めて歌おうと考えるようになりました。この「自分軸」っていう言葉は、ぼくが初めてカラオケ大会に出たときに、審査員の方が総評として言われた一言なんですけど、やっとその意味がここで腹落ちできた感じでした。

それと、この1年余り、コロナの影響で、リアル大会が僅かしか開催されないこともあり、せっかくの機会である1つの大会にこれまで以上に向き合うようになったと思います。オンライン大会は逆にものすごく増えましたけど、ぼくはどのオンライン大会も何でも出られる状況ではないので、大会の趣旨を読んで、出てみようかなと思ったものだけ応募することにしました。

それで、大会で歌う曲を練習するときも、結構細かいところに拘って歌い方を決めていくようになりました。でも、なかなか自分が決めたようには歌えないことが多くて、オンライン大会の動画を提出したときも満足のいくものではありませんでした。リアル大会は歌う前の緊張感がどうしてもあって、それでも舞台で心のスイッチが入ると、緊張するよりも、自分が選んだ歌をここで示そうっていう気持ちが強くなるので、思ったことをやり切れるようにはなってきたかなと思っています。

こうやって自分を振り返ってみると、ぼくも心の持ち様がしっかりしてきたのかなと思います。そして、いつも歌っているから、歌は確かに以前よりも上手くなったと思います。でも、まだどこかに残っている疑問や違和感を、最近参加した大会の審査員の「辛口講評」を頂いて、その姿が見えてきました。その大会でもぼくは「最優秀歌唱賞」という、5位から8位程度の賞を頂きましたが、「辛口講評」では、その曲に合ったビブラートの型になっていない点を指摘され、ビートに乗った歌い方ができていない点を指摘されました。DAM★ともでぼくはいろいろな曲を歌っているんですけど、ビブラートの型が2種類ぐらいしかないことに気づきました。リズムには気をつけていたので、リズムは98点ぐらい取れているんですけど、歌を覚えることに必死すぎて、伴奏を聴く注意力が不足していたことに気づきました。例えば、ドラムのリズムに焦点を当てて聴いてみると、いつも聴いている曲が新しい切り口で聞こえるから不思議でした。でも、伴奏に合わせて歌ってるだけでもいけなくて、自分はその曲について思うリズムで歌った上で、伴奏とシンクロしなきゃ、本当の演奏にはならないんだってことが、実は音楽についてのいろいろな方のツイートを読んでいる中でハッと気がつきました。違和感の正体が見えてきたところで、当分はその謎解きに時間をかけていくことになりそうです。

スカイランタンの唄

ぼくは6月5日に高松国分寺ホールでのカラオケ大会に参加しました。この大会で特別審査員を務められたのが、歌手の中村つよしさんでした。カラオケ大会が午後5時頃に終了して、午後7時から1時間余り、中村つよしさんのコンサートが同じホールで行われました。

中村つよしさんのヒット曲である「愛のカタチ」や「カセキ」は、カラオケ大会でも男性女性問わず歌われることが多いです。大会で競うせいもあるのかもしれませんけど、これらの曲を歌う方の歌を聴いていると、技術的に上手く歌えていることをアピールしているようにしか聴こえないことが多くて、作者の思いは違うのではないかなと思うことがありました。なので、作者ご本人の中村さんの歌は実は聴いたことがなかったので、すごく期待をしていました。

ぼくも事前に中村さんの作品を聴いておこうと、YouTubeで中村さんがアップしている動画を12曲ほど聴きました。伴奏はピアノだけの弾き語りとシンプルなのに、1つ1つの作品に歌詞の情景が投影されているかのような印象を受けました。その中でぼくがすっと心の中に入っていった曲が、「スカイランタンの唄」という曲でした。

「スカイランタン(sky lantern)」とは、「天灯」とも呼ばれ、主に中国やタイなどのアジア諸国で使われましたが、ヨーロッパでもイギリスやポーランドでもスカイランタンの文化があります。古代においては通信手段として使われていましたが、現代では祝賀行事や、祈祷における儀式の中で使われています。

ぼくは「スカイランタン」と聞いて、灯籠流しの空版みたいなイメージを持っていました。中村さんはコンサートでお話してくださったのは、東北の東日本大震災の復興支援に協力してほしいという呼びかけで、現地を訪ねた時にスカイランタンの光景をご覧になったそうです。

