DAM★とも&アウフヘーベン

DAM★ともで公開した曲について感じたことを書いていきます。

おもいでの岬

昨日、歌手のペギー葉山さんの突然の訃報に接し、大変驚きました。ここ1~2年、ペギーさんが懐メロ番組で「学生時代」を歌っているお姿をテレビで拝見すると、往年の歌声はなく、さすがに歌のテクニックを駆使しても声の衰えが見えているように感じていました。もともとプロ意識や美意識の高い方とお見受けしていましたので、ご本人は悔しい思いをしているんじゃないかと思っていました。

とはいえ、昭和を代表する歌手の1人であることに変わりはありません。ペギーさんはアメリカのポピュラー音楽に魅かれて、進駐軍で歌っていたのがきっかけで、1952年に「ドミノ/火の接吻」でデビューしました。本職はポピュラー・ジャズの歌手だったんですが(決して演歌歌手ではありません。)、1958年に「南国土佐を後にして」の大ヒットによって(ペギーさんは歌謡曲は歌いたくなかったそうですが)、大衆歌手としてもトップに登りました。紅白歌合戦に通算14回出場し、1966年の紅白歌合戦では紅組司会を務めました(当時はNHKの意向で歌手としての出場は認められませんでした。)。

この他にも、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」の劇中歌であった「ドレミの歌」の日本語訳詞を作られて、「ドレミの歌」を日本に広めたことや、「歌はともだち」、「ひらけ!ポンキッキ」、「ウルトラマンタロウ」でのウルトラの母など、子供向けの番組への出演も意欲的に行っていました。

先ほどまでYoutubeでペギーさんの作品を何曲か聴き続けていましたが、ぼくも知りませんでしたが、過去のヒット曲だけに囚われず、2010年以降もコンスタントに新曲を発表していたことに驚きました。2010年に発売した「夜明けのメロディー」(作詞は五木寛之さん、作曲は弦哲也さん)はNHKのラジオ番組「ラジオ深夜便」でのオンエアをきっかけに、39年ぶりにオリコンチャートに入る快挙を果たしました。2012年には歌手活動60周年記念として「結果生き上手」(作詞は小椋佳さん、作曲は弦哲也さん)を発表しました。そして、昨年2016年には「ラジオ深夜便」10月~12月のテーマ曲として、「おもいでの岬」を発表しました。「おもいでの岬」は、ぼくがDAM★ともで長年お互いに聴き合っているユーザーさんが歌って公開したことがあるので、いい曲であることは知っていました。実はこの3曲とも、ペギーさんが70代や80代の今だからこそ歌える、人生を振り返りつつも明日へ向かって前向きに、無理なく進んでいこうという気持ちで歌われていて、楽曲としても良い作品であると思いました。

日本の音楽シーンの配信はやはり偏りすぎていることを改めて感じました。これは今の日本のテレビドラマにおいても同様ですが、世代とかジャンルとかでごく一部のゾーンだけに焦点を当てていた結果が今の惨状を生んでいるのでありまして、全ての垣根をとっぱらって、視聴者にエンタテイメントを届けることが肝要ではないかと感じました。

ペギー葉山さんのブログも読みました。3月30日にも更新されていて、生き生きと過ごされていたこと、今年は歌手生活65周年を迎えることなど、ますます今後への抱負を書かれていました。それだけに、無念はいかばかりかと存じます。ペギー葉山さんのご冥福をお祈り申し上げます。合掌


ペギー葉山 おもいでの岬(PV) 蔵出し演歌PV

さいざんすマンボ

2016年の後半、世界中でも話題となったピコ太郎さんの「PPAPペンパイナッポーアッポーペン)」(PPAPPen-Pineapple-Apple-Pen)。ぼくは2016年の10月頃にYoutubeで初めてPPAPの動画を見ました。見た後思ったのが、「これって、トニー谷さんをフィーチュアしてる?」ということでした。そう思ったのは、以前からYoutubeトニー谷さんの「さいざんすマンボ」の動画をよく見ていたからです。それで周りにも「ピコ太郎って、トニー谷だと思わない?」と同意を求めたりしたんですが、何かその当時は反応が薄かったです…。今じゃビートたけしさんがピコ太郎さんを、「現代のトニー谷」と賞賛してますが。

トニー谷さんは戦後、カタコトな英語とソロバンを駆使した個性的な芸風で一世を風靡したボードビリアンで、歌も数多く歌われていました。「さいざんすマンボ」は1953年に宮城まり子さんとのデュエットでヒットした曲です。作詞はトニー谷さんと宮川哲夫さんの共作、作曲・編曲は多忠修(おおの ただおさ)さんです。宮川さんは宮城さんの大ヒット曲「ガード下の靴みがき」をはじめ、フランク永井さんや橋幸夫さんのヒット曲を提供した方で、この作品の作詞を共作したというのが実に意外です。多さんはジャズミュージシャンの方ですが、雅楽の家に生まれて、自身も宮内庁式部楽生になったんですが、ジャズの道に進んだ変わり種の方で、バンドリーダーとしてトニー谷さんのバックバンドを指揮し、トニー谷さんの歌のほとんどを手がけた方です。

