DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

水彩の月

10月20日BS朝日で、9月15日に亡くなられた樹木希林さんの最後の主演映画「あん」が放送されました。ぼくにとって樹木希林さんは、テレビ番組とか、映画の宣伝での舞台挨拶や会見で、面白いことを言ってくれる女優さんであり、それは時に毒舌であったり、時に話をふくらませてくれるサービストークであったり、また時には人生の先輩としての助言であったりしました。視聴者にとっては、本当に見ていてためになるという稀有な方でありました。

希林さんが演じた「徳江さん」を見ていると、生きる糧や生きる喜びを見つけて、自分が生きる意味を問い続けているのが、全身がんの宣告を受けながらも、飄々と映画を何本も出演していく希林さんの生き方とオーバーラップしてしまうものを感じました。

永瀬正敏さんが演じた「千太郎」も、勤めていた居酒屋で暴力沙汰を起こして刑務所に入り、甘党でもないのにどら焼き屋の雇われ店長を凡々と過ごしていた。「徳江さん」はそんな「千太郎」に悲しい表情を見て取り、自分が作り続けた「あん」を食べてもらって、「千太郎」を助けたいと思ったんですね。永瀬さんについて希林さんは「年をとって、良かったことも苦しかったことも受け入れて、俳優という仕事に真面目に向き合っている」と、他の役者へのコメントと比べても高い評価をしています。永瀬さんもなかなか共演しない先輩女優である希林さんに触発されたことが多かったようで、「ぼくにとっては(希林さんは)いつも「徳江さん」なんです」というコメントを舞台挨拶で何度もされていましたが、「あん」の「千太郎」の姿を見ていて、その言葉が何度も思いだされて、やはり「千太郎」にも、どこかに永瀬さん自身がシンクロしていたのだろうと感じました。

テレビ放送ではエンドロールが1分程度でカットされてしまいましたが、そこで聞こえた歌が、秦基博さんの「水彩の月」という曲でした。「あん」の河瀬直美監督は秦さんのファンで、飲み会の席で秦さんに「主題歌を作って欲しい」と依頼したそうです。

秦さんの作品は、「ひまわりの約束」や「鱗」や「朝が来る前に」など、カラオケでもよく聴くことが多いんですけど、「水彩の月」を聴いたとき、その音楽はよく聴く秦さんの作品とは一味違う雰囲気を感じました。

秦さんはこの作品について、「映像を観させていただいたときに、河瀨監督の作品でいつも感じることなんですが、お話はもちろん、街の景色の切り取り方とか、光とか、その美しさがすごく印象的で、そこからインスパイアされて、自分の中でピアノの音色が似合うのではないかというイメージがパッと湧きまして、普段はアコースティックギターと共に歌うことが多いんですが、今回は「ピアノと歌」というものをメインにすえて、新しい秦 基博を届けられるのかな、と思っています。映画『あん』にもきっとマッチする、その世界を一緒に共有出来るような楽曲に仕上がったのではないかと思っています。水彩で描いたような淡さだったり美しさ、その中で自分自身が込めた思い、そして映画が伝えようとしていることを、自分なりにすくい取って歌にしましたので、映画『あん』と共にこの楽曲も楽しみに待っていただけたら、と思います」と述べています。

「水彩の月」の歌詞を読むと、それは「千太郎」の心の叫びにも感じたし、「徳江さん」が話したかったことにも思えます。秦さんの歌からも、「あん」の世界が目の前に現れるように感じました。

ぼくは秦さんの作品は高音なものが多いので敬遠してましたが、「水彩の月」は歌ってみようかなという気持ちになりました。

映画「あん」の余韻をひきずってますが、今度はテレビではなくて映画館でしっかりと見たいと思います。

2015年の「あん」公開時の舞台挨拶の動画がありました。秦さんもここで生歌を歌っています。その後、永瀬さんは希林さんにハグをします。このとき、希林さんは永瀬さんに「幸せになってね」とつぶやいたそうです。永瀬さんはその言葉が「千太郎」に向けてなのか自身なのかわからなかったけど、どちらも幸せになろうと思ったとのことです。


樹木希林、永瀬正敏とハグ!秦基博の生歌に感激 映画「あん」初日舞台あいさつ1 #Motohiro Hata #Sweet Red Bean Paste


秦基博 水彩の月