「私が愛した あの人 私を愛した あの人 今も愛している あの人 今も愛してくれる あの人 見上げれば空 その果ては未だ誰も知らず 見上げれば空 あの人の星が輝いてる あの人の光で満たされてる」という歌詞の一節のように、今は会えない愛する人に向けての願いが深く込められていて、中村さんの生の歌声を聴きながら、ホールの天井を見ると、そこにスカイランタンが夜空を飛んでいる光景が浮かぶような気がしました。

この曲に限らず、中村さんの歌声には無理がなくて、自然に発する言葉とメロディーが相まって、自然の営みの中で生きる人間の姿を、淡々としているようで深く掘り下げて歌われているように感じましたし、コンサートを聴いている客席の向けての皆さんも、中村さんの歌と演奏に聴き入っているような気がしました。

「愛のカタチ」はご自身の祖父と祖母の生き方を歌われたとのことで、孫から見た姿としての歌には、説得力がありました。認知症になっても、愛する夫である祖父の名前だけは忘れなかった、妻である祖母の愛情を、生き様として歌われているように感じました。

こういう作品は流行を追うものではないのかもしれませんが、歌は生活の日常から生まれるものであって、そういう人生の営みを見つめた作品を音楽として届けていくことも、音楽家の1つのカタチなんだなと納得した夜でした。


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リアル大会

6月5日、ぼくは香川県高松市にある高松国分寺ホールで開催されたカラオケ大会に行って、歌ってきました。出ることになったきっかけは、3月下旬、香川県を中心に音楽活動をしている女性2人組デュオのPräparat(ぷれぱらぁと)さんが、Twitterで、このカラオケ大会の開催と、彼女たちが主催しているオンラインのカラオケ大会「ぷれぱCup」の開催を同じ時期に紹介していた頃でした。ぼくはオンライン大会よりは、実際に会場で歌う大会の方が好きなので、PräparatのSatomiさんに「どちらかというと、高松国分寺ホールの大会の方が興味があります」と答えたところ、Satomiさんから「入賞者部門はもうすぐ定員に達するから、お早めに申し込んでください」とのご返答がきました。その翌日に、「定員の20名に達したので、審査員の方に相談して、更に5名まで追加する」との発表がTwitterであったので、すぐに申し込みました。香川県も一時期コロナの感染者が増加しましたが、5月下旬に開催が正式に決まりました。

さて当日。ぼくはJRの端岡駅からぶらぶら歩いて20分、高松国分寺ホールに到着しました。この大会は、Präparatの曲「讃岐国分寺」を歌う「讃岐国分寺部門」、DAMの採点機能で100点満点の採点を競う「採点部門」、どこかの大会での入賞経験者が競う「入賞者部門」があり、ぼくは「入賞者部門」に参加しました。10時からの讃岐国分寺部門の9人が歌い終わって、11時から入賞者部門に入りました。ぼくは10番目でした。直前の2週間は、カラオケでの練習が全くできず、香川県に入った前日の夜と当日の朝にやっと練習することができ、ぼくが歌う曲、宇佐元恭一さんの「雨ニモマケズ」を何回もチェックして、準備は何とか整えました。でも、やっぱり舞台裏に向かうと、緊張感が増してきて、それは舞台袖の前まで来るとピークに来ていました。自分の出番になり、ステージの中央に立ちました。「よろしくお願いします」と挨拶したものの、会場からの拍手はなし。ここで、「しっかりと歌おう」というスイッチが入りました。1フレーズごとに、自分が決めた歌い方とか、会場への視線の向け方とかは考えていた通りにできました。客席はコロナ対策もあって、前の方の席は撤去されていたので、一番前に座っている方でも結構遠くだったんですが、そこまで声がしっかり届くように、ボールを飛ばすような気持ちで声も出すようにしました。歌い終わって「ありがとうございました」と挨拶しましたが、拍手は薄めな感じでした。舞台袖に戻り、スタッフの方から「いかがでしたか」と聞かれて、思わず「良かったです」と答えてしまいましたが、まだ会場の空気感もまだ暖まっていない感じで、1コーラス終わったところで拍手をしようとしていた人が何人か見えて、確かに自分の感触としては良かったですし、緊張していた自分に勝てたなと思いました。この時点では賞が貰えなくても、自分としてはやり切った満足感がありました。こういうところが、リアル大会でなければ体感できない、現場の臨場感や緊張感なのかなとも思いました。