トニー谷さんとピコ太郎さんは、英語で遊んだ歌を歌ったということと、芸風としては道化に徹していることが似ていると思います。一方、トニー谷さんは芸風も毒を放ち続けたのに対し、ピコ太郎さんはそこまで芸に毒があるとはいえないように思います。

むしろ晩年のトニー谷さんは昭和50年代、ハナモゲラ語でデビューし、音楽の素養も持ち合わせ、当時は毒を利かせた芸風だったタモリさんに、自分とのシンパシーを感じていたようで、タモリさん司会の人気番組「今夜は最高!」でも、意気の合ったトークをしていました。

昔の歌手の方も芸人の方も動画を見ていると、自分の芸に徹していて、プロだなあと感心します。ピコ太郎さんはその素養があるように思います。それと年末年始のMCが意外に普通に上手に回していらしたので、歌番組の司会とか適任じゃないかなと勝手に思っています。


トニー谷 さいざんす・マンボ

ごめんよ涙

現在のジャニーズ事務所の繁栄のパイオニアとなったのが田原俊彦さん。ぼくも田原さんの作品は何曲も歌っていますが、その1曲が「ごめんよ涙」という曲です。

この作品は1989年4月19日に田原さんの36枚目のシングルとして発売されました。田原さんが主演した人気ドラマ「教師びんびん物語2」の主題歌にもなりました。このドラマというと、田原俊彦さんの先輩役と野村宏伸さんの後輩役との掛け合いが面白かったのを思い出します。「教師びんびん物語」では、喫茶店のマスター役で漫画家の蛭子能奴さんがドラマ初出演を果たし、生徒役で女優の観月ありささんが連続ドラマ初出演を果たしています。

田原さんのいわゆる全盛期のyoutubeを見ていると、あの当時は歌が下手なのかなと思ってましたが、必ずしもそうではなかったんですね。口パクをやらずに、あれだけ激しい振り付けをしながら歌うことがどんなに大変なことかというのがわかりました。赤い色の衣装が映える田原さんは、1人で歌っていても華があるスターだと思います。

ここ数年、田原さんが再びテレビに登場する回数が増えてきたのは喜ばしいことです。そして、50代になった田原さんは、20代の頃のヒット曲を昔よりも上手く歌って踊っているのは、ご本人の日頃の練習のたまものなんだろうと思いました。20代の時の歌にも50代の時の歌にも、単純に比較できないそれぞれの良さを感じました。

 


ごめんよ涙 田原俊彦

Lovin’ You

YouTubeで音楽を聴いていたら出くわしたのが、横山輝一さんの「Lovin’ You」という曲でした。この作品は1993年2月10日にシングルとして発売されました。横山さんの代表曲ともいえます。当時はスキーのテーマソングだったかなぐらいの記憶しかなくて、今回初めてこの作品をちゃんと聴きました。横山さんの透明感あふれる声質で、パワフルに歌っているのを見て、ぼくも心地よい気分になりました。生歌で聴いたら迫力ある歌を感じられるだろうなあと思いました。

2002年ぐらいまでは音楽シーンも、色々なアーティストが個性的な作品を発表できていたように思います。視聴者にとっては多様な曲を聴けるごった煮感が楽しく過ごせたわけです。いつの頃からか、小室サウンドだけが席巻する時代、エイベックスサウンドだけが席巻する時代、男性アイドルはジャニーズ系ばかり、女性アイドルはAKB系列のグループアイドルばかりとか、どうも1つのヒットトレンドに寡占されてしまう音楽シーンが、日本の音楽界の多様性の機会を失わせているように思えてなりません。どんなミュージシャンにも発表できる機会を広げていった方が、音楽を聴く者としては面白いと思います。

さて、横山さんは他の歌手への楽曲提供もされていたとは知りませんでした。1998年にはMAXの「Ride on time」、2000年にはSILVAさんの「ヴァージンキラー」を提供しています。この曲そうだったんですかって感じです。作られるサウンドがかっこいいと思います。


横山輝一 「 Lovin' You 」

回転木馬

日本の音楽界に大きな影響を与えた外国人ミュージシャンの1組がザ・ベンチャーズThe Ventures)です。1959年に結成されたアメリカのインストゥルメンタルバンドですが、アメリカでのブームは1960年代で終わりますが、1970年代以降は日本をはじめとする世界各国でベンチャーズの音楽が浸透するようになります。今では日本で一番稼いでいるのではないかと思います。1960年代後半から1970年代にかけては、ベンチャーズが日本の歌謡曲を数多く手がけるようになり、「京都の恋」、「雨の御堂筋」といった大ヒット曲を生み出し、いわゆる「ベンチャーズ謡曲」というジャンルができました。メンバーのジェリー・マギー(Gerry McGee)が日本好き、日本食好きだったことによる影響が大きかったと言われています。

