DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

盛岡ブルース

日本の演歌・歌謡曲・ポップスには「ご当地ソング」と呼ばれる歌が多くあります。歌のタイトルや歌詞に、地方や町の名前とか、各地方の風習・文化・地形に関する事柄などを取り入れて、地方色や郷愁などを前面に打ち出した作品であり、今では水森かおりさんが「ご当地ソングの女王」と呼ばれていますが、ぼくが往年の「ご当地ソングの女王」と思うのは、青江三奈さんだと思います。

青江さんの大ヒット曲は「伊勢佐木町ブルース」、「池袋の夜」、「長崎ブルース」といずれも地名が入っていますが、青江さんが歌うと、伊勢佐木町や池袋や長崎の町の情景が浮かんでくる感じがします。ぼくが青江さんって歌上手いなあって思ったのは、飛行機に乗ってオーディオで懐メロのチャンネルを聴いていると、ヒット曲ではなくて初めて聴いた曲でも、「夜の瀬戸内」「木屋町の女」「神戸・北ホテル」でしたが、不思議とその土地を思わせる歌唱力ってすごいなあと思うんです。2016年4月には「日本列島おんなの旅路 青江三奈ご当地ソングを唄う」というアルバムが発売されていますが、「東日本編」が「小樽の灯」から「伊勢佐木町ブルース」までの18曲、「西日本編」が「木屋町の女」から「日本列島・みなと町」までの19曲、収録されています。

さて、ぼくが最近歌っているのが「盛岡ブルース」という曲です。この作品は、NHKで放送されていた「あなたのメロディー」という番組から生まれた曲で、視聴者が作詞・作曲を応募して、その中で優秀な作品を選んで、番組でプロの歌手が歌唱する番組だったんですが、つのかけ芳克さんが作詞・作曲をされた「盛岡ブルース」は1978年の年間最優秀曲賞に選ばれ、歌唱した青江さんのシングルとして1979年に発売されました。1979年の紅白歌合戦で青江さんは「盛岡ブルース」を熱唱されていますが、冒頭の「青い灯が揺れる」から情感の入れ方や言葉の発し方に工夫がされているのがよくわかります。ただ歌詞をなぞって歌っただけではともすれば平板な歌になってしまうところを、歌に緩急をつけて1シーンを作り出すのが表現力であって、そこに「盛岡の夜」も「君と出逢った中の橋」も「思い出の大通り」も浮かんでくるわけで、詞や曲に命を吹き込むのが歌手の仕事なんだなということをつくづく感じます。

青江さんの動画を見て感心するのは、自分の歌に歌った歌手への敬意を示してからステージに入ってくる礼節がどの歌手よりも気をつけてされていたところにあります。衣装も決してけばけばしくはなくて、分を弁えた華やかなドレスを身に纏い、決して嫌味を感じない綺麗なステージングであったなあと思います。昭和の名歌手の動画を見て、自分の歌に生かしていきたいことはいくつもあると思います。


青江三奈 / 盛岡ブルース