DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

仮面舞踏会

ジャニーズ事務所社長のジャニー喜多川さんが7月9日に亡くなられました。ジャニーさんは幼少期からアメリカのロサンゼルスで過ごしてきたこともあり、アメリカのエンターテイメントを肌で感じていたと思います。1952年にアメリカ大使館の通訳として来日したジャニーさんは、近所の少年たちに野球を教えていましたが、ある雨の日に、少年たちと映画「ウェストサイドストーリー」を見て一同で感動し、その後は少年たちに野球ではなくダンスを教えるようになりました。この少年たちから選ばれた4人により1962年4月に結成されたのが「ジャニーズ」でした。ジャニーズ事務所も1962年に渡辺プロダクションの系列会社として創業しました。ジャニーさんが目指したものは、単なるタレント育成ではなく、ミュージカル俳優のような歌って踊れるマルチタレントの育成を目指しました。

創業してから今日までの57年間、ジャニーズ事務所は多くのタレントを輩出しましたが、大きな2つの路線があったように思います。1つは創業期から目指していた「非日常的な舞台の演出」であり、偶像化された男性アイドルの育成であり、舞台・ミュージカル寄りのタレントの育成でした。

もう1つは、1980年の「3年B組金八先生」で人気を博した「たのきんトリオ」に端を発する、偶像化とは対照的に「お茶の間に近い大衆的な男性アイドル」の育成でした。昭和の終わりには偶像化の需要は薄れてきたため、当初光GENJIの路線を継承しようとして低迷していたSMAPは、バラエティー路線への進出を図ることで、さらに「等身大の男性アイドル像」を浸透させ、SMAPの成功がその後多くのアイドルグループを輩出し、また男性アイドル自体の人気寿命も大幅に長期化させることとなり、ジャニーズ事務所が日本の芸能界において強大な勢力となったのはいうまでもありません。

ジャニーさんが亡くなって、ジャニーズ事務所で育った多くの男性アイドルを振り返り、ジャニーさんが目指していたアメリカのエンターテイメントを体言していたのは誰かなと考えたんですが、ぼくはそれは滝沢秀明さんでもなく、堂本光一さんでもなく、少年隊の錦織一清さんではないかなと思っています。

錦織さんは12才でジャニーズ事務所に入りましたが、優れた運動神経を持っていて、ダンス、芝居、歌、美術系など多彩な才能を持ち、デビュー前から注目を集める存在でした。当時は「金八先生」シリーズのドラマに同じ事務所のタレントが出演し、田原俊彦さん、近藤真彦さんに続き、1982年にシブがき隊がデビューし、少年隊は1981年に結成され、歌番組に出演したり、アメリカに行って舞台経験を積んでいたものの、メジャーデビューは1985年と遅いものでした。しかし、そのデビュー曲「仮面舞踏会」は今でも印象深い曲であり、彼らにとっての代表曲ともなっています。

「仮面舞踏会」は1985年12月12日にデビューシングルとして発売されました。1986年の年間3位を獲得する大ヒットとなり、同年のNHK紅白歌合戦に出場し、トップバッターで歌唱しましたが、この時に白組司会の加山雄三さんが曲名を豪快に「仮面ライダー!」と言って間違えたことは、紅白の歴史に残る思い出のシーンとなっています。


全日本紅歌星大賽 化裝舞會

作詞はちあき哲也さん、作曲は筒美京平さん、編曲は船山基紀さんです。作詞のちあきさんは矢沢永吉さんの作品を多く手掛けていて、矢沢さんのファンだった錦織さんがちあきさんに作詞を書いて欲しいと希望したそうです。また、「仮面舞踏会」のイントロの(Tonight ya ya ya・・・tear)という歌詞は錦織さんのアイデアにより加えられたというエピソードもあります。

また、少年隊は1986年7月5日にミュージカル「PLAYZONE」(プレゾン)を初上演してから、2008年8月31日までの22年間主演を務めました。そして、翌2009年からの上演では錦織さんが演出を務め、後輩のタレントたちがキャストを演じています。

ぼくが錦織さんに目をひかれたのは、スマスマに出演された時のことだと思いますが、SMAPがバラエティーをやり始めた頃に、先輩の中でほぼ唯一「いいよ!」と言ってくれたのが錦織さんだったそうです。そして、「SMAPジャニーズ事務所の鎧を着ていないのが、ぼくはかっこいいと思う」とも番組の中で話していたのが印象的でした。ジャニーさんが、あらゆる方向に進出することは自分の方針と合っていると言っていたことを、共感できていたのだろうと思います。そして、自分とは違う路線で活躍したSMAPの良さをしっかりと評価できるという審理眼がまた凄いと思います。


SMAPはジャニーズ事務所の鎧を着ていない感じがするからカッコよかったBy錦織

錦織さんは最近は舞台の演出を精力的に手掛けていますが、ジャニーさん亡き後、次代のタレントを育成できる手腕を持っているのは、彼だと思います。いま、錦織さんの動向も注目されていますけど、ジャニーズ事務所に縛られることなく、若い世代を育てていただくほうが、日本のエンターテイメントのためになりそうな気がします。