そんな「ベンチャーズ謡曲」の1つに、牧葉ユミさんという歌手が発表した「回転木馬」という作品があります。ご存知の方も多いでしょうが、山口百恵さんが当時の人気オーディション番組「スター誕生」で歌ったのが、この「回転木馬」です。ぼくは牧葉ユミさんも「回転木馬」も全く知りませんでしたが、今回初めて聴いて、その後の山口百恵さんの初期のヒット曲の原点になったのではないかと思っています。歌い方は牧葉さんと百恵さんでは違うんですが、「百恵さんが歌った回転木馬」をイメージしてみると、「青い果実」や「冬の色」や「夏ひらく青春」といった曲の萌芽を感じるのです。またそれは、百恵さんが自分に合った作品を見つけてきて歌って、歌手デビューできたという意味での選曲感も素晴らしかったと思います。

ぼくもDAM★ともでいろいろな曲にトライして歌いますが、何となく食わず嫌いだった曲が実は自分に合っていたことに気づき始め、面白い化学反応を感じるような、そういう曲に出逢えたら嬉しいですね。


回転木馬 / 牧葉ユミ

からたち野道

今や時の俳優となってしまった高橋一生さんが、NHKの番組で生歌を披露したんですが、その曲はTHE BOOMの「からたち野道」という作品でした。

この作品は1990年9月21日にTHE BOOMの3枚目のオリジナルアルバムとして発売された「JAPANESKA」の1曲として収録されました。1993年10月1日にはミニアルバムの1曲としても発売されました。このアルバムのテーマが「日本」ということで、「からたち野道」も日本の風景を描いています。三味線や和太鼓を使っているので、どうしても彼らが1993年に大ヒットした「島唄」のイメージがあるので、沖縄の風景なのかなとも思ってしまいますが、舗装されていない草が生い茂った小道は全国どこにでもあります。歌詞の解説はしませんが、戦争で旅立ってしまった男性を思う女性の歌という解説をされている方がいらっしゃって、納得しました。

生歌のオファーを受けて、こんな渋い曲を選んでしまい、意外に低い声質で歌ってみせてしまった高橋一生さんの選曲感が凄いと思いました。タモリ倶楽部に出てたときは、爽やかな東京育ちの俳優さんというイメージだったので、引き出しの深さに驚きました。


からたち野道 takahashi issei

カラオケで今よく歌われている曲の1つが、星野源さんの「恋」。ぼくもこの間、グループのカラオケで歌ってきました。みんなで盛り上がれる歌です。将来、2016年を振り返ったとき、その年の社会現象として、ピコ太郎さんの「PPAP」と星野源さんの「恋ダンス」は、きっと挙げられるだろうと思います。

この作品は2016年10月5日に星野さんの9枚目のシングルとして発売されました。オリコンでは最高2位でしたが、2016年のJapan Hot 100の年間チャートでは第3位、デジタル・ダウンロードでは100万ユニット以上、PVのYoutubeでの再生回数が今現在で約1億2,100万回という実績を挙げました。2016年の紅白歌合戦でも歌唱されましたが、主題歌として採用された「逃げるは恥だが役に立つ」も、最近のドラマでは珍しく高視聴率となり、「恋ダンス」もブームになり、高校野球センバツ大会の入場行進曲にも選ばれました。

「恋」の歌詞を見ながら、カラオケで何回も歌ってて思ったのが、この歌って、男女の恋というよりは、日常の生活を歌ってる歌だなと思いました。学校や仕事という営みの町が終わって、家に帰ってご飯を食べて、夜を過ごして眠りにつく。そんな暮らしの中で、「胸の中にあるもの いつか見えなくなるもの それは側にいること いつも思い出して」欲しいのは、初めて出会った頃の2人の距離と鼓動であったり、出会ったからこそ今があるというお互いへの感謝であったりするかもしれません。一方、まだ出会いがない人でも、何かへの「秘めた想いは色づき」出したら、「愛が生まれるのは一人から」始まっていくものです。

星野さんが音楽雑誌の対談で、「曲の題名は「愛」でも良かったんだけど、英語でloveと訳されるとそれは違うと思ったので、日本らしい「恋」にしてみた」と言われていたところがありました。愛と恋はloveとlikeの違いだよという人もいますけど、あまり違いはよくわかりません。1人でもできるのが愛で、2人でできるのが恋なんでしょうか。歌詞の最後にある「夫婦を超えてゆけ 二人を超えてゆけ 一人を超えてゆけ」っていい言葉だなと思いました。夫婦でも二人でも一人でも、今の生活で忘れていた大切なことを思い出してまた生きていったら、きっと新しい気持ちで何かを愛したり恋したりできるだろうし、それができたら自分は一歩成長していける感じがします。


星野 源 - 恋 【MUSIC VIDEO & 特典DVD予告編】