DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

愛は勝つ

例年よりも1週間ぐらい早い感じで、東京の桜はすでに満開の状況です。千鳥が渕とか目黒川とか東京の桜の観光名所は数多くありますけど、ぼくにとって東京の桜は日常の生活のそばに咲いている印象で、例えば通勤途中の駅前の交差点に咲いている枝ぶりの良い桜とか、近所の古くからあるお寺さんの入口に堂々とそびえ立っている桜とか、何てことない場所でものすごい存在感を示してくれています。

「桜」のヒット曲も数多くありますけど、満開の桜を愛でるような明るい曲よりは、1週間程度で儚く散ってしまう桜への思いから、卒業の別れとか失恋とかを歌った曲が多いと思います。年度替わりは、引っ越しで新しい生活を迎える人たちも多いし、特に変わりがない人たちも、4月からの生活にどうしても期待と不安が入り混じってしまいます。そんな揺れ動く自分を元気づけるのに、前向きな歌を歌って見るといいかもしれません。その1曲がKANさんの「愛は勝つ」という曲です。

この作品は元々、KANさんの5枚目のアルバム「野球選手が夢だった。」の1曲として収録されましたが、大阪のFM局であるFM802が「愛は勝つ」をヘビーローテーションでかけまくったことがきっかけで、1990年9月1日にKANさんの8枚目のシングルとして発売されました。テレビ朝日系の「クイズおもしろTV」のエンディング曲に選ばれたものの、ここではヒットには結びつきませんでした。その後、フジテレビ系の「邦ちゃんのやまだかつてないテレビ」の挿入歌に選ばれたことをきっかけに爆発的な大ヒットへと繋がりました。1991年の日本レコード大賞を受賞するとともに、同年の紅白歌合戦にも初出場し、モーツァルトに扮してピアノを弾きながら熱唱した姿は記憶に残っています。

大ヒットの背景としてあるのは、FM802のプロデューサーもフジテレビのプロデューサーも、「番組で使う音楽を探す」ということで、片っ端から色々な曲を聴いてくれたからこそ、自分の曲を見つけてくれたという、幅広い音楽への関心を持つ人の存在です。それと、自分の音楽を認めてくれる人と相性や波長がどれだけ合っているかというのもポイントです。KANさんはビリー・ジョエルBilly Joel)の「アップタウン・ガール(Uptown Girl)」を意識して「愛は勝つ」を作ったそうです。曲がストレートでわかりやすいし、歌詞も前向きな内容なので、この作品を聴いたフジテレビのプロデューサーは、「必ず最後に愛は勝つ」という歌詞の一節に、かつての吉田拓郎さんがフォークを歌い叫んでいた頃と同じものを感じたので、挿入歌に起用したそうです。自分の日頃の仕事は、近くにいる人だけではなくて、知りもしない思いがけない人が見てくれている。意外と、何にでもあてはまることなのかなって思います。


KAN/愛は勝つ


Billy Joel - Uptown Girl