この大会は、「愛のカタチ」を作られた歌手の中村つよしさんが特別審査員を務めたこともあり、入賞者部門でも5人の方が「愛のカタチ」を歌われました。大会では歌われることが多い曲ですが、ぼく自身は歌ったことがない曲です。この曲を歌う方は皆さん上手いんですけど、中村さんのオリジナルと比べてしまうと、メロディーを綺麗に歌いすぎている印象があって、歌詞の言葉の背景がぼくにはどうもピンとこなくて、この日もやはりそうでした。

14時前から採点部門に入りました。素点プラスボーナス点で100点を競いますが、素点で100点を取った方が1人、ボーナス点込みで100点を取った方が2人、ボーナス点込みで99点台の方が2人と今まで見た中で一番ハイレベルでした。そして、歌としても味わいのある歌唱をされる方も多く、95点以上の方も多くいらっしゃいました。

中村つよしさんが大会の総評をコメントされた中で、「縦軸の音程と横軸のリズムをしっかり管理されている」前提で、「完璧の上は何か」と問われ、「それはいい加減」と言われました。風呂の温度に例えられて、「今の時期なら39℃が丁度いいと思っても、冬になれば40℃がいいと思うようになる」と、良い加減であり適当な塩梅を目指していくものだと話されました。そして、「採点ともなれば、また完璧を認めて技を高めていくのかな」と言われ、確かに100点を取られた3人は、ここで何をすれば点を加算できるのかということを徹底して追求していたように思えました。

ぼくは入賞者部門で高松国分寺ホール賞(5位)を頂くことができました。カラオケ大会に参加してから3年になりますが、初めて表彰状と盾を授与されました。今まで入賞したことはありましたが、賞品や賞金はあっても、トロフィーや盾や賞状は頂いたことがありませんでした。壇上で審査員の方から表彰を受けて賞状を受け取ったとき、本当に嬉しかったです。やっとここまで来れたんだなっていう気持ちでジワッときました。

大会が終わって、PräparatのEMIさん、Satomiさんのお2人ともお会いすることができ、色々なお話をできましたし、何人かの歌の仲間の皆さんともなかなか会えない状況の中、この場所で会うことができたことが嬉しかったです。確かに電子ツールでやり取りはできますし、話もできます。でも実際に顔を合わせて会って話すと、距離感が縮まりますし、親近感が湧くんですよね。ぼくは現場の空気感は大事だと思っていますし、人と人の結びつきを強くするのには欠かせないと考えています。リアル大会で歌うことも同じで、音楽の楽しさや面白さを、そこに集まった皆さんと共有できることがイベントの根幹だと思っていますし、そういうイベントに自ら参加していくことで、今後のリアル大会の復活に向けて微力でもいいからお手伝いしたいと思います。

ダメ ダメ…

ぼくはDAM★ともで歌うときに、1曲だけを連続で練習し続けるというのができません。「ここは出来てるけど、ここは歌えてないから、もっと改善して…」みたいに自分で根を詰めていっても、歌が縛られてしまう感じがしてしまって、ダメなんです。それで、その曲が上手く歌えなかったら、その曲とは雰囲気も違うような曲を、大体アップテンポな曲を歌って、気持ちをスカッとさせて、心のモヤモヤも解消させてます。そういうスカッとする曲のレパートリーに最近加えたのが、新浜レオンさんの「ダメ ダメ…」という曲です。

新浜レオンさんは2019年5月1日にデビューした演歌歌手の方で、2020年に発売した「君を求めて」がヒットして、「演歌第7世代」の1人として注目されています。

こういう紹介をされることが多いレオンさんですけど、ぼくの場合はレオンさんというと、「伯方の塩」のCMの歌でおなじみの演歌歌手の高城靖雄さんの息子さんということがまずあります。高城さんの新曲は「酒と」という曲です。いい曲だと思いました。


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それと、レオンさんは千葉県出身ということで、毎週月曜日21時から21時30分までレギュラー番組が放送されていて、今は「ドシラソファミレオン」という番組です。レオンさんが、新御三家野口五郎さん、西城秀樹さん、郷ひろみさん)や御三家(橋幸夫さん、舟木一夫さん、西郷輝彦さん)のヒット曲を披露されています。ぼくはこの番組を見ていて気がついたのは、何十年も前の懐メロ曲だから、今歌うのは古臭いとかカッコ悪いとかいう固定観念を持ってはいけないということと、古い曲だから今の人にとっては易しいみたいな間違った侮り方をしてはいけないということでした。そして、レオンさんはご自身の身の丈に合った無理のない歌い方をされているなあと思いましたし、それと1年前より歌声がはっきり出るようになったなあ、歌唱力アップしたなあと最近感じています。

