DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

他人の関係

ヒット曲の中には、作詞・作曲・歌手による「作品」としてのインパクトだけではなく、振付・ダンスによる「ステージ」としてのインパクトを合わせていく場合があります。2016年でいえば、星野源さんの「恋」がそうでした。往年のヒット曲ならば、金井克子さんの「他人の関係」もそんな1曲だと思います。

この作品は1973年3月21日に金井さんの31枚目のシングルとして発売されました。金井さんは西野バレエ団出身で、どちらかというと本職はダンサーの方なんですが、NHK「歌のグランドショー」に出演したこともあり、歌手としてもヒット曲を出し、1966年の紅白歌合戦に「ラバーズ・コンチェルト」で初出場、快活に歌いながら激しいダンスも披露し、「初めてパンツが見えた女性歌手」との異名も出ました。1967年の紅白歌合戦も歌手として2回目の出場をしますが、1968年と1969年の紅白歌合戦ではダンサーとして華麗なステージを応援合戦の中で披露しました。「他人の関係」は快活で躍動的なイメージのあった金井さんとは違う面を打ち出していきました。金井さんの当時の歌い方は、感情を入れないような、やや機械的な歌い方をし、振付はコーラスの「パッパッパヤッパ」に合わせて、まるで手旗信号のように手を広げて示すのが主な振付でした。作詞は有馬美恵子さんですが、歌詞の内容は大人のゆきずりの恋を描いたもので、おそらく当時としては過激な内容だったと思います。「逢う時にはいつでも他人の二人 ゆうべはゆうべ そして今夜は今夜」から始まりますので、その続きの歌詞は愛し合って燃え上がる様子を書くしかないとなります。作曲は川口真さんですが、この楽曲の面白いところは、サビらしいサビはなくて、Aメロ→Bメロ→Cメロ→Aメロ→Bメロ→Cメロ変形で1コーラスを作って、計2コーラスという形式を取っているところです。おそらく、性的に過激な歌詞を、淡々と歌っていく、その方がさっと出逢って、終わったらさっと別れる感じを出せると思ったのかもしれません。

こういう一連のアイデアが大当りして、金井さんの振付のインパクトから「他人の関係」は大ヒットとなり、1973年の日本レコード大賞企画賞を受賞すると共に、1973年の紅白歌合戦に3回目の出場を果たしました。後年、金井さんが語っているんですが、「当時は山本リンダさんのような激しく踊る歌手が出てきたので、自分はダンサーであるけど、逆にあまり激しく動かずにどうやって歌の世界を訴えられるかと考えた」そうです。とはいえ本職がダンサーの金井さん、地味な手振り1つしてみても、踊りの上手さがわかってしまうものですね。

そして2014年、「他人の関係」を一青さんがカバーしました。ドラマ「昼顔」の主題歌にもなりました。プロデューサーは子供の頃に見た金井さんの「他人の関係」のインパクトが大きかったんだろうなと思います。


他人の関係 金井克子 2011