DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

バイブレーション(胸から胸へ)

先週のBSの歌番組を見たときに、郷ひろみさんをゲストに迎えて、他の出演者が郷さんのヒット曲を歌っていくという企画がありました。

郷さんは1972年8月1日にシングル「男の子女の子」でデビュー以来、2019年5月15日に発売した最新シングル「JAN JAN JAPANESE」まで104枚のシングルを出しています。そして、郷さんは年齢を重ねると共に、違った歌の側面を見せていくことで、エンターテイナーとして長年活躍してきたという意味では、日本の歌謡界では珍しい存在であると思います。

先週の番組では昭和の郷さんのヒット曲に焦点を当てるということでしたので、1970年代の10代から20代前半のアイドル時代のヒット曲や、1980年代に入って大人の歌手になった頃のヒット曲が歌われました。聞く曲が次々とヒット曲であるのも凄いんですが、ということは視聴者としては郷さんの作品には馴染みがあるわけです。だから、視聴者のハードルってある意味高くなっているので、他の出演者の歌手の方が、郷さん本人の目の前で郷さんのヒット曲をカバーして歌うというのは、結構歌いにくい企画なんだと思います。

そういうときに視聴者が期待しているのは、郷さんの歌を上手く歌うことではなくて、その作品のエッセンスはしっかりと伝えつつ、その歌手ならではの味を出すことなんだろうなと思いました。他の歌手の皆さんの歌を聴いていたんですけど、聴いていて少しフラストレーションが溜まるというか、「そういう感じじゃないんだよなあこの曲は」と感じる歌が多かったです。良かったなあと思ったのは新沼謙治さんが歌った「哀愁のカサブランカ」でした。いつもの郷さんのお決まりのスタイルとは違っていて、それはカサブランカではなくて、新沼さんのご出身の大船渡なのかもしれないんですけど、それはそれでいい歌になっているなあという納得感がありました。

さて、ぼくがフラストレーションを感じた1曲が「バイブレーション(胸から胸へ)」という曲で、1978年のヒット曲で郷さんの25枚目のシングルとして発売された作品で、同年のNHK紅白歌合戦ではトップバッターで派手な衣装でパフォーマンスを披露しました。この頃の郷さんは「新御三家」の野口五郎さんや西城秀樹さんが賞レースに参戦していたのに対して、ジャニーズ事務所からバーニング事務所に移籍して、賞レースを戦う基盤とかチームがおそらくなかった郷さんとしては、アイドルとしても歌手としても生き残りをかけて模索していた頃だったと、今から振り返るとそう思うところがありました。郷ひろみとしての華やかさとかカッコよさを試している時期だったと思うんですよね。「バイブレーション」は作詞は島武実さん、作曲は都倉俊一さん、編曲は船山基紀さんということで、アイドルのギラギラさを、まだ当時は無機質な声質だった郷さんの歌声と派手なアクションで絶妙のバランスになっているのかなと思うんですよね。だからこの曲を歌う時は、今の郷さんが備えているギラギラさを持ちつつ、攻めの姿勢で歌って欲しいなと思いました。こういう模索を経たからこそ、その後の「マイ・レディー」や「お嫁サンバ」に繋がったのかなと思います。

ぼくもDAM★ともで「バイブレーション」を歌ってみました。昭和歌謡って作品として引き締まっているし、それば職業作家が作っていた時代からかもしれませんけど、歌詞とメロディーが上手く調和して、視聴者にイマジネーションを起こさせる力が長けていたのかもしれません。説明せずとも、歌の世界が見えてくるような感じなのかもしれません。

 


郷ひろみ バイブレーション〜胸から胸へ〜