もともと、お父さんの高城さんの鞄持ちから歌手を目指したレオンさんは、「どうして若い人は演歌や歌謡曲を歌わないのだろうか」という素朴な疑問を持ったそうです。それで、ご自身が通っていた大学のミスターコンテストで、森田公一とトップギャランの「青春時代」を歌って、周りのお客さんに握手してみたいなことをやってみたらものすごく受けたそうで、このことが歌手になることを決意したきっかけになったそうです。

カッコよく見せたいと思うなら、男子ならEXILE系の曲とか平成の曲を選びそうなところを、敢えて昭和のヒット曲を選んだところに、自分が信じた道というか、個性的な信念を感じます。

演歌歌手というよりは、歌謡曲路線の歌手を指向しているのかなと思いますし、レオンさんが言われているように野口五郎さんや西城秀樹さんのように、歌唱力もあって魅せるステージを披露する歌手を目指しているように感じられます。実はここのゾーンの歌手ってそんなにいないですから、狙い目ではあると思います。

「ダメ ダメ…」はレオンさんの3枚目のシングルで、2021年5月12日に発売されました。作詞は山崎あおいさん、作曲は馬飼野康二さんと鎌田俊哉さん、編曲は船山基紀さんです。この最初に聴いた時、レオンさんが今までよりもキーを上げて歌っているように思いましたし、パワフルな歌い方で歌っていると思いました。野口五郎さんに「レオン君には、常にギリギリで頑張って欲しい」とアドバイスを受けたことをレオンさんは紹介していましたが、歌の魅力の1つは、歌手が自分の限界にチャレンジしている姿勢なのかもしれません。例えば、かつてのNHK紅白歌合戦では出場歌手は、自分の最高のステージを見せたいため、いつものステージでは見せない歌唱の技を見せていたといいます。レオンさんの魅力は、今頑張っている姿勢を見せていることだと思いますし、華のある歌の世界を表現しようと目指していることだと思います。

歌手それぞれ目指すものとか、夢に描いているものはそれぞれ違いますけど、そのイメージを早く具現化できた方が、その歌手のキャラクターが活かされていくんだろうと思います。


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自分とたたかう歌

ぼくが最近感動した動画が、BAROQUEのギタリストの圭さんが4月12日に開催したソロライブのこの動画でした。


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圭さんは5月13日にこの動画をTwitterで紹介すると共に、こう呟きました。

「自分の全てだったBAROQUE休止から7ヶ月…

これからどう生きるべきなのか。

気が付いたらこの4月12日のステージに立っていた。

人の前で歌う事は凄く怖かったのに。

でも、それを越えた先での本当の自分に出会えた気もした。

2曲繋がっていて長いけど皆に観て欲しい。」

圭さんは7ヶ月前のBAROQUE休止発表直後に行ったライブを「あの日はまだ怖れていた」と振り返り、「今日は覚悟を持ってここに立つ事を、自分と約束して決めた」「あの日の自分と、今日は決着を自分で着けたいなと思って、最後の曲を選んだんで、聴いてください」とこの動画でも語っています。その覚悟とか決着というのは、BAROQUEにたった1人残った表現者として、今までのギタリストとしてだけではなく、自らステージの真ん中で歌う事を決断して、シンガーとして進む覚悟を決めたことでした。

そこに至るまでの道程って逡巡されたんだろうなと思いますけど、目の前に壁やハードルがあっても、実現しようとする決意と覚悟や、納得のいく結果を目指す努力が見える姿が、とても美しいと思って、そういう熱意が感じられることには、微力でも手を差し伸べたくなる気持ちになります。

ぼくは、圭さんみたいな急展開なエピソードはありませんけど、カラオケ大会のように人前で歌う時は、その作品を自分が思い描いているように見せたいという気持ちは持っていて、そういうことを表現しなきゃっていう決意は持ってるんです。ステージに立つと、やっぱり緊張はしていますけど、それよりも歌っているときは、もう1人の自分が「ちゃんと歌えてるかな」と確認していたり、ちょっと音を外したときは「他でリカバリーしよう」と声をかけていたり、後半になってくると「そこは頑張って歌い切れよ!」と檄を飛ばしていたり、心の中では結構自分とたたかっている感じがします。

