DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

季節風

ぼくがDAM★ともでお気に入りにしているアーティストの野口五郎さん。野口さんの作品をよく歌うようになったのが3年前ぐらいからで、J-POPに馴れすぎてしまった耳には、歌謡曲が作りだす歌の世界が改めて新鮮に感じるようになったからです。野口さんの作品を開拓すべく、出会ったのが「季節風」という曲でした。

この作品は1977年7月21日に野口さんの24枚目のシングルとして発売されました。当時のアイドル歌手は3か月毎にシングルをリリースすることが多く、野口さんも1977年は1月に「むさし野詩人」、4月に「沈黙」、7月に「季節風」、10月に「風の駅」と4作品を出しています。「季節風」の作詞は有馬三恵子さん、作曲・編曲は筒美京平さんです。有馬さんというと金井克子さんの「他人の関係」や布施明さんの「積木の部屋」のイメージが強くて、筒美さんとのコンビは意外と思っていたんですが、実はCBSソニー南沙織さんを筒美さんと共にプロデュースしてきたという実績があったんですね。有馬さんが書く詞の世界は、大人の男と女の機微を描いているようで、そこは当時の野口さんの歌の世界の「悲恋」とリンクするものがあったと思います。「並んで歩けば人の目には たぶん恋人にも見える 二人は別れを告げるために こんな街角にいる」なんて切ないです。サビの「なぜ出逢ったのだろう もの言わぬ過去の傷にひかれたみたいに なぜ暮す世界が違う二人して 名乗りあったのか」も、運命の悪戯を悔やむかのような思いを描いています。こういう歌詞に応じるように、筒美さんが作られたメロディーは、序盤のAメロでは抑えたサウンドですが、中盤のサビでは揺れ動く心のイメージを出すためか、高音で張り上げるようなサウンドにしています。ぼくも歌ってみましたが、音の力を入れる箇所が多くて、息継ぎが大変です。その後、最後のCメロが「過ぎゆく風 泣いてる日がある」と、ここも高音で語るようにフッと歌っていく部分で、難度を極めています。

カラオケではJ-POPも歌謡曲もランダムで歌いますけど、J-POPは5分から6分ぐらいの時間で言いたいことや思いをすべて出しつくすような感じで、歌謡曲は限られた言葉とメロディで歌の世界を無駄なく表現している感じです。野口さんの作品は彼の歌声も相俟って、3分間の短編の小品(しょうひん)の世界を想像させてくれます。


季節風 / 野口五郎