DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

通りすぎた風

先日、カラオケ大会の審査員をされた方のブログを読んでいて、ご自身が大切にしたポイントとか、出場者の歌についての感想をわかりやすく書いていました。その中で、「フレージングに関してのみ言えば、ぶっちゃけ、濃すぎる方が多かったように思います。」と、「ワンコーラスでお腹いっぱい!という方は申し訳ないですが今回は高得点をつけることができませんでした。」という感想がぼくの目を引きました。審査員の方が大切にした部分は「もうちょっと聞きたいかどうか」だったそうです。プロの歌手で、濃すぎなくて、もうちょっと聞きたいような歌手の方は多いと思いますが、ぼくが思い起こしたのは高田みづえさんでした。そして、彼女の曲を何曲かYouTubeで聴いているなかで、初めてしっかりと聴いてみたのが「通りすぎた風」という曲でした。

この作品は高田さんの19枚目のシングルとして1983年2月1日に発売されました。作詞は横須賀恵さん。山口百恵さんが引退後に作詞をしたときのペンネームです。作曲は谷村新司さん、編曲は若草恵さんです。原曲は1978年に百恵さんの番組で初めて披露され、1980年には音楽番組「ミュージックフェア」でも百恵さんと谷村さんがデュエットで披露しました。百恵さんでのレコード化はされず、後輩の歌手として親しかった高田さんの作品となりました。話題性が高かった割には大してヒットしなかったんですけど、改めてこの曲を聴くと、歌詞には「山口百恵」のクールさが漂っていますし、メロディーには谷村さんらしい曲のまとめ方というものを感じます。そして、この曲って歌いこなすのが難しい曲なんですけど、それを歌っている高田みづえさんの歌唱力を感じる作品だと思いました。

ぼくがプロの歌手の歌を聴いている中で、「歌が上手いんだぞ」って主張する歌い方ではないけど、実はかなりの歌唱力を持っている歌手だと思い起こしたのは、男性では新沼謙治さん、女性では高田みづえさんでした。お2人とも、難しい歌でもサラリと歌ってしまうように聞こえてしまうんですけど、それができるには相当なテクニックや表現力を持っていないとだめなんですね。

また、山口百恵さんが1980年に引退して、アイドル歌手としての後継は1980年にデビューした松田聖子さんがバトンを受け、山口百恵さんの「阿木 燿子・宇崎竜童作品」的エッセンスを継承したのが中森明菜さんであるとすれば、それ以外の百恵さんの作品のエッセンスを継承したのは、ぼくは高田みづえさんであったと思っています。

濃すぎず、小品の小説のように、深く静かに心に刻まれるような歌は、どこか凛としたものを感じます。そして、歌を聴いて、自分の思い出も俯瞰するようなカタチでその歌に共感するものがあるなあと思います。

「通りすぎた心は美しい 通りすぎた心は優しい 通りすぎた風はもうもどらない」というサビの歌詞がありますけど、ぼくがDAM★ともで歌っている歌も、次々と歌っては、次々と消して、もう100曲は軽く歌ったけど、通り過ぎて消えていってます。でも、ぼくの記憶の中には録音したときのいろいろな思い出が残っていて、歌に向かっているときのいくつもの自分の表情を思い出しています。例えば、昔の自分はピュアだったなあとか。もうちょっと聞きたいと思ってもらえる歌ってどんな歌なのかはわからないんですけど、自分が歌った曲を聴いて、聴いてくださる方がその曲を通じてご自身に返って頂けるような、そういう歌が歌えたらいいなと思います。


高田みづえ 通りすぎた風(フルバージョン)