カラオケの世界大会に出られた方と、カラオケ大会の話をしたときに、「ステージって、自分に勝つかどうかなんですよね。調子が悪かったら、その日は負けだと諦めます」という言葉を聞いたことがあって、結局、たたかうべき相手は他人じゃなくて自分なんだなと改めてその日の出来を反省したことがありました。

初めてカラオケ大会に出たときの審査員の先生が「自分軸を持つように」ということと、自分のやりたいように「やっちゃいなよ」ということを言われて、そのときはその言葉がよく見えてませんでしたが、自分の歌に対するスタンスを確立していくことが、揺らぎない自分のスタイルを作っていけるし、それが歌の個性を生み出すのだということがわかってきました。

ステージに立つと、全てを曝け出すしかない状況なんです。一斉に見られているなあっていう感覚ありますし、歌っているだけなのに、ぼくの人となりまで見られているような気がします。上手く歌ってやろうと見せても見抜かれますし、自信がなさそうに歌っても誰も同情はしてくれませんし。でも、ぼくのリアルを曝け出すわけではなく、あくまでも歌の作品を、ぼくを通じて発表しているわけです。自分が歌の主人公を演じ切れるかみたいな意味では、歌い手も役者と同じところがあるんだなと思っています。

「女優!女優!女優!勝つか負けるかよ!」とは、映画「Wの悲劇」で三田佳子さんが演じた名ゼリフですが、浜崎あゆみさんや三代目J SOUL BROTHERSはコンサート開演前に円陣を組んだときに、この「女優!女優!女優」コールをしたこともあるとか。それだけ自分に勝つためにたたかうことって大事なんですね。

 

 

いのちの木陰

ぼくは先日、「おんうた9」というオンラインカラオケ大会に参加しました。新型コロナウイルス感染の影響で、通常の会場で歌うカラオケ大会(最近は「リアル大会」という言い方も使われます。)ではなくて、自分が作成した動画や録音を提出したもので競うオンラインカラオケ大会の開催が増えています。「おんうた9」の課題は「レコード大賞受賞曲」でした。企画が面白そうだなと思って参加申込をしました。どの曲を歌おうかなと思ったとき、他の参加者の方が選ばなそうな曲にしようと思っていました。それで歌ってみようと選んだのが、1969年のレコード大賞受賞曲である、佐良直美さんの「いいじゃないの幸せならば」という曲でした。


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ぼくがこの曲を歌おうと思ったのは、林部智史さんが歌番組でこの曲を歌っていて、佐良さんの歌とは違う、切なさを前面に出した歌い方をされていたのが新鮮に感じられました。一方でオリジナルの佐良さんの歌は、すごくシンプルないずみたくさんのメロディーに、岩谷時子さんが複数の男性と愛し合っては別れる女性に「いいじゃないの幸せならば」と言わせるきわどい歌詞を、いやらしさを感じさせることなく、淡々と、でも心の深さを見せた歌い方が、アルトの中低音が響く声質と相まって、ものすごく説得力を感じました。

この佐良さんの歌の表現力ってどういうものかなと、いくつかの動画を見ていくなかで出会った曲が「いのちの木陰」という曲でした。佐良さんは1983年にシングルを発売し、1987年頃から芸能活動を休止し、実業家としての活動をされていました。2010年11月24日、27年ぶりのシングルとしてこの作品を発表しました。作詞は山川啓介さん、作曲は渋谷毅さんです。佐良さんはそれまで、「渋谷さんが曲を書いてくださるなら」という断り文句で歌手への復帰に難色を示していましたが、その渋谷さんが曲を用意したので引っ込みがつかなくなったそうです。

山川さんが作られた歌詞が、「生まれてきたのは 幸せになるため」「それなのに世界は 時々いじわるだね」「あなたのためにささやかな いのちの木陰になりたい」「傷だらけの悲しみたち 私にあずけて そっとまどろんで」と、深い言葉で大きな包容力を感じるいい言葉だと思いました。渋谷さんのメロディーも肩に力が入っていない感じで、でもしっかりと音を奏でているのがイメージできました。佐良さんの歌声は長年の休止を感じさせない歌声で、アルトの深みが感じられて、そして力をいれずに言葉を語って伝えているのが印象的でした。

