DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

車線変更25時

踊っているPVの曲をyoutubeで見ている中で、意外性があって良かったのが、キンモクセイが2002年に発売した「車線変更25時」という作品です。キンモクセイというと「二人のアカボシ」に代表されるような、どこかに昭和の歌謡ポップスを感じさせるサウンドを志向していたバンドで、爽やかなイメージがあり、ボーカルの伊藤俊吾さんもシュッとしてキーボードを弾きながら歌ってるので、とても踊るイメージはありませんでした。それがこの「車線変更25時」のPVでは、ミラーボールの下で伊藤さんがディスコダンスを踊っているからびっくりしました。その踊りが、ある意味やらされ感も醸し出しつつ、ダサカッコイイぐらいで踊っているのがツボにはまってしまいました。歌っているシーンは雨に濡れながらとか、最後はヘルメットをかぶったままで木馬にまたがったりと、すごく頑張っているのがひしひしと感じられました。

もちろんPVとしての良さだけではなくこの作品はディスコ・サウンドをベースにしながら、失恋した男性が海を目指して深夜に車を走らせている姿を、彼らの出身地を思わせる道路や地名を挙げながら描いていて、まるで筒美京平さんが作るような雰囲気のサウンドに仕上がっています。「一人きり 海まで走りだす 想い出が足りないだろう」こういう夜のドライブって、暴走しそうですよね。「真夜中の国道16号線 やむを得ず遠回り」「空々しい246号 寂しさは僕だけのものか」何で東名高速に入らないのかなと思っていたら、「いつもならきれいに見えるはずの 厚木のネオンが滲んで見える」と2番で東名高速には入ったようで、「目的地はまだ分からない 潮の匂いがする あの坂を超えてゆけば 海が見える 海が見える」たぶん小田原厚木道路から西湘バイパスに入ったのかなと想像しますが、何しろ時刻は深夜、日中なら海が間近に見えていい眺めですけど、ちょっと怖いと思います。なんていう下世話なぼくの想像は抜きにして、歌詞の男性は深夜の車を走らせて、目的地の「海」を目指していってるんですが、本当は心の中の海を運転しながら泳いでいるわけで、彼女との別れを振り返っているんですね。「簡単すぎて 涙が出るぜ」「君の仕草忘れるように スピードを上げる」そして「通り過ぎた道はすでに 僕の中じゃどうでもいいこと」と吹っ切っていこうとしているんですね。車線変更って違う恋愛に進むことをうまく例えてます。

この作品を歌っていると、疾走感が感じられて、心情が高まっていく様をうまく音階で表現しているんですが、「同じ窓から 眺めた日々が 引き延ばされ ちぎれてゆく」の所は最高音で強く吐き出すように歌わないと盛り上がっていかないので、かなり難しかったです。ぼくは「二人のアカボシ」も好きですけど、「車線変更25時」の方がもっと好きです。伊藤さんはこの作品の作詞・作曲をしていますが、当初は「車線変更26時」だったそうですが、語呂が悪いということで25時になったそうです。当時この作品はそれほど売れなかったですが、youtubeでは高い評価を受けています。