DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

ある女の詩

日本の歌謡史上のトップスターの1人である美空ひばりさん。この年末年始の番組では、美空ひばりさんが1974年~1977年の大晦日に新宿コマ劇場で行ったショーの映像を放送していました。1972年まで紅白歌合戦のトリを10年連続(大トリを6年連続)で務め、歌謡界の女王であった美空さんは1973年、実弟の不祥事を契機として、紅白歌合戦への出場を「辞退」という形を取りましたが、美空さん側の受け止め方は「NHKから追い出された」という思いだったかもしれません。NHKに代わって、1973年の大晦日をひばりさんのために取り計らったのが、当時の日本教育テレビ(現在のテレビ朝日)で、「美空ひばりワンマンショー」を生放送しました。そして、1974年から1977年までは、新宿コマ劇場での美空ひばりショーを公開生放送しました。当時視聴率80%前後を誇っていた紅白歌合戦に真っ向勝負するのは、美空さん側の気迫が感じられるわけで、当時の映像を見ても、歌唱力はパワフルであり変幻自在さも感じます。

美空ひばりさんの映像を見て思ったのは、この人は歌手だけではなく「音楽総監督」なんだなということです。その作品が映えるように、半ば自分が足でタクトを振っているかのように演奏をちょうどいいテンポに誘導しているのかなと思う場面もありました。聴力が非常に優れていたのか、演奏の細かい間違いすらも気付いてしまっているようでした。美空さんご自身の歌い方は、歌舞伎の見得を切る所作ではありませんが、最後の一節で締めて見せる手法は好みだったようです。「ある女の詩」という曲もそういう1曲だと思いますが、AメローBメロは助走にすぎず、Cメロの最後の一節の「私の あなたでした」で、美空さんがド迫力で絶叫するんです。どれだけ色々な歌い方ができるんだろうかと感心しました。美空さんはこの曲を自身のペースでさらっと歌っていますが、今の演歌歌手がこの曲を歌っているのを聴いても、美空さんの域にはとても達していないんですね。それは技術の差というよりも、細かいところまで音程に気をつけて歌えるかどうかというところにあるように思います。


美空ひばり 「ある女の詩」