ぼくも「いのちの木陰」が発売された直後の2011年頃に、DAM★ともで歌ったことがありましたが、当時はこの曲の良さがあまりわかっていませんでした。久しぶりにこの曲を聴いて、改めて作品が言いたかったことを感じ取れた気がしました。

 

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昭和の歌手の表現力って、平成以降と比べると、アピール度が強いと思いますし、歌詞の言葉に心情を加えていく歌い方が深いというか実に巧みな感じがします。そういう歌の雰囲気が出せないかなと思い、DAM★ともで何十回も歌ってはみたものの、思い描いたようには歌えませんでした。

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君の為のキミノウタ

最近の音楽シーンの中で、「魔法の絨毯」のヒットをきっかけに注目を集めているのが、シンガーソングライターの川崎鷹也さんです。DAM★ともやKARASTAでも、「魔法の絨毯」以外の川崎さんの作品も何曲か配信されるようになりました。この中で、ぼくがいいなと思ったのが、「君の為のキミノウタ」という曲でした。

川崎さんは2018年8月25日にインディーズレーベルのS–Rise Music/Flying Voice Inc.からアルバム「I believe in you」を発売しました。このアルバムの3曲目に収録されていた「魔法の絨毯」がヒットしたことで、一度は購入できなくなっていたこのアルバムCDが、2021年5月26日にビクターエンターテインメントから発売予定となっています。そして、このアルバムの6曲目に収録されていたのが「君の為のキミノウタ」でした。

川崎さんは自分の作品については「実体験をもとに書いている」とコメントしていますが、その中でも、今の奥様に対するメッセージが強いなあと感じています。実際、「君の為のキミノウタ」も、当時付き合い始めた頃に作ったそうです。「付き合ってから2年間、ずっと信じられなかったんです。朝起きて隣にいることとか、彼女が作ってくれたご飯を食べることとかが、ずっと信じられなくて。地球規模で考えたときに、137億年の中でひとりの人間の寿命とか人生とか一瞬だけど、その一瞬を大切にあなたのために捧げたいなと思って書いた曲でした」と、音楽配信のインタビューで語ってくれる川崎さんっていい人だなと思いました。

川崎さんの歌声を聴いていると、同様にTIKTOKYouTubeでブレイクした他のアーティストと比べて、リズムを軽妙に歌っている一方で、その声に芯や深さを感じていて、見た目の爽やかな感じとまた違う持ち味があるなと思いました。


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川崎さんは歌を作るときに、一番大事な人に届くかを重要視していて、その人に届かなければ、他の人には絶対届かないと思っているそうです。歌にしても、誰にでも共感してもらいたいとは思っていなくて、誰か1人でも心を揺さぶってもらえたらそれでいいと思っているそうです。

ぼくは誰のために歌っているのかな、ということは時々考えます。1人カラオケをしていたりDAM★ともで楽しんでいるときは、自己満足に徹していたのでそれはそれでわかりやすかったです。

カラオケ大会などで人前で歌うようになって、何でここで歌いたいと思うようになったのか、その答えははっきりしたりしなかったりしています。優勝する実力はありませんので、勝つための歌を歌おうと思ったことはありません。実力がまだまだだから、自分の歌を成長させたいという思いはあって、その成長を確かめたいから、そのためにぼくは聴く方にその答えを出してもらっています。それが自己満足や承認欲求であることに変わりはありません。

ただ、ぼく自身が他の歌い手さんの歌を聴いて影響を受けることがあるように、ぼくも自分の歌がどんなふうに作用するのかはわかりませんけど、聴いた方が何かを感じてくれたのなら嬉しいです。だから、どこで歌う時でも、初めて会った方がぼくの歌をどう受けてもらえるのかなということは、ぼくは大事にしています。

さて、前回の「ドライフラワー」に続いて、新しい曲にチャレンジということで、「君の為のキミノウタ」をDAM★ともで初めて歌ってみました。「魔法の絨毯」も好きですけど、この曲の方がぼくにはしっくりきた感じです。歌は練習していくうちに変わってくるから面白いと思います。

「君の為のキミノウタ」を初めて歌ってみました。歌詞は噛んでますし、川崎さんの雰囲気だけで歌おうとしてますので、期待しないで頂ければと思います。

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