DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

津軽じょんがら節

土日に町や公園を歩いていると、ストリートで歌を歌ったり、楽器を演奏したりしている人たちを見ることがあります。先日は、津軽三味線を弾いている綾人さんという若い男性の演奏を見ました。ストリートにおける三味線の注目度って、正直歌やギターよりはパワーを持っていると思います。日頃ストリートの演奏に足を止めない中高年の方も三味線には足を止めて、演奏をじっと聴いているんですよね。

そんな津軽三味線のパワーから思い出したのが、民謡歌手の岸千恵子さんです。岸さんは津軽民謡の有名な歌手として活躍されましたが、歌いながらステージを走って動き回ったり、「ゆさぶり民謡」という独自の発声と振り付けによるパフォーマンスは、不動の姿勢で歌う民謡のイメージを覆す、素晴らしい芸能であったと思います。

岸さんがそもそも飛び跳ねて歌うようになったきっかけは、ご自身の弁によると、「民謡のオーディションがあってよ、前の晩呑みすぎて朝起きたらフラでもう倒れそうだったんだよ。こりゃ普通に歌ってもダメだど思って、歌ってる最中二日酔いでフラフラで、体揺さぶって歌ってみたんだよ。そしたらそれが良がっだみてぇでよ、そっからだな。」だそうです。

岸さんの歌っている姿をみると、歌いながら手で振り付けはするし、体は飛び跳ねているし、マイクも思いっきり離れているんですが、もちろん歌声は力強く聞こえるんです。岸さんが凄い肺活量を持っていたんだろうと思いますが、幼少時に「津軽の天才少女」と言われただけの歌の天性があったんだと思います。

演歌歌手の前座を務めて、民謡歌手だとバカにされた辛い事もあったそうで、「今に見てろ!」って思ったそうです。そこで、普通に民謡を歌うのではなく、パフォーマンスを取り入れて、お客さんに喜んでもらおうというのもあったでしょうが、「こんなことやってもオレは歌えるんだぞ!」って、他の歌手たちに見せつけたかったのかもしれないと思いました。(当時の田舎の女性って、自分のことを「オレ」って言うんです。)

岸さんは1985年に「千恵っ子よされ」がヒットしたこともあり、1988年にNHK紅白歌合戦に出場し、「津軽じょんがら節」を歌唱し、テレビ画面からはみ出るほどの動きを見せたパフォーマンスを披露しました。


津軽じょんがら節 岸 千恵子 UPD‐0040津軽じょんがら節 岸 千恵子