DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

春待ち草

9月25日にTBS系で放送された「演歌の乱」。演歌歌手がJ-POPの大ヒット曲に挑戦するという企画の歌番組でしたが、演歌歌手がJ-POPを見事に歌いこなしたその歌唱力に対して、ネットでの反響が非常に大きいものがありました。

特に、若者世代にとっては、日頃見たこともない歌手が、自分が知っている曲をオリジナルとはまた違った味わいで歌ってみせたことへの驚きが強かったようです。

彼らは正直に、それぞれの歌手のSNSに、「初めてお名前を知りました。歌が上手いのに感動した」とか「いっぺんでファンになりました」といったコメントを多く寄せました。

一方、視聴者の反応を受け取った歌手の側も、「お褒めの言葉ありがとう。もっと頑張ります」とか「嬉しくて泣きそうになりました」と刺激があったようです。

「演歌の乱」は、最近20年位の世代間や音楽のジャンルで細分化された日本人の音楽の志向に対し、他世代の歌やジャンルの異なる歌に目を向けさせる機会を提供した意味でさまざまな相乗効果があったと思います。

「演歌の乱」でAIさんの「Story」を見事に歌った走裕介さん。この番組への出演の反響が大きく、コンサートも急遽追加席を設けたり、ファンを増やされたようです。そして、10月31日に発売した新曲「春待ち草」は、11月12日付けの週間演歌・歌謡シングルランキングで初登場1位を獲得、総合のシングルランキングでも29位に入る快挙となりました。

「春待ち草」の作詞は石原信一さん、作曲は田尾将実さんです。石原さんは森昌子さんの「越冬つばめ」が有名ですけど、吉田拓郎さんの作品への作詞提供が多かったり、ビューティーペアの「かけめぐる青春」や太川陽介さんの「Lui-Lui」など、演歌系ではない印象も強いです。田尾さんは最近では中澤卓也さんの師匠というイメージがありますが、この「春待ち草」を聴いて、中澤さんの「彼岸花の咲く頃」を彷彿とさせるところがあるなあと感じました。

走裕介さんの歌を聴いて上手いなあと思うのは、一貫してご自身のトーンで歌を歌っていることだと思います。素人のぼくがカラオケで歌っても、サビの所はやたら張り上げて、そうでないところは淡々と歌ってしまうと、歌のトータルとしてはバラバラになっているんですよね。それと、声を張り上げがちなフレーズも敢えて抑え気味に歌っているので、「時がやさしく 昔に戻す」というサビ前のフレーズですが、音程にものすごく安定感があると思いました。歌をコントロールできるからこそ、J-POPも歌いこなせるんだなということをつくづく感じました。カラオケで歌っている者にとっては勉強になる歌だなと思いました。


走 裕介 「